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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第九章 『二学期』
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第九十七話 『最終日』

 二日目終了。


 俺の博物館と小夏が行きたいと言った猫カフェ、それと笠原が行きたがっためっちゃでかいスポーツ用品店。

 それ以外は歴史大好き三浦さん提案の歴史的建造物だ。


 小夏は「別に猫が好きって訳ではないんだけど、どんなところなのか気になってね」とか言ってたけど、俺はお前が猫好きだって事知ってんだぞ。

 隠しても無駄だ。

 残念だったな。


 で、結局行ったのは三浦さん提案の神社とかばっかりだったが、結構面白かった。

 歴史についても詳しくなれたし、昔の戦い方とかも知れて面白かった。

 それに何より、皆でワイワイしながら旅行ってのがいい。

 話しながら移動しているだけなのに、やたら楽しく感じたものだ。



 で、今はその翌日。

 修学旅行最終日だある。


 はい、おはようございます。

 今日もいい朝がやってきました。

 みんなで精一杯楽しみましょう。


「えぇ......」


 昨夜寝る前に隣の部屋で哉を寝かせた際、1つ不安要素があった。

 それは、哉が障子を蹴り破らないか、ということだ。


 こいつの寝相は、隣で寝ているやつに踵落としを食らわせるほどだ。

 だから障子なんて軽く破ってしまうのではないか。

 そう思った。


 でもまぁ、破ってしまったなら謝らせて弁償させるだけ。

 そう思っていた。


 しかしこれはどういうことだろう。

 障子が外れている。

 それも、蹴らないように外さてたという感じではなく、蹴って外したみたいな感じ。

 こいつ、寝ながら蹴って扉外したのか。

 器用なことをするもんだな。


 でもまぁ、障子はどこも破れていない。

 良かったな、弁償しなくて済むぞ。



 ---



 本日は最終日と言う訳で、皆で全力で楽しもうとなっている。

 昨日も十分楽しんだが、今日はそう言うことじゃない。


 てなわけで本日、俺たちが来ているのは室内アミューズメントパーク。

 修学旅行の最終日と言ったらユ○バみたいな遊園地だ。

 だが残念なことに、この世界に遊園地はない。


 科学技術が発展していないこの世の中で、安全が保証されたものは存在しないのだ。

 魔法陣でジェットコースターを作ろうとした人が過去にいたらしいが、結果は散々だったらしい。


 しかし、こうしたアミューズメントパークはある。

 まぁスポーツとかしかなく、乗り物なんて1つもないが。

 まぁこんな世界だし仕方ないだろう。 


 しかしそれでも楽しめるはずだ。

 この班に、動くのが苦手なやつは居ないからな。


 実を言うと、俺はこういった施設に来たことがない。

 何故か、なんて容易に想像できるだろ。

 ボッチに、こういう施設は無縁だよ。


 前の世界がどうだったかは知らないが、この施設は結構多くのスポーツで遊ぶことができるらしい。

 バレー、バスケ、バトミントン、卓球、野球。

 それ以外にもいろいろだ。

 屋上ではサッカーもできるらしい。

 何でもできちゃうね。


「なぁ

 バスケしようぜ!」


 正気か?哉。

 笠原はバスケ部なんだぞ?

 それに背の高い。


 いやでもまぁ、どうせ楽しむのが目的だろうし本気では来ないだろう。


 それに、俺は別にバスケをしたことがない訳では無い。

 むしろスポーツの中では得意な方だ。

 笠原が本気を出さなければ、ぼろ負けってことにはならないだろう。


 俺も楽しもうじゃないか。


「じゃぁ1体1で回していこう」


 笠原も、全力で俺らを負かしに来るなんてことはしないだろう。

 いくら近くに彼女がいていいとこを見せようと思っても。

 思っても......

 大丈夫だよな?


「カケ、先に行っていいぞ?」


 哉が先を譲ってくれた。

 優しいね。

 譲ってくれたおかげで、俺の最初の相手は笠原となった。


「じゃ、やるか」

「お手柔らかにお願いします」


 なんだよ「やるか」って。

 もしかして、やる気満々だったりします?

