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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第九章 『二学期』
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第九十四話 『誘拐』

「なぁ、女子二人どこ行った?」


 突然の哉の言葉に、俺は慌てて振り向く。

 その先には、さっきまでいた二人が姿を消していた。

 観光に夢中で気にしていなかった。

 いつの間にかはぐれてしまった。

 初日から迷子とはな。


 向こうが迷子なのか、俺らが迷子なのか。

 いまいちよく分からないが、そんなのはどうだっていい。


 迷子ならいいのだが、もし誘拐なんてことになっていたら大変だ。

 早く探さなければ。


 しかし、振り返っただけでは当然見つからない。

 それどころか、人の波に押されて上手く戻れない。

 俺一人なら戻る手段はいくつかあるが、俺達男子群まではぐれてしまったらなおさら面倒だ。


 本当に人が多い。じゃまだ。

 流石観光の国だな......


「こっちに来い!」


 とりあえず、これ以上人の波に流されないよう、横にあった店の中へと逸れる。


「迷子か誘拐か......」

「迷子であってほしいな......」


 二人がそうやって会話している中、俺は一人で頭を動かしていた。


 あの時、二人といつはぐれたのか分からなかった。

 ここは人が多すぎるのだ。

 俺は耳がいいが、逆にそれが今では弱点になっている。

 人の声しか聞こえない。

 正直うるさい。


 そんなこの場所である為、二人がどこに行ったのかはさっぱりだ。

 迷子か誘拐かも分からない。


 これが仮に誘拐だった場合。

 ヤバくはあるが、探しやすくはなる。

 誘拐後に、犯人が行く場所と言えば人通りが少なく目立たない場所だ。

 だから良く倉庫とかが選ばれるのだ。


 仮に迷子だった場合。

 探しにくい。

 どこに行ったのかが分からないのだ。

 だがおそらく、はぐれたのであれば小夏の行きたいところに言っているだろう。

 小夏が三浦さんを連れまわしている感じだと思う。


 多分あいつのことだから、その場にとどまるってことはしない気がする。

 じっとしてろよ。


 迷子と誘拐。

 捜索するにあたってどちらを想定して動くべきか.....


「誘拐を想定して動くぞ」


 迷子なら捜せばいいだけなのだが、誘拐の場合は危険があるからな。


「分かった」

「何処を探す」


 とりあえず、さっき言った条件に当てはまるような場所を探そう。

 高い所に行けば、人を探すより簡単だろう。


「まずは高い場所に行こう」

「そうだな」


 しかしこの付近。

 あたり一面平地である。

 どうしたものか......


