第33話 母上いわく、この国ではハーレムが合法らしい
俺たちは母上の温室でまったりティータイムを過ごすことになった。
魔法で管理されていて、様々な季節や地方の草花が年中咲いている。
北部にはここしかない場所だ。
そんな素敵な空間に女の子たちを案内したところで母上から「少しいいかしら」と声を掛けられた。
皆とは少し離れた場所で、母上と二人で話す。
「それにしても、ディオは女の子に大人気ねえ……さすが旦那様と私の息子ね」
「はは……」
説教ではないよな。
母上、楽しそうだし。
「……父上って昔はモテたの?」
「あら、モテるという意味では今もそうよ? 旦那様は昔からずっと、私に一途でいてくれるけどね」
母上は弾んだ声で、父上のことを語る。
ちなみに父上は北部一の愛妻家としても有名だ。
「じゃあ母上はいい人と結婚できたんだね」
「ええ、それはもう。だけどそのせいで……ディオは一人っ子でしょう?」
どうやら母上は公爵夫人として、ウィンターソン家に子が少ないことを気にしているらしい。
「でも、俺は幸せだよ? 父上と母上がいるし」
「まあ! ディオは本当にいい子ね!」
母上は嬉しそうに一度俺を抱きしめてから。
「だけどディオは未来の北部の主として、妻を何人も持つ……というのは一つの手よ」
「……そんなのアリなの?」
母上からの思わぬ提案に、俺は耳を傾ける。
「近年では一夫多妻の家は少ないけれどね。法的には問題ないのよ?」
「双子両方と婚約したがったときはダメだったのに?」
悪役モブのディオがトリアとテトラの両方に一目惚れして嫁にするとか言い出した際は、最終的にトリアだけが婚約者になった。
「あれは家同士のバランスを考えてのことだったから。だけどもしお互いに好き同士になってしまうようなことがあったら……仕方ないわよね」
「そんなに簡単な話なの?」
「ええ。ディオはウィンターソン家の当主になる男の子なのよ?」
なるほど。
北部最大の家門の主であれば、妻の二、三人養える甲斐性はあってしかるべき……ってことか?
「とにかくディオは、みんなを幸せにできる男の子になりなさい」
「みんなを幸せにって……」
俺はその言葉の意味を、考えてみようとする。
「さあ。そのためにも、これ以上みんなを待たせてはいけないわね」
そう言って母上は温室から出て行こうとする。
「母上は一緒にお茶会しないの?」
「ええ。ディオもその方が、あの子たちを独り占めできていいでしょう?」
母上は冗談めかして笑いかけてくる。
「独り占めって……別にそんなつもりは」
「ディオが昔から女の子大好きなのは知っているわ。もっとも、女の子にはディオの魅力を理解してもらえなかったけれど」
悪役モブのディオが女の子から人気がないのは、魅力に気づいてもらえなかったからではなく、粗暴な態度やセクハラのせいだと思う。
やっぱり母上は親バカな節があると思いつつ。
「女好きなのは共通認識なんだ……」
「ええ。でも最近はディオのいいところに気づいてくれる女の子がたくさん、周りにいてくれるでしょう?」
「うん、不思議なことにね」
「不思議ではないわ」
母上は俺の何気ない言葉に対して首を横に振った。
「最近のディオはみんなに愛されるような、素晴らしい男の子に育っているから」
「それは母上だから、そう思えるんじゃない?」
「あら。私は昔からずーっと、ディオが大切で誰よりも愛しているわよ」
人生何周目だろうと、母親からそうもまっすぐに言われたら、普通に照れる。
「と、とにかく。一夫多妻とかそういう話は、またいずれ考えるよ」
「今のディオは本当にすごいんだから。もっと自信を持ってね!」
自信というか、倫理観の問題なんだけど。
この国のルールに基づくなら、そこはクリアしているらしい。
原作に一夫多妻がアリなんて設定はなかった気がするけど……要するに。
この国でハーレムは合法で。
母上はそうなることを推奨しているって意味なのか……?
(北部貴族の英才教育はなんというか、すさまじいな)
というのはさておき。
この話をした後で、どんな顔をしてみんなに会えばいいんだろう。