 いやほんと、お手柔らかにお願いしますよ?



  ――――遠坂小夏視点――――



「あいつら、楽しそうね」

「そうだね」


 バスケットバールをしている男子たちを他所に、私たちはバトミントンをする。

 『パコーン』『パコーン』と、ゆったりとしたバトミントンだ。


 男子たちのバスケットはというと、大分白熱している。

 私たちとは違って、そこそこ本気のぶつかり合いってことだ。


 今のところは、悠真が勇勢みたいね。

 あの二人は、持ち前の運動神経で何とか食らいついているって感じね。


 実質、あの1対1は、翔琉と伽月の一騎打ちと言ったところかしら。

 その上に悠真が君臨しているって感じ。

 圧倒的強者感が、悠真にはある。


 序列1位と最強の二人には、それほど強者感はない。


 これは今だけの話ではなく、いつもそうだ。

 とても実力派とは思えないほどお気楽そうなのよね。

 強そうにないのに強いって言うのがちょっとムカつく。

 伽月は戦う時も強そうじゃないけど、翔琉は戦う時だけ強そうに感じるところとかがよりムカつく。


 なんであいつ強いの?

 ほんと意味わかんない。


 それでいてあいつ、たまにおちょくって来るからウザい。

 小さいこととかバイトの事とか、いつもなら馬鹿にされたら馬鹿にしてきた相手を黙らせるけど、翔琉には黙らせるどころか、パンチを当てる事すらできない。

 それが本当にストレス。


 あの男、本当に気に入らないのよね。

 馬鹿にしてくることもそうだけど、ユキからの好意に気づかない鈍感さもそう。

 いっちょ前に殺気がどうとか気配がどうとか言っているくせに、どうして好意だけは感じ取れないの?

 それなのに他の女にはデレデレして。

 その上好きな人はいないですって?

 頑張ってるユキがかわいそうじゃない。


 しかし嫌いではない。

 そもそも、嫌いならすぐに離れていくわ。

 私が腹を立てている部分は良い奴なのだ。

 性格は申し分ないし、教えろと言ったら教えてくれる。

 顔も別に悪い方じゃない。


 あいつが弱くてユキの好きな人でなければ、翔琉に不快感は感じないと思う。


 しかしそんなあいつが、今バスケットで悠真に負けているところを見るとなんだかおもしろい。

 あの運度神経抜群で体を動かすものことほとんど負けないと思っていた翔琉が、ああも完敗している所を見るとね。

 少し気分が良くなったわ。


「思っていたより翔琉くんっていい人だよね」


 ネットの向こうにいる遥が、シャトルを打ち返しながらそう言ってきた。

 なんで急にそんなことを?


 私の疑問が表情に出ていたのだろう。

 遥は続けた。


「噂では、序列2位のくせに神様にゴマをすって最強になった卑怯者とか、笑いながら戦う戦闘狂とか、そんなふうに聞いてたから......」


 なんだろうこの気持ちは。

 その噂をしている奴らを引っ張り出して黙らせたくなってくる。

 翔琉がバカにされて苛立ってるの?