 一度、旅館に戻ろう。

 あの旅館、一番上まで行けばそれなりに高い。

 そこから見てみよう。



 てなわけで、俺が一人で旅館の屋根によじ登ってあたりを見渡している訳だが。


「あそこか......」


 見渡してみると、条件ピッタリの場所があった。

 誘拐されたのだとすれば、あそこにいる可能性が高いだろう。


 とりあえず屋根から降りて二人に知らせる。


「それっぽい場所があった

 そこには俺と哉で向かう

 笠原は、迷子である可能性もあるからこの辺を探してきてくれ」

「分かった」


 笠原は良い返事だ。

 哉は考えることをやめて指示に従っている。


「一時間後に、ここに集合だ」

「ああ」

「じゃぁ、行くぞ」


 俺たちは出発した。



 ---



 俺と哉は、全速力でその場所へと向かう。

 普通の道なんて通っていたら時間がかかる。

 建物の屋根を飛んだり走ったり、パルクールのように目的地へと向かう。


 俺はパルクールを習っている為簡単に走ることができるが、哉までも普通についてきている。

 こいつ、めちゃくちゃ運動神経いいよな。


 笠原を捜索にあたらせたのには理由がある。

 仮に戦いになった場合、悪いが笠原はお荷物だ。

 ならば、迷子の可能性に掛けて捜索に向かわせた方がいいだろう。


「着いたな......」

「いかにもって感じだな......」


 ここはそれなりのサイズの倉庫。

 大きい訳でも小さい訳でもない。

 少し古びたそんな倉庫だ。

 蔦が伸びており、錆びている。


 普通なら、こんな場所に人はいないだろう。

 だが、中からは人の気配がする。

 五人、いや二桁は居る。


「まぁいい」


 俺は大きな鉄の扉を開ける。

 結構重い。


「誰や?」


 扉の向こうには、二人の男がいた。

 二人だけだ。


 この倉庫に二人だけ。

 おかしい。気配では二人ではない。

 なぜだ。


「......誰や?」

「哉だ!」


 こいつ、どうして本名をそんなに簡単に言うんだ。

 今後、狙われることになるかもしれないぞ。


「......佐藤だ」


 哉とは違い、俺は適当な偽名を名乗る。

 俺は狙われたくないからな。


「は?

 お前は佐々木だろ?

 自分の名前は間違えるなよなぁ」


 こいつ......

 余計なことしやがって。


「佐々木?」

「それって......」


 なんだよ「それ」って......

 人を「それ」扱いすんなよ。

 てか、俺だったらなんなんだよ。


「ジブン、もしかして北の最強か?」


 なんと、ご存じでしたか。

 いやぁ、俺も有名になったもんだなぁ


「おもろいやないか」


 俺が最強と知って逃げてくれるかと思ったが、むしろやる気満々だ。

 まいったな。


「ほな、いくで?」


 二人はそれぞれ、持っていた斧と槍を構える。


「カケ、俺らもやるぞ」


 哉はそう言って、あの二人に向かって走り始めた。

 俺は、それをただ見ていた。


 俺が追う必要なんてない。

 だって......


「なんだよあいつら

 自信満々だったから強いのかと思ってたのに......」


 瞬殺だった。

 敵二人は一言も喋る隙を与えられずに倒された。

 やられる時の「うわぁ」なんて声すらも聞こえなかった。

 流石序列1位だな。


「まぁいいや

 ここにはいないみたいだし、次行こうぜ」

「いや待て、まだいる」


 根拠はない。

 だが、気配を感じるのだ。

 まだ人がいるという。


「なぁ、これなんだ?」


 哉が指さしたのは壁、ではなく壁と同化したスイッチだった。

 隠しスイッチってやつだ。

 見つけるまではなんてことないが、見つけてしまえば怪しさ満点だ。


 なんなんだろう。

 爆発とかしないよな。


「あんまり気軽に押すなよ」

「え?

 もう押したけど」


 こいつ......

 もし爆発とかしたらどうするつもりなんだよ。


『ガコン』

『ガラガラガラ』


 哉がそのボタンを押した直後、倉庫の奥から妙な音が聞こえてきた。

 そこには、隠し扉みたいなのが出現していたのだ。

 てか、みたいなのじゃなくて隠し扉だ。


「行こうぜ」


 こいつ、なんか楽しそうだな。

 小夏ら二人を探してるってこと、忘れてるんじゃないか?


 哉が見つけた隠し扉。

 その先には下に続く階段があった。

 地下室か。


 哉が隠し扉を潜った刹那。


『ガガガガガガーン!!』


 激しい轟音が轟いた。


「哉!」


 あの連射を食らえば、確実に死ぬ。

 哉は......


「あっぶねぇ......」


 銃撃が止んだ後、岩壁を作った哉が煙の中で呟いた。


 良かった。

 哉は生きていた。

 何とかあれを防いだみたいだ。


「次は俺だな」


 煙が晴れた直後、哉は岩砲弾を放った。

 それは敵を確実に仕留め、残り全てであろう敵を眠らせた。


 俺、何もしてなくね?


