表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第九章 『二学期』
98/158

第九十六話 『観光』

 今日、二人はこっ酷く怒られた。

 笠原に至っては、小夏の説教が終わってからも追加で彼女からのお説教だ。

 大分しんどかっただろう。


 現在の二人はというと、布団に入って熟睡だ。

 てか、哉の寝相が悪すぎる。

 俺の布団にまで入ってきて、俺が寝られない。


「邪魔だ」


 俺がそうやって小声で起こそうとしても全く起きない。

 体を揺さぶっても起きない。


 こいつの眠りの深さはどうなってるんだ。

 普通こんなに揺さぶったら起きるだろ。


 もういい。

 俺は哉を起こすのを諦め、引きずって彼の布団へと戻す。

 ......これでも起きないか。


 こいつ、朝どうやって起きてるんだ?

 自分で起きる分だとすんなり起きれるのか?

 それとも三葉さんに......

 くそ、羨ましいじゃねぇか。


 いやいや、俺なんか学校一かわいい女の子に起こしてもらえるんだもんね。

 妹だけど。

 俺の方が早く起きるけど。


 もういいや。

 寝られる環境が整ったんだ。

 早く寝よう。

 今のうちに寝よう。


 俺は再度布団に入り、睡眠を試みる。


「ぐぁ!」


 布団の上から、踵落としを食らってしまった。

 いてぇじゃねぇか......

 いい度胸だ。

 ぶっ飛ばしてやる。


「ちょ、ちょっと待て!

 落ち着け、落ち着けぇ!

 早まるな!」


 笠原が俺にしがみついてくる。

 やめろ、止めるな笠原。

 俺はやるぞ。ぶっ飛ばす。


「伽月もわざとじゃないって!」

「いいや

 絶対わざとだ」


 だってこいつ、キャンプの時はこんなに寝相悪くなかったもん。

 今日のは絶対わざとだ。


「いやいや

 決めつけるなって!」

「キャンプの時はこうじゃなかった!」


 そうだ。

 あの時はおとなしかったんだ。

 だからここまで暴れるのはわざとに違いないんだ。


「キャンプってことは寝袋だったんだろ?

 じゃぁ暴れないって!」

「......

 それもそうだな」


 そう言えばあの時は寝袋で寝ていた。

 寝袋で踵落としはできないだろう。


 もしかして、哉がたまに三葉さんと喧嘩してるのはこの寝相のせいか?

 だとしたら一緒に寝ているってこと......

 けしからん。

 やっぱりぶっ飛ばしてやろう。


「やっと落ち着いたか......」


 笠原はそう言って手を放した。

 大変だっただろう。

 悪かったな。

 でも悪いのは哉だ。


「ああ」


 なんか面倒臭くなってきた。

 もうぶっ飛ばすのはやめよう。

 早く寝たい。

 俺まだ一睡もできてないし。


「じゃぁ俺は寝る

 お前も早く寝ろよ」

「あぁ......」


 笠原は寝た。

 俺の睡眠を邪魔するのは哉だけ。


「大人しくしていてもらおうか......」




 翌朝。

 俺はいつも通りの時間に目が覚めた。


 でも、こんな街中で訓練をするわけにもいかないしな。

 今日はちょっと走ってくるくらいでいいかな。


「......起きたか」


 布団から出ようともぞもぞする俺に、笠原が話しかけてきた。


「お前、もう起きてたのか」


 こいつ、起きるのめちゃくちゃ早いじゃん。

 俺も大分早起きな方だと思うのだが、それよりも早い起床である。


「いやぁ、あまり寝れなくてね

 枕固いじゃん?」


 どうやら彼は、枕が変わると寝れないタイプらしい。

 俺からしたら理解ができないが、まぁそういう人もいるだろう。


「大変だな、お前も」

「いや、大変なのは俺じゃないだろ......」


 どういうことだ?

 寝れないとか、めっちゃ大変だろ。

 俺も昨夜経験したからな。


「これ、どういうことだよ」


 笠原の視線の先には、ロープでぐるぐる巻きにされた哉がいた。


「寝袋だと暴れないって分かったからな

 それを再現してみた」


 どうだ、天才的発想だろう。

 誰も寝相が悪い人をロープで固めるなんて思いつかないからな。


「なんでロープなんか持ってるんだよ」


 ん?

 なんで持ってきたんだ?


「念のため?」

「修学旅行のどこでロープなんて使うんだよ」

「こういうとこだろ」

「......」


 笠原は何も言わなくなってしまった。

 俺の言っていることに納得したのだろう。

 分かってくれてよかったよ。


 それにしてもこいつ、良くここまでされるまで起きなかったな。

 幸せそうな顔しやがって。

 まぁいいや。


「俺は走りに行ってくるが、お前はどうする?」


 俺たちが起きた時間は、朝食の時間までかなり時間がある。

 これから何もしないのはかなり暇になると思うのだが......


「うーん......

