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第47話 両親の事後にうっかり突撃して、決意する

 女の子たちに癒やされて、俺は気づいた。


 大切な人たちと笑顔で過ごす。

 確かに幸せだ。


 でもその輪の中に、父上もいてほしい。

 そもそも、俺がまだ十二歳なのに父上が死ぬなんて、おかしい。

 確かに俺は原作とは違う未来を望んだが、こんな余計な展開は求めていない。

 だから。


「父上に破壊魔法を使おうと思う」


 ベッドに寝転んだまま、俺はそう宣言した。


「ディオ、急に何を?」


 引き続き柔らかい太ももで俺の頭を受け止めていたミアが、怪訝そうな顔をする。


「破壊魔法と言えば、ディオ様の固有魔法ですね」

「お、親子喧嘩にしてもやり過ぎじゃない!?」


 発展途上の胸が自然に当たるような距離感で両側に寝転ぶトリアとテトラが、それぞれ言葉を口にする。


「ディオ様がご乱心です……あわわわ」


 リサリーは俺の腰に跨がりながら慌てていた。


「あ、今の言い方だと変な意味に聞こえるか……?」


 俺はみんなに経緯を説明した。

 父上が病に侵されていること。

 その病気の源を破壊魔法で取り除いてしまえば、治療の可能性があること。


「でも……そんなこと実際可能なの?」


 テトラが素朴な疑問を口にする。


「破壊する対象を正確に捉える必要がある」

「正確に捉えられなかったら?」

「俺が父上にトドメを刺すことになるかも」


 ミアへの疑問には俺が代わりに答えた。


「それは……困るわね」


 テトラは難しい顔をした。


「症状を聞く限り、公爵は魔遊病だ」

「魔遊病は心臓に発生する場合がほとんどです。もっとも、心臓のどこに病原があるか突き止める必要はありますが……」


 ミアが病名を口にすると、トリアが補足してくれる。


「病原がどこにあるか見つける方法はあるかな?」

「わたくしは……分かりません。魔遊病はどんな名医でも治せないと聞きますし……」


 トリアの表情が曇る。


「においで分かれば良かったのですが、そういうわけにもいかなくて……」


 リサリーは「くぅーん」と俯いた。


「……一つ、方法があるかもしれない」

「ミア、何か知ってるの!?」

「ああ。まずは公爵の部屋に行こう。詳しくは向かいながら話す」


 そうして俺たちは、父上の寝室に全員で突撃した。




「父上、相談したいことがあるんだ!」


 扉を勢いよく、開け放つ。

 父上は母上とベッドに腰掛けて、なんだかいい雰囲気でワインを飲んでいた。


「あらあら……」


 やたら距離が近い。

 しっとりした雰囲気。


(これはひょっとして……事後では?)


 明日が戦いだから、父上も昂ぶっていたのかもしれない。


「こ、これが大人ですか……」

「わあ……!」


 状況をなんとなく理解して、頬をほのかに赤く染めるトリアとテトラ。


「……こほん」

「……」


 気まずくなる、ミアと俺。


「むむ?」


 あまり分かっていない様子のリサリー。

 俺たちの反応はそれぞれだった。


「……皆、いきなりどうした」


 父上は少し遅れて、気まずそうに言った。




 その後。

 少し落ち着いてから、先ほど思いついたことを相談した。


「破壊魔法で病原を狙う……か。気持ちだけでも嬉しいぞ」

「ディオったらいつの間にか立派になって……皆もありがとうね?」


 父上と母上は感激してくれたが、現実的な話としては受け止めていないようだ。


「病原の位置を特定する方法が、一つだけある。天使の目だ」

「……天使だと?」


 父上の顔つきが変わった。


「天使の目には死を視る力がある。死を運ぶ病の在処も分かるはずだ」


 どうやら天使の目とは、魔眼のようなものらしい。


「だけど天使なんて……そもそも実在するのかしら?」 


 母上が素朴な疑問を口にする。 


「例の白装束は天使の可能性が高い」

「居場所は?」

「恐らく明日、向こうから来る。確証はないがな」


 そう言いつつも、ミアには自分の考えへの自信が窺えた。


「わたくしたちに協力してもらえるのでしょうか?」

「難しいな」


 トリアの疑問に、ミアは即答する。


「もしかして敵なの!?」

「そんなところだ」

「じゃあ私がやっつけて言うことを聞かせるわ!」

「テトラ、はしたないことは言わない」


 意気込むテトラを、トリアがたしなめていた。


「だが、倒してしまうのが最も現実的な方法だ。用があるのは天使ではなく目だからな」

「魔眼の類は移植する方法があると聞いたことがあるが……まさかディオに?」


 ミアの言葉の意味を、父上は察したらしい。

 破壊魔法を持っている俺に天使の目を移植する。

 それが父上を救う方法だ。


「でも、ディオのかわいい目にそんなことを……」


 母上は否定的だった。

 だけど。


「父上を救う方法が分かっていて、その手段が目の前に転がっているなら、掴むべきです」

「ディオ、本気なのか?」


 父上は心配そうに、俺に問いかけてくる。

 だから俺は父上をまっすぐ見据えて、決意を伝えた。

 

「はい。今まで父上にわがままを散々聞いてもらった分、俺が恩を返す番だと思っています」


 その言葉を聞くと、父上は目を見開いて。


「明日の件は、ディオの未来のためだったのだが……逆になってしまいそうだな」


 どこか嬉しそうに、肩をすくめた。


 これで明日、やるべきことが決まった。

 天使を倒して、目を奪って、父上を救う。


「公爵、安心してくれ。私が必ずディオを守る」

「私も一緒に戦う!」

「いや、ミアはともかくテトラは……」

「私だって強いし、お義父《とう》さまには剣をもらった恩があるから! ディオが言っても聞かないからね!」


 テトラは強情だった。

 父上の呼び方がおかしかった気がするが……まあいいか。


「……分かった。手伝ってほしい」

「うん!」


 テトラは力強くうなずいた。


「わたくしも徹夜で図書館の書物を読み漁って、天使に関する情報がないか探してみますね」

「トリアもありがとう。頼もしいよ」

「ぜひ頼ってください! わたくしもウィンターソン家の一員ですから」


 トリアは気の早い自覚を持っていた。


「私は……えーっと、明日のお弁当を準備します!」

「腹が減っては戦はできぬ、だからね」

「はい?」


 日本独特の言い回しはリサリーには伝わらなかった。


「とにかくリサリーもよろしくね、ってことだよ」

「はい!」


 明日。

 敵の策を利用して天使を誘い出し、逆に罠にはめる。

 こっちの味方には魔王《ミア》と勇者《テトラ》がいる。

 トリアとリサリーも協力してくれるし、父上やウィンターソン家の騎士団もいる。

 

 正直、負ける気がしない。




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