 気配はもうない。

 おそらく、ここに小夏と三浦さんはいないだろう。

 外れか。

 次の場所を探さなければ。


 しかし、俺は先へ進む。

 何か手掛かりがあるかもしれない。


 俺たちは倒れた敵を乗り越えて地下室へと入った。


「なんだ、これ......」


 そこには、異常な量の武器があったのだ。

 学校の闘技場に付属してある武器庫とは比にならないほどの量だ。


 異常な空間だ。

 気がおかしくなりそうになる。

 早くこの部屋を出たい。


 しかし、俺と哉は帰らない。

 ここに、なにか有力な情報があるかもしれないから。


「哉は部屋に何かないか見て来てくれ

 俺はこいつらが何か持ってないか見てみる」

「ああ、分かった」


 俺は足元にいる奴のボディーチェックを始める。


「ん?」


 俺は、この男の背中、首の少し下らへんで何かが赤く光っているのを見つけた。

 服を引っ張ってのぞき込んでみると、そこには魔法陣が書かれてあった。


 赤く光る魔法陣。

 これを俺は知っている。

 魔法陣について勉強している中で知ったものだ。

 これは、奴隷紋だ。


 奴隷紋を書かれた人は、主人の命令に背くと焼けるような熱と痛みに襲われるという。

 そても、主人の意思に背くことなんてできない。


 こいつらは、誰かに命令されてこんなことをしていたのか。

 少し可哀そうだと思うが、俺たちは女子二人を探さなければいけない。

 再度ボディーチェックを開始する。


 するとポケットに、何か入っていることに気づいた。

 それは地図。

 このあたりの地図だ。

 それもある一点にバツ印が書かれている。

 それはどうやら、とある公園を指しているようだ。


 次に行く場所が決まった。


「哉、次の場所に行くぞ」


 俺はいくつかの武器を頂戴して、この部屋を出るため会談へと向かう。

 が、哉が着いてこない。


「哉?」

「なぁカケ......」


 哉は、地下室の奥から戻ってこない。

 何か見つけたのか?


「これ、なんだ?」


 俺は哉のいる場所まで戻る。

 それは地下室の一角。最奥だ。

 そこはずらっと並んだ武器が不自然になくなっていて、壁にホワイトボードが埋め込まれていた。

 そのホワイトボードには大量の写真が磁石で止められている。


 俺はそのホワイトボードを見て目を剝くことになる。


 ホワイトボードの写真。

 それを押しのけて作られていたもの。

 それは、

 俺を中心とした、人間関係の相関図だった。


「なんだこれ......」


 俺は、何も知らない。

 こんなの作られているなんて全く知らなかった。


 この相関図に、俺は一切関与していない。

 それなのに、かなり詳しい。

 それに新しい。


 俺が鹿野津を倒したこと、更には笠原や三浦さんと関わったことまで既に書かれている。

 なんなんだこれは。


 俺と関係のある人はもちろん、一度話したくらいのやつについても書かれてある。

 さらに、俺の周辺事情なのに俺より詳しい。


 小夏が猫好きとか、全然知らなかったんだけど。

 想像できない。

 猫耳メイドになりたいほど好きなのか......


 てか穂香のやつ、許嫁がいたのか。

 それなのに俺にくっついてくるってことは、あまり望んだ結婚ではないのか?


 その相関図には、俺が最強になってからのことがみっしりと書かれていた。

 それも、異常に詳しく。

 気持ち悪い。


 ていうか、明香・陽介・司書さん・笠原カップルに付けられている赤丸は何なのだろう。

 よく見ると、相関図の外側にある写真にも赤丸が付けられている写真がある。

 なんなんだ、この印は?

