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ハニーオレンジとアメジスト ――運命が動き出す街で  作者: じゅんき


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11/25

第十一話 ――探して、見つけて――

ローランドは、あの夜から何度もリンクを探した。


街角。

市場。

ギルド前。

酒場の通り。


だが──一度も会えない。


本当に、驚くほど会えない。


なのに。


「ローランドさ〜ん♡」


女たちに腕を絡まれて歩いている時だけは、

やたらとリンクに遭遇する。


「お、リン──」


手を振ると、リンクはわずかに目を瞬かせ、

すぐに顔をそむけて去っていく。


(……避けてんのか?)


胸の奥がざわつく。


理由は分からない。

ただ、落ち着かない。


ローランドはダンジョンにも足を運んだ。



マキマキシ──5階層。


暇があればぶらついてる階層だ。


「……特に変わったところはねぇな」


魔物が飛びかかってきた瞬間、

ローランドの剣が閃いた。


ズバッ


鋭い音が響き、魔石ごと切り裂かれた。


(……らしくねぇ……)


いつもなら魔石は綺麗に回収する。

でも最近は、苛立ちのままに斬り捨てていた。


理由は──考えたくなかった。



ダンジョンを出た帰り道、

遠くに見慣れた後ろ姿が見えた。


(リン!)


駆け寄ろうとした瞬間、

横から冒険者が飛び出してくる。


「ローランド! 勝負しろ!」


「……なんで今なんだよ! 空気読めよ」


「逃げんのか! コラァ!!」


耳障りな声が、ローランドの神経をざらつかせた。

舌打ちし、拳を握る。


数秒後、冒険者は地面に沈んでいた。


「……クソッ」


顔を上げた時には、リンクの姿はもうなかった。


そんな日が、何度も続いた。



ある日。


迷宮品を鑑定してもらおうと、ローランドはヨゼフの店へ向かった。


扉を開けた瞬間──視線がぶつかった。


「……っ」


リンクが、カウンターの奥にいた。


「リン!? なんでここに!?」


リンクはわずかに動きを鈍らせ、

すぐに帳簿へ視線を落とした。


ページをめくる手が、ほんの少し震えている。


(……は? どういうつもりだよ)


納得いかないまま、

それでも嬉しさが勝ってしまい、ローランドは思わず歩を速めた。


「なにやってんの!? 鑑定できんの!?

すげーじゃん! 俺ちゃんのも見てくれよ!」


リンクは聞こえないふりをしている。

ページをめくる音だけがやたら大きい。


「リンクさ〜ん? おーい?」


返事はない。


ローランドはリンクの目の前で、

わざと大きく手を振ってみせた。


「ほらほら〜? 見えてる〜?」


リンクの肩がピクッと動く。

だが視線は上がらない。


(……なんで無視すんだよ)


ローランドが身を乗り出したその時──


「うるせぇぞ!! 昼寝の邪魔すんな!!」


奥からヨゼフが寝ぼけながら飛び出してきた。


「リンクはいねぇのか!? どこ行った!」


リンクは帳簿に視線を落としたまま、

ぴくりとも動かない。


ローランドはリンクを指さした。


「いるんだけどさぁ、なんか俺ちゃん無視されてんの」


ヨゼフは眉をひそめ、

リンクを見てからローランドを見た。


「なんだ……ローランドか。適当に値段つけてやるよ」


その声音は、どこか投げやりだった。


「はぁ!? 俺ちゃんは上お得意様だぞ!?

ジジィなんかに見てもらいたかねぇよ。

リンに見てもらうし」


「リン? リンクのことか? お前ら知り合いか?」


「知り合いも何も、同じパーティーなんだぜ」


バンッ!!


帳簿が閉じられた。


「僕は受けた覚えないぞ!!」


リンクの声は、思った以上に強く響いた。


言った本人が一番驚いたようで、

気まずそうに視線をそらし、

耳まで赤くして口を結んでいる。


ローランドは目を丸くし──

すぐに嬉しそうに笑った。


「しゃべれんじゃん!!」


リンクの肩がビクッと跳ねる。


「ここに住んでんのか? ジジイがうつるぞ」


「うるさいわい! 誰がジジイだ!

こっちだって出てって欲しいんだよ!」


その言葉に、ローランドの口元がゆっくりと吊り上がった。

悪戯を思いついた子どものような笑みだった。


わざとらしく、ゆっくりと身をかがめ、

リンクの耳元に落ちるような声で囁く。


「だったら早くうちに来いよ」


それを聞いたヨゼフは、深いため息をつき、

面倒くさそうに言った。


「そう言うことならさっさと出てけ。

……リンク。カラスの家でも、ここよりはマシだろ」


その言い方は、どこか突き放すようで──

それでいて、ほんの少しだけ優しかった。


「よし! リンクはもらってくぜ!」


「好きにしろ」


「ちょ、ちょっと待ってよ!!」


リンクの抗議は、

ローランドの腕に引っ張られてかき消された。


こうして──


リンクは鑑定屋を追い出され、

渋々ローランドの家へ向かうことになった。



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