 いや、ないわね。

 ユキの好きな人が、そんなふうに奴ではないと言いたいだけよ。

 きっとそう。


 決して、翔琉がバカにされて苛立っている訳では無い。

 だってあいつ、たまに私の事バカにしてくるし。

 ウザイ。


「だから私、班員に翔琉くんがいるって知ってちょっと怖かったの

 でもこの班にはユウくんもいるし、彼と関わらなければいいかなと思ってた」


 ユウくんとは、悠真のあだ名だ。

 あの2人、お互いをユウくんハルちゃんと呼びあっている。

 中等部の頃から付き合っているらしいけど、未だに仲がいい。

 いつまで経っても付き合いたてカップルみたいな雰囲気を撒き散らしている。


 甘ったるくてたまったもんじゃないわ。

 彼女らの近くに長時間いたら胸焼けしそう。


 それにしても遥、最初は翔琉のことをそんなふうに思ってたのね。


 でも、納得は出来るわ。

 あいつ、話す時は話すけど話さない時はまったく話さないし、授業中はほとんど寝ていて不良みたいだし、それに不良グループのリーダー三上から「師匠」なんて呼ばれてるし。


 全然じゃべらない不良グループと繋がりがある良く分からない最強。

 そんなの、誰だって怖いと思うに違いないでしょう。


「でも、実際はそうじゃないかった

 噂って信じられないね」

「そうでしょ?」


 なぜ、私はこうも誇ってるんだろう。


 いやでも噂が信用できないのは本当のこと。

 噂なんて嘘ばっかりだ。

 ユキの噂なんていい例よ。


 私たちの飛ばすシャトルは、相変わらず「パコーンパコーン」とゆったりと弧を描いて飛んでいる。

 互いに点を入れる気なんてなく、ただラリーを続ける事だけを目的としている。

 それでも全然楽しめる。


 正直私は、自分から運動をしようと思う方じゃない。

 ここに来るもの、途中までは少し面倒だとも思っていた。

 けど、実際にやってみるとそうでもないものね。

 こんなお遊びみたいなのでも面白いわ。


「また、皆で遊びたいね」

「そうね」


 私の友達はそんなに多くなく、ユキ以外と遊ぶことなんで別になくてもいいと思っていた。

 必要もないと思っていた。

 けど、こうやってみんなで遊ぶってのもいいわね。


 今回と言いキャンプの時と言い、はたまた花火大会の時も。

 最近は楽しいと思う事が増えてきた。


 こんな風に思い始めたのはいつからかしら。

 思えば、翔琉や伽月がうちの学校に来てからな気がする。

 私の数少ない友達、ね。



 ーーーー佐々木翔琉視点ーーーー



 あれから、サッカーやらバッティングやら色んなスポーツで一日中遊び尽くした。


 どのスポーツも、みんなでワイワイやってると楽しいものだ。

 修学旅行という行事のせいか、普通に遊んでいるだけなのに何故か特別感を感じた。

 修学旅行を、高校時代一番の思い出という人の気持ちがわかった気がする。

 これはいいものだ。


 しかし楽しい時間には終わりがつきもの。

 ひとしきり遊んだ後、北方神国へと戻ってきた。


 一度学校に帰り点呼を終えたあと、そのまま家へと帰る。

 一応帰る時間は決まっていたが、念の為ってことで今日はバイトは入れてない。


 3日ぶりの家だ。

 随分と久しぶりに感じる。


 それにしても、3日分の荷物を持って丘上崖を登るのは大変だ。

 バテるほどではないが、結構しんどい。

 なんて言うか、こういう疲れはなんとも面倒臭い。


 しかし、しかし帰れば彼女が待っている。

 頑張って帰ろう。


 俺は長い坂を登りきり、家の扉を開ける。


「おかえりおにぃ」


 帰って一番、宙が出迎えてくれた。

 玄関を開けた時にはここにいたってことは、俺が帰るのを待っていたのか?

 可愛いヤツめ。


 大荷物を持って、長い坂を登って来た甲斐があったというものだ。

 このかわいい妹が出迎えてくれるなら、何往復でもできる気がする。

 お兄ちゃん頑張っちゃうよ。


 でもまぁ、俺が急にこんなことしだしたら宙は困惑するだけだろう。

 二往復目では「何やってんの?」と変な奴を見るような顔をし、三往復目以降は玄関から離れていることだろう。

 それは俺の本望ではない。


 てかそもそも、久しぶりの「おかえり」だから意味があるんだ。

 数分の間に何回も「おかえり」を貰っても、回数を追うごとに薄れていくに違いない。


「ああ、ただいま」


 とりあえず、この重たい荷物を片付けたい。

 三日分の着替えを選択かごの中に入れ、自分の部屋で持って行っていた小物を整理する。


 ある程度片付けが出来たら、夕食までは時間があるし後はリビングでゆっくりだ。

 宙と二人でのんびりしようじゃないか。


「おにぃ、小腹空いてない?」


 正直なことを言えば空いていない。

 なぜって西方神国からの帰り道で結構買い食いしたからだ。

 アイスとか唐揚げとか、おいしそうな物を結構食べた。

 なので、あまりお腹は空いていないのだが......


