アガート村防衛戦 11
最前線。敵意。面。
線。線。
球体。面。
点。点。
後退。面と点。
線。点。
集中。
損耗軽微。
継続。
最前線。線、突起物。点が間に合わない。面。
敵意損失が遅い。
障害物。点で踏み潰す。
火球。上の点で握りつぶす。
子どもに斬撃。伸ばした右腕で受け止める。
後方に弓矢。全速力で駆け寄って剣で薙ぎ払う。
ライルに奇声をあげて帝国兵が斬りかかる。その真横から体当たりして起動を逸らす。
……集中力は持って一分がいいところだった。そして思考が極限まで研ぎ澄ませられると判断材料が単純化されすぎている。
この辺は訓練で伸びるのだろうか。ただ判断材料の単純化というデメリットがある以上、あまり気軽に切れないカードだ。
改めて自身を見てみると、ダメージ自体は些末ではある。せいぜい擦り傷程度だ。
ただそれでもステータスに裏付けされているからこの結果で済んだのであって、未知の相手には不向きだ。
気づけば帝国兵で立っているものは残り十名とちょっと。しかし残るそのほとんどが戦意を喪失しているのが明らかだった。
当たれば即死の斧を振り回す謎の幼子はさぞかし怖いだろう。ただし当のアリアは肩で呼吸をしている。心理的なストレスが限界にまで達したのかもしれない。
戦力として運用するなら盤面を覆すための切り札か。
帝国側の指揮系統は完全に崩壊している。そして重傷を負った者、昏倒している者が大多数を占める。撤退すら容易ではない。
「帝国兵に告ぐ。バスティオン辺境伯名代、エルファリア・ニヴ・バスティオンだ――武器を捨て、投降せよ。即時投降するのであれば捕虜として扱うことを保証する。なお従わぬ場合、これを敵対行為の継続と見なし、殲滅する」
――大勢が決した。ここが引き際だ。
帝国兵は武器を捨て、両手を挙げる。指揮官らしき男が怒鳴るが止まらない。その数はひとり、またひとりと増えていく。ついには指揮官も武器を捨てた。
各々の家に立てこもっていた村人たちが喧騒が途切れたことに気づき、恐る恐る顔を出す。酒場の女将さんの顔があった。ライルは女将さんに縄を持ってくるように頼む。
女将さんとは短い会話だが気のしっかりした人のように感じたから、最低限の状況を理解できそうな人で適任だ。
彼女も一瞬戸惑ったような素振りは見せたものの、しっかりした声で大声で男衆に縄をありったけ持ってくるように伝える。怯えた表情ながらも縄や紐を持って、男たちが集まってきた。
「目標達成、ね――ライル、ちょっと疲れたから後は任せる、わ……アリアのこと……も」
【魔力探知】で得た情報の処理と、極限の集中。脳への過負荷で思考がまとまらない。
言い終えたと思った直後、そのまま意識が暗転した――




