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第30話 女勇者は共闘してくれて、ちょっとデレる

 トリアたちから距離を取ってから、俺は立ち止まった。


「待てよ。別に戦わなくても、卵を返したらいいのでは」


 俺は翼竜が受け取りやすいよう、両手で卵を掲げる。


 殺気立っていた翼竜の一匹が、警戒しながらも嘴で卵を掴もうとした、その時。


 卵が急に割れた。

 いや違う。


「狙撃された……!?」


 どこからか魔法が飛んできて、卵を破壊された。


 俺は魔法の飛んできた方向を目で追う。

 誰かが逃げていく後ろ姿が見えた。

 レオーネ……じゃないな。


「誰だ? いや、それより」


 まずい。

 卵を破壊されて、翼竜が怒り狂っている。

 四匹分の殺気が、俺に向けられる。


「やるしかないか……!」


 俺は意を決して剣を抜く。

 滑空しながら襲いかかってきた一匹を切りつけようとするが、的確に剣を折られてしまった。


「それなら……ハイドロ・ブラスト!」


 剣がダメなら魔法だ。

 「ハイドロ・ブラスト」は翼竜の一匹に命中する。

 翼竜は水圧によって弾け飛んだ。


 上級水魔法「ハイドロ・ブラスト」。

 強力な殺傷性を持った水の射撃魔法だ。

 翼竜だろうが、当たれば即死。 


「これならいける……!」


 そう思ったのも束の間。

 背後から別の翼竜が迫っていた。

 

「まずっ——」

「ぼさっとしない!」


 俺に奇襲を仕掛けようとした翼竜は、駆けつけたテトラの剣で斬り落とされた。


「助かった、ありがとう!」

「う、うるさい! 集中しなさい!」


 テトラは相変わらずつんつんした態度だ。

 それでも、未来の勇者が加勢してくれるのは頼もしい。


 翼竜は残り二匹。


「ハイドロ・ブラスト! くそ、当たらない……!」


 当たれば即死。

 しかし翼竜もその脅威に気づいて、機敏に回避行動を取ってくる。


「翼を狙って!」


 テトラのその声で、俺は狙いを切り替えた。

 一撃で仕留めるのではなく、より射出の速い魔法で動きを封じる。


「アクア・ショット!」


 初級魔法だが、俺の使える中では一番速い。

 おかげで回避行動を取っていた翼竜に命中した。 


「もらった!」


 翼を撃たれて落ちてきた翼竜を、テトラが剣で斬る。

 

(騎士が何度も斬ってやっと倒していた翼竜を、一撃で……)


 さすが未来の勇者だ。


「やるじゃない!」


 感心していたら、テトラが楽しげに笑いながら俺を見た。


 やっぱりテトラも笑ったらめちゃくちゃかわいい……とか言っている場合じゃない。


 残りは一匹。

 俺はまた、「アクア・ショット」を翼に命中させて撃ち落とした。


「よし、これで終わり——あっ!?」


 テトラがトドメを刺そうとしたら、翼竜の反撃を受けた。

 嘴で剣を器用に掴まれ、折られる。

 どれだけ剣術の腕が優れていても、剣が折れてしまっては意味がない。

 翼竜は折れた剣の先を吐き捨てて、次はテトラ自身を狙う。


「テトラ!」


 俺はとっさにテトラを抱き寄せるようにして翼竜との間に割って入った。

 翼竜は鋭利な嘴で突き刺そうとしてくるが。


「そっちから近づいてくれるなら……!」


 俺は突き出された嘴に、手のひらに展開した破壊魔法を合わせた。

 最後の一匹が、跡形もなく消し飛んだ。


「ふう……危ないところだった。テトラ、大丈夫?」


 腕の中に収まったテトラに、声を掛ける。


「かっこいい……」

「うん?」

「じゃなくて! 別にアンタに助けられなくても倒せたしっ!」


 いい感じに連携を取れて戦えたと思ったが、やっぱりテトラはつんつんしていた。


「また剣が折れちゃった……お父様、もっといい剣を買ってくれないかな」


 テトラは俺の腕を振り払って、距離を取った。

 折れた剣をため息混じりに眺めている。


 その横で、俺は考える。


(翼竜の襲撃は、偶然じゃないよな……)


 レオーネに卵を渡した誰かが、狙って引き起こした可能性が高い。

 わざわざ狙撃して卵を割って、取り返しの付かない状況を作ったくらいだ。


「いったいどこの誰が……」


 俺が疑問を抱いていると。


「ディオ、大丈夫か!」

「ミア? どこから……」


 ミアがいきなり現れた。

 今日は別で用事があるとか言っていたのに。


「ディオの危険を感知したから、空間魔法の応用で空を飛んできたんだ」


 そう言うミアは、縛られた状態の男を片手に持っていた。


「そいつは?」

「ここから逃亡しようとしていた怪しい男だ。ディオ、何か心当たりはあるか?」

「……もしかしたら、こいつが卵を割ったのかも」


 ミアが手がかりを掴んでくれた。


「そうか……では今この場で問いただしてやろう。私もそろそろ学習したからな」


 魔王による尋問が、始まる。

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