生徒会のクリスマス事情
「いよぅ、少年! こんな聖なる夜に、1人で店番とはなぁ!」
「帰れ」
冬休みが始まり、あっという間にクリスマスがやってくる。本日もアルバイトに精を出していた春希が店番をしていると、デート中と思われる夏と綾乃が姿を見せた。
夏にべったりと抱きつくようにしている綾乃。学園内で知らぬ者はいない程の有名なカップルは、同じ生徒会である春希がクリスマスもアルバイトをしていることに嘆き、悲しみの声を上げていた。
「ホントに春希ってば、クリスマスもバイトをしてたなんて……! 冬休みだからって、朝から晩までバイトばっかり! ああ、春希の青春はどこへ行ってしまったのかしら!?」
「人を憐れみの目で見るのはやめろ。お前らと違って、オレはこういう長期休暇のときが稼ぎどきなんだよ」
時刻は夜の8時を回っており、店内には夏と綾乃以外の客はいない。住宅街の外れにあるコンビニは、まるで水を打ったかのような静けさであった。あまりにも暇であるため、一緒のシフトに入っていた店長は裏で集計作業や発注作業をしている。店内は春希1人でも余裕を持って回せるほどの閑散ぶりであった。
「……ん? それにしても春希ってば、ちょっと雰囲気変わった?」
「言われてみればそうだな。なんかこう、見た目の角が取れた感じがするな。とっつきづらいキャラだったのが、ちょっとマシになったような?」
「……気のせいだろ。オレは何も変わってないよ」
春希がやんわりと否定すると、2人はイチャイチャと騒ぎながら店内を物色し始める。これからどちらかの家に帰り、聖なる夜を一緒に過ごすのは、春希には分かりきっていた。
春希が意外だと思ったことは、2人が紛いなりにも自分のことを見ていたことである。適当に生きているように見えても、こうして友人である自分の変化に気付く辺りは、春希も2人のことを見直す必要があると考えた。
夏と綾乃が感じていた春希の変化は、おそらく真冬の影響である。真冬と触れ合うようになり、春希は誰かと関わることの大切さを知ったような気持ちになっていた。無意識ながらに守ろうと思っていた存在が、今はこうして近くに感じられていることが、春希の雰囲気を少なからず良い方向へと変えていたのであった。
「お願いするぜ、大将! おまけしてくれよな!」
「さっさと帰れ。このリア充カップルが」
買い物かごが一杯になるほどのお菓子やジュースをレジに持ってきた2人に、春希はいつものように小さなため息をついたのであった。




