↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
41/59

第41話 師匠は愛弟子を触るのが好き

 寝間着姿のミアは当たり前のようにベッドに入ってきて、俺の横に寝転んでいた。

 というか、俺は抱きしめられていた。


「用事を済ませるのに、この体勢になる必要はあるの?」

「単に私がこうしたいからだ」

「なるほど」


 今日も俺の師匠はかわいらしいことを言ってくる。


「それに最近、ディオと二人きりの時間が少なかっただろう」

「えっと、ごめん?」

「ディオは師匠に寂しい思いをさせるなんて、弟子として反省すべきだ」

「師弟ってそういうものだっけ?」


 真面目な顔で主張するミアに、俺は疑問を抱く。

 恋人か何かなら、寂しい思いをさせるべきじゃないって話も分かるんだけど。


「ああ。弟子というのは師匠に甘やかされ、甘えるべき存在だ」


 ミアいわく、そういうことらしかった。

 額に優しく、キスされる。


「以前、私のことはどこでも触っていいと言ったが……逆に私もディオに触れるのが好きみたいだ」


 ミアが俺の頬を撫でたり、お腹を触ったりしてくる。

 くすぐったいし照れくさいし。

 ベッドで並んで寝転んでいる状況だと、また違った意味が生まれそうだし。

 妙な興奮をしてしまいそうになるのをどうにか抑えようとしていたら、ミアが追撃してきた。


「すんすん……ディオは良い匂いがするな?」

「そ、そうかな? 最近はちゃんと運動して汗を流して、風呂に入ってるおかげかもね」


 前世の記憶を取り戻す前のディオは、怠惰なデブで運動を全くしないから代謝が悪く、入浴もキャンセルしがちだった。


「まったくディオは罪な男の子だな。婚約者の……トリアとの関係を整理するようなことを言っていたのに、気づけば双子両方と仲睦まじそうじゃないか」

「そ、それは……複雑な事情があるというか」

「ふーん?」


 ミアに鼻をつつかれた。


「だが、まあいい」

「え?」


 責められることを覚悟していたが、ミアの口調はあっさりしていた。


「ディオが女性を何人も娶るつもりだというなら、私としても好都合だからな」

「えーっと、好都合ってどういう意味?」

「魔界にお持ち帰りするかはともかくとして……私がディオと婚約したいという希望を取り下げる必要はなさそうだという意味だ」

「でもそれは……」

「安心しろ。私はトリアやテトラとも上手くやっていける自信があるぞ? 接してみれば、二人ともかわいらしい良い子たちだ」


 ミアは双子のことを気に入ったらしい。

 魔王と女勇者が仲良くなる。

 それはきっと、今後の平和のためにも良いことだ。

 

 でも、そのためにはもしかして。

 俺が間に入る必要があるのか?

 しかもその方法は、テトラやミアが望む通りにするのであれば。


 いや、今はこれ以上考えるのはよそう。

 まだ俺にその覚悟があるのか、分からない。


「と、ところでミアの用事って?」

「ふむ……逃げたな? だがそこがディオのかわいいところでもある」

「……でも、大事なことは眠くなる前に話しておくべきでしょ?」

「確かにディオの言うとおりだな」


 ミアに頭を撫でられた。


「話したかったのは、例の白装束の奴についてだ」

「何か分かったの?」

「まだ確証はないが、あいつは天使かもしれない」

「天使……」


 最近、よく聞くワードだ。


「天使教の関係者じゃなくて、天使そのものだと予想した理由はあるの?」

「白装束は、天界とこの世界を行き来している可能性がある」

「二つの世界を移動できる存在……ってこと?」

「ああ。奴は地下で遭遇した際、霧のように消えただろう? あれは古い文献に記されていた、この世界に顕現した天使が天界に帰る時の現象に似ていた」


 ミアもまだ、確信があるわけではないらしい。


「もし本当に天使だったとして、どうしたらいいのかな」

「まだ推測に過ぎない段階だが、相手が何か見当が付いていれば、対策の打ちようはある。とはいえ向こうから仕掛けてこない限り、こちらにできることはないが……」


 ミアは難しい顔をする。

 結局のところ、向こうが顔を出してこない限りは対策も何もない。


「じゃあさしあたっては、狩猟大会中は天使教の動向に注意……ってところかな」

「ああ。それと、その前に開かれるパーティーでも要警戒だな」

「パーティーか……そう言えば、そんなものもあったね」


 狩猟大会は春の祝祭と呼ばれる、北部で毎年開催されるイベントの一部だ。

 祝祭の初めには、ウィンターソン家主催で開幕を告げるパーティーが開かれ、北部の諸侯が揃って出席する。


「ディオがパーティーに出席したら、今以上に周りに女の子が増えそうで困るな?」


 ミアに冗談めかして笑われた。

 が、俺は全く別のイメージをしていた。


 春の祝祭。

 嫌な記憶が蘇る。

 前世の記憶を取り戻す前は、悪役モブらしく毎年のようにやらかしてきた。

 よその家の子息にパワハラ三昧、令嬢にはセクハラ三昧だ。

 ディオがイベントを面倒くさがる性格ならまだ良かったが、自分が威張り散らしていい思いができる場所には好んで顔を出していた。


(引き続き、他の家の子からは嫌われていそうだな……)


 だがポジティブに捉えるなら、評価を変えるチャンスだ。

 これも俺がディオ・ウィンターソンとして平穏な人生を手に入れるために必要なこと。

 

 例のごとく好感度マイナスからスタートすることになりそうだが、次代の北部の盟主になるためには、他の家との交流も重要だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。