↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
34/59

第34話 双子姉妹は勝負に出る

「ディオ、私は少し調べ物をしてくる」


 温室で待つ女の子たちに合流したら、ミアが入れ違いで出て行くと言い出した。


「捕まえた男が言ってた、天使教のこと?」

「ああ。少し心当たりがあってな」

「そうなんだ……俺も何か手伝えることはあるかな?」

「ディオは翼竜と戦ったばかりだろう? ゆっくり休むといい」


 ミアに任せきりじゃなくて、俺も何かしたい。

 そう思ったが、ミアは甘やかすようなことを言ってくれる。


「……そういうことなら、ミアに任せるよ」

「ああ。では行くが……その前に、この前教えた挨拶をしよう」

 

 ミアはそう言って、少し身をかがめた。

 自分の頬に、俺の唇が届きやすいように。

 

 年上のお姉さんの超絶美少女な顔面が、無防備に差し出されている。

 おまけに感じる、温い視線の圧。


 俺は結局、促されるままミアの頬にキスをした。


「いい子だ。私もちゃんとお返しをしないとな」


 ミアも俺の頬に、キスを返してきた。

 当然ながら、他の女の子たちの前で。


「あの、ディオ様はわたくしの婚約者なのですが。先程から何をしているのですか?」


 トリアが刺々しい態度で問いを投げかけた。


「これは私の故郷での挨拶だ。そして、ディオの危険を察知する魔法を付与する目的もある」


 ミアはもっともらしい返事をしているけど。

 この得意げな笑み。


 ただ、俺に仕込んでいる様子を見せつけているだけでは。


(いや。当たり前に応じた俺も、まんまと仕込まれているような気がするけど)


 婚約者の前で、他の女の子と頬にキスを交わした。


「わ、わたくしも負けてはいられませんね……」


 そのせいで、トリアのやる気に火を点けてしまったようだ。


「姉さんがいるのに、やっぱりさいてー……!」


 一方のテトラは、別の感情を燃やして俺を睨み付けていた。


○


 その後、ミアは調べ物のために出て行ってしまい。

 温室のテーブルを双子と囲んでティータイムだ。

 横ではリサリーがお世話してくれている。


「外では色々ありましたが、ここなら邪魔は入りません。ゆっくりじっくり、楽しみましょうね?」


 先程からトリアは、とにかく俺に構ってくる。

 本来であれば三つ均等な距離感で置かれていた椅子を、俺のすぐ隣に移動させて座っていた。 


「……トリア、もしかして怒ってたりする?」

「わたくしがディオ様に? とんでもありません。どちらかと言えば、わたくし自身がもっと努力する必要性を感じています」


 トリアはそう言ってからティーカップを口に運ぶ。

 その所作は完璧で、まさに貴族のお嬢様といった様子だ。


「……わたくしの頬にも、ちゅーしますか?」


 トリアの顔を横目に見ていたら、微笑みかけられた。


「あー……えっと」


 思わずそのまま見惚れてしまうかわいさだ。


「それとも、別の場所にします?」

「別の場所って……」


 目を見て話していたのに、つい視線が下に落ちる。

 色素の薄めな、ピンク色の唇。


 まずい。

 このまま邪な方のディオが出てきてしまいそうだ。

 でもこの唇、強引に奪ってしまったらどんな反応をするんだろう。


(……ってそれをしたら前世と同じじゃないか!)


 俺が我に返ろうとしたその時。


「ディオ様、どうされました? 遠慮しなくていいんですよ。わたくしたちは、婚約者なのですから」


 トリアの顔が大胆に、俺の顔に寄せられた。

 あ、これ。

 強引じゃなくて、合意が取れてるやつだ。


「ね、姉さん! そのクッキー取ってくれる!?」


 おもむろにテトラが声を張り上げた。

 トリアの動きがピタリと止まり、顔が少し離れる。


「む。あと一歩だったのに。テトラはしょうがない妹ですね……どうぞ」

「だって、姉さんが……! もぐ」


 妹に不満を漏らしつつもクッキーを渡すトリアと、姉に対して何か言いたいことがありげだがクッキーを口に運ぶテトラ。


 結果的に俺の暴走が止まったのでナイスだ。

 いや、むしろ暴走していたのはトリアか?


「そうだ。ディオ様も食べますか? はい、あーん」


 トリアは引き続き止まる気配がなかった。

 俺に向かってクッキーを差し出してくる。


「いや、人前でそれはちょっと」

「おや? では二人きりでしたら食べてくれるのですか?」

「あ、今のだとそういう意味になるのか……?」


 ぐいぐいと、俺がトリアに押しきられそうになっていると。


「あむっ!」


 テトラが割り込んできて、トリアの手からクッキーを食べた。


「あ! テトラ、何をするのですか」

「だって、いつもは私だけに「あーん」ってしてくれてたのに、他の奴にするなんて……!」

「今、姉さんは大事な勝負をしているんです!」 


 トリアはテトラを少し叱責した。


「ううっ……」


 するとテトラは涙目になって。

 怒りの矛先を俺に向けた。


「もう! 勝負って言うなら、私がする! アンタ、私と決闘しなさい!」


 婚約者の双子の妹から、決闘を申し込まれた。


「け、決闘……!?」

「さっき一緒に戦った時は意外と悪くない奴かもって思ったけど……やっぱり私の姉さんを取るなんてダメ!」

「ちなみにその決闘を断ることは……」


 相手はただの女の子じゃない。

 天才剣士で、未来の勇者だ。


「拒否権なんてないんだから! 私より強い男にしか、姉さんはあげないっ!」

 

 そんなわけで、俺はテトラと決闘することになった……らしい。


 女勇者は実は、シスコン気質だった。

 なんて冗談を言ってる場合じゃない。


(まさか今日、首を撥ねられたりはしないよな?)


 俺は命の危機を感じつつ、トリアと顔を見合わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。