 俺はここに居るよ」

「大分暇だと思うぞ?」

「哉が起きた時の反応とか気になるし」


 確かにそれは俺も気になる。

 でもしかし、俺は走りに行くんだ。

 どうか帰ってくるまで待っててくれ。


 なんか死亡フラグみたいだな。

 言い方を変えるか。

 眠ってろ。


「じゃぁ行ってくる」

「ガンバレ~」


 俺はお茶を入れようとする笠原に適当に見送られ、エントランスへと降りた。


「どこ行くの?」


 急にこれを掛けられた。

 まぁそこにこいつがいるってことは知っていたが、わざわざ話し掛けられるとは思わなかった。

 いやでも、話しかけるくらいはするか。


「お前も起きるの早いよな」


 キャンプの時と言い今日と言い、小夏は本当に早起きだ。

 こいつも枕が変わったら寝れなくなるタイプなのか?


「毎日朝食を作ってるからね」

「へー

 朝食を......」


 は?

 この小夏が早く起きて料理とか、まったく想像できないんだけど。

 この適当に生きて良そうな小夏がねぇ......

 衝撃の新事実です。


「何その顔

 どうせ意外とか思ってるんでしょ?」

「あー

 まぁ......」

「そうだと思ったわ」


 なんかすいません。


「あの子、発育が遅いじゃない?」


 お前もな。


「今、私の事馬鹿にしたでしょ

 殺すわよ」


 どうして分かるんだよ。

 意味がわからない。


「ユキには、良く寝て良く育ってほしいからね」


 ホントこいつ、妹思いだよな。

 妹思いっていうか妹好き。

 俺と一緒だね。

 いいと思うよ。


「で、あなたは何しに行くのよ」

「ちょっと走りに行ってくる」

「ふーん

 最強も大変なのね」


 小夏は何か納得したように言った。


 別に最強であることはそんなに関係ないんだけどな。

 生前からランニングはしてたし。

 まぁ、それで納得してくれたんならそれでいいや。


「迷子にならないように気を付けなさい」

「ああ」


 こいつが言うと説得力あるな。

 昨日迷子になったやつの言葉は違う。


 俺は旅館を出た。

 そう言えばあいつ、なんでエントランスにいたんだ?

 購買にでも用事があるんだろうか?

 早朝から何買うんだよ。


 まぁいいか。

 俺とは関係ないし。


 てなわけで、俺は外に出て走り始めた。



 ---



 あれからしばらくたった。

 俺のランニングも終わり、朝食もすでに食べ終えた。


 ちなみに、俺が走っている間に哉は起きてしまったらしく、俺が帰った時にはすでに解放されていた。

 俺が帰ってそうそう、「何てことしてくれやがった」「体がいてぇじゃねぇか」と飛び掛かって来たが、俺としては昨夜の踵落としもかなり痛かった。


 あれを食らいながら寝る事なんて不可能だ。

 こいつが悪い。


 ってことで、今日からこいつは居間の横にある窓側で椅子が置かれている良く分からない空間で寝ることになった。

 俺と笠原は昨夜と同じで居間で寝る。


 哉は気に入らないらしいが、彼一人の犠牲で俺と笠原の快眠が約束されるので黙ってもらった。

 一人の幸せより二人の幸せ。

 最大多数の最大幸福だ。

 要は多数派社会だな。



 で、今は旅館を出て修学旅行をしている。

 今までも一応修学旅行ではあったが、ほとんど何もしていない。


 それに比べ、今は修学旅行してるって感じだ。

 だって今、どでかい神社に来ているからな。


 その名も『八面重神社』

 この神社は、まだ居住可能地域が完成する前に建てられたそうだ。

 東西南北全ての方角から押し寄せる魔物に対応すべく、まる4日で建てられた本堂が正八角柱の建物だ。


 これだけ大きな建造物を、たった4日で立ててしまう。

 能力があるとはいえ、かなりすごいことだ。


 莫大な量の建築材料と、莫大な量の人材を集めて作られたこの神社。

 かなりの人が死んでしまったものの、全方向からの魔物を打ち払った建物だ。


 円ではなく八角形にしたのは、与えられた範囲の魔物を確実に一掃させるためだとか、違うとか。

 諸説ある。


 ただこの神社がすごいということだけは本当だ。

 4日で建てた建造物が、今も尚残っている。

 一度改修工事が行われているとはいえ、この神社の設計をした人はかなり凄いのだろう。


 ちなみにこのことは、三浦さんが教えてくれた。

 彼女は歴史が好きならしく、授業で習わないようなことまで知っているのだと。


 三浦さんは歴史の勉強と言うよりは歴史そのものが好きらしく、こういう歴史的建造物を見てわかりやすくテンションが上がっている。


「見て見て!

 これ、すごく強い魔物を固めている石なんだって!」


 一足先に前へと進んでいた三浦さんが体を大きく使ってアピールしている。


 俺と哉には敬語で接していたのに、そんなことも忘れて興奮しているようだ。


「ほんとだ

 この辺顔みたい」


 笠原は石の1箇所を指さしてそう言った。

 確かに顔みたいだ。

 だが、顔と言われれば顔に見えるし、違うと言われれば違って見えるって感じ。

 微妙な顔だ。


「きゃー

 こわーい」


 そう言って笠原に抱き着く三浦さんは、楽しそうだ。

 こんなとこに来てもイチャイチャを忘れない。

 ここまでくると感心するな。


「なぁ

 これ触ったら強くなれるらしいぜ!」


 哉はこの石の歴史より、この石につけられた適当な効力の方に興味があるらしい。

 魔物封印した石を触って得られる力って、なんかヤバそうだな......