 だが、隣に座っている宙を見てくださいよ。

 なんかすごいワクワクした顔をしている。

 俺にお腹を空かせて置いてほしいのだろう。

 めっちゃ可愛い。


 何か用意しているのだろう。

 よし、俺は今空腹です。


「空いてる」


 俺がそう言うと、宙はあからさまに『ぱぁ』っと顔を輝かせた。

 しかしすぐに我に返ったのか、いつもの顔に戻る。

 小腹が空いてると言ってよかった。


 俺はもともとあまり別腹とか無いのだが、宙の出してくれるものなら別腹だ。


 宙はソファーからすっと立ち上がり、台所に向かう。

 俺も付いて行った方がいいのだろうか。

 それとも、ここに居た方がいいのだろうか。


 宙は冷蔵庫を開け、皿にのせた何かを取り出してきた。

 それを持ってこっちへとやって来る。


「おにぃが修学旅行に行ってる間にちょっと練習したんだよね」


 宙が持ってきたのはシュークリーム。

 皿の上に5つくらい乗っている。


「食べて感想聞かせて」


 俺の前に皿が『コツン』と置かれる。

 そして、宙はそのシュークリームを1つ取って口へと運ぶ。

 パクパクと食い進めている。

 かわいい。

 クリーム出てるぞ。


「ありがとう」


 俺も1つ取って口へと運ぶ。

 一口かぶりついた瞬間、中のクリームがあふれ出してくる。

 クリームたっぷりシュークリームだ。

 めっちゃうまい。めっちゃ甘い。


 シュークリームって家で作れるんだな。

 なんか特殊な工場じゃないと作れないものだと思っていた。


「どう?」


 自分でも食べてるので分かると思うのだが、やはり人の意見も聞きたいのだろう。

 いいだろう。

 正直に言ってやろうじゃないか。


「めっちゃうまい

 店だせそうだぞ」

「ほんと?

 言い過ぎじゃない?」

「いや、むしろ言わなさすぎなまである」

「......」


 褒められて照れてしまったのか、宙は黙ってしまった。

 かわいい。愛おしい。一生愛でていたい。

 何なのこのかわいい生物。


 もじもじと照れてる姿がなんとも言えないがかわいい。

 かわいい以外の言葉が見つからないくらいかわいい。


 それにしても宙は、どうしてこうも自分の料理に自信が無いのだろう。

 自分で食べても美味しいはずなんだけどな。

 不思議だ。


「どうしてこれを練習してたんだ?」


 それはとても気になるところだ。

 俺に食べさせてくれるためだろうか。

 それならすごく嬉しいのだけれど。


 まさか、これを上げたい男がいるのか?

 それはあれだ。

 ダメとは言わないが許さない。

 宙の気持ちは許すが、男の方は許さない。


 宙への気持ちと覚悟を念入りに聞き出し、そいつの性格を十分に理解したうえでお断りだ。


「あげたい人がいるから......」


 宙が恥ずかしがっている。

 かわいい。


 いやいやそうじゃない。

 今大切なのはそこじゃないんだ。


「お、男か......?」


 男なのか?

 男なのか?

 手作りのものをあげたいって言うことは、男だよなぁ......


 その男は、俺であってほしい。

 「おにぃにあげるために作ったの」みたいな感じで。

 それならいいんだけど......


「男子っていうか......」

「そうだよなぁ

 男じゃないよな」

「どしたのおにぃ」


 急にテンションが上がった俺に、驚きの宙。

 驚きというよりは、なんかちょっと引かれてる気がする。

 引かないで遅れや宙さんや。


 でも、男じゃなくて一安心だよ。

 うちの宙を中途半端な男にやってたまるもんか。

 ちゃんと宙を守れるような男でなくてなならない。

 力的にも精神的にも。


 少なくとも、精神と力量共に俺より強くなくてはならい。

 それが最低条件だ。


「いや、ちょっとな

 でも、男じゃないなら誰にあげるんだ?」

「......言いたくない」


 これ、男のパターンじゃね?

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