 魔人化の因子を受け取って、その影響で強くなるとかじゃないよな。

 この「強くなる」っての、ただの迷信だよな。


 迷信だとしても、俺はあまり触りたいとは思わないな。

 こわいもん。

 魔人にはなりたくない。


 哉はというと、何の疑いもなしに石を触っている。

 こいつが魔人化したらめんどくさそうだな。

 校内序列1位が魔人化。

 厄介すぎるだろ。


 まぁ、こいつが魔人化する想像なんて全くできないが。

 こいつはいつまでたっても哉を貫いてそうだ。

 いいことだね。

 いつまでもそれでいてくれよ。


「見てあの一枚岩!

 あれを使って初代西方神様が戦ったんだよ!

 すごくない?」


 三浦さんが興奮冷めやらぬ様子で指さすのは、横2メートルで高さなんて俺二人分くらいの一枚岩だ。

 これを使って戦ったって?

 授業で習ったが、確か初代西方神様は能力を使えなかったそうだ。

 それでこの岩使って戦ったの?

 バケモンじゃね?

 東の鹿野津よりもムキムキなんじゃないか?


 流石神様と呼ばれるだけある。

 まぁ、北の神様に聞いた話だと自分から神様を名乗り出したらしいが。


 この八面重神社では、、三浦さんがずっと興奮しっぱなしだ。

 どこに何があるかをほとんど知っていて、それを実際に見て凄い楽しそうにしていた。

 楽しいなら何よりだ。


 俺はというと、皆でいる分は楽しいがこの神社自体はどうも思わない。

 だって歴史興味ないし。

 昔から生きている神様に、本当の歴史を教えられたら歴史に興味なんて無くなるだろ。



 で、次。

 次は俺が行きたかった場所だ。

 他の皆は俺に付き合わされてるって感じだ。

 申し訳ない。


 でも、楽しめなくはないと思うよ。

 いろいろあるし。


 俺が行きたい場所は『魔法陣博物館』

 その名の通り、これまでの凄い魔法陣が展示されている博物館だ。

 俺は最初、ただ強くなるために魔法陣を学び始めたが、なんか結構楽しくなってきた。


 魔法陣ってのは面白い。

 魔法陣というのは、言わば魔力の通り道だ。

 魔力がどのような形で動くのかによって、どのような効果をもたらすのかが決まる。


 その動き方はいくつかのパターンがある。

 水系統ならこの形、岩系統ならばこの形と、少しの狂いも許されない基本的なパターンが。


 その後に、細かな設定を加える形を組み合わせていくのだ。

 そうして出来上がるのが魔法陣。


 魔法陣を書く際に最も気を付けなければならないのは、決まった形からずれてはいけないということだ。

 ずれてしまえば、狙った物とは少し違った効果になる。

 それが積み重なることで、想像していたのとは全く違う魔法陣が出来上がってしまうのだ。


 だから、魔法陣を書くのは難しいと言われている。


 人間の体は魔法陣と同じような働きをして、魔力を動かし効果を持たせるのが能力だ。

 体の構造は、微妙に人それぞれで違う。

 まったく同じになることなんてありえないと言っても過言ではないだろう。

 その為、人の体を通って効果を持つ能力には同じものが無いのだ。


 そして、なぜか人間のを通る魔力は基礎的な形だけでいい。

 魔法陣だとその後に続けなければいけない形を、人間のイメージだけで補えているのだ。

 その仕組みは分からない。


 だが、基礎的な部分は体が無条件で、細かい所はイメージで補えるので能力に失敗しにくい。

 まぁイメージが不鮮明だと失敗するが。


 こういう点だと能力は便利だな。



 で、この博物館にはその難しいとされている人工の魔法陣で、優秀なものが集められている。

 魔法陣が好きな人からすれば最高の空間だろう。

 俺もこんな魔法陣を書いてみたいものだ。


「なんか良く分かんねぇけどスゲェな......」


 魔法陣について何も知らない哉でもこのように魅了されている。

 凄い魔法陣は知識のない人から見ても凄いのだろう。

 まぁ綺麗で細かいしそうも思うだろう。


 ちなみに、この世界で最も優れた魔法陣職人は北方紳様である。

 あの神様は規格外だ。

 狙った通りの魔法陣を作り出す。


 だが、多くは作らないのだ。

 その為、彼の作る魔法陣は滅茶苦茶に高い。

 かなり収入がいい最強という職業である俺でも買うのをためらうレベルだ。

 控えめに言ってヤバい。


 この世界は、そういう魔法陣職人によって成り立っていると言っても過言ではないだろう。

 俺もそんな魔法陣職人になりたいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