 この、丸が付いている人が近いうち狙われるのだろうか。

 分からない。


 どうして俺を直接狙わない。

 わざわざ俺の周りから。

 俺の周りにいる人達が本当に狙われでもしたら、主犯を見つけ出してぶっ殺す。


 とりあえずは、俺周辺の赤丸達が襲われないように注意しておこう。

 俺から遠い場所にいる陽介は難しいかもだが、あいつは最強だし大丈夫だ。


 仮に、この軍団に小夏と三浦さんが拐われたのだとしたら、俺を狙った何かに巻き込まれたのだ。


 「仮に」とは言っているが、俺周辺のことを調べている軍団がいるってことは、2人はこの軍団に拐われた可能性が高い。


 早く探さなければ。


「哉......」


 俺の深刻そうな声に、相関図を見ていた哉が「なんだ」と俺の方を見た。


「次に行くぞ」



 俺と哉は倉庫の外に出て、再度屋根の上を走って次の場所へ向かう。

 次の場所は公園。


 俺たちは全力でその公園へと......


「おーい!」


 聞き覚えのあるその声に、俺たち2人は足を止める。


 声の主は笠原だ。

 たまたまちょうどいいタイミングで、、倉庫から公園への行き道に来たのだろう。

 で、声をかけた、と。


 しかし今はそれどころではない。

 2人を探さないと。

 俺は公園の方を向き、再度出発しようとする。


「2人、見つかったぞ!」

「は?」


 俺は再度、笠原の方を見る。

 すると笠原の後ろから、小夏と三浦さんが着いてきているのが見えた。


 なんだ、迷子だったか。

 それは良かった。

 良かったんだが......


 この出来事で、不気味なことを知ってしまった。

 2人の無事が分かったというのに、気が晴れない。

 気持ち悪く、寒気に似た感覚が残った。


「見つけたのか!

 いやぁ、人攫いとかじゃなくてよかったな」


 哉は気楽そうだ。

 屋根から飛び降りて、彼らと合流した。

 俺もそれに続く。


「迷子はあなたたちの方でしょ?」


 小夏はいつも通りだな。

 自分が悪いとは微塵も思っていないらしい。

 俺ら側からしたら、迷子はこいつらでめちゃくちゃ探し回ったんだがな。


「でもまぁ、見つかってよかったよ」


 数分ぶりの再会を果たしたカップルは、これまで以上にくっついていた。

 感動の再開だな。

 笑える。


 笑えねぇよ。

 イチャつくんじゃねぇバカップル。

 独り身の俺が寂しくなるだろ。


 しかしまぁそんな感じで、修学旅行先での迷子事件は幕を閉じた。



 ---



 夜。

 旅館に帰り、女子は女子の部屋、男子は男子の部屋で楽しんでいた。

 雑談を決め込んだりトランプをしたり。


 トランプゲームってのはいろいろある。

 ババ抜きとか神経衰弱とか、はたまた大富豪とか。


 これらのトランプゲームは、ネットでやったことがある。

 で、どうやら俺はババ抜きと神経衰弱が強いらしい。

 逆に大富豪は激弱だ。

 何度かやったが、一抜けなんて一度も出来なかった。

 笑えるね。

 実際に笑われたし。


「喉が乾いた

 コンビニ行ってジュース買ってくる」

「はいはーい」


 哉が手を振って送り出してくれた。

 なんかすごいバカにされている感じがする。

 哉と笠原の2人は、俺の大富豪での負けっぷりをまだ笑っている。

 そんなに笑わなくても良くない?


 まぁ楽しそうならいいけどさ。



 俺は旅館を出てコンビニ、ではなく公園に向かう。

 外出時間が長いと怪しまれるので、昼のように全速力で屋根の上を走って。


 そうやって移動すると早く着く。


 その公園には街灯がなかった。

 月の明かりだけで、あたりは真っ暗だ。


「何も無い、か......」


 ぱっと見た感じ、例の集団に繋がるような物は何も無い。

 何かあるかもと思って来てみたが、流石にな。


 地図を見つけたのは昼。

 あの時は何かあったのかもしれないが、流石に何時間も経てば主犯どころか集団に繋がるものすら無い。

 仕方ないな。


「帰るか」


 俺は踵を返し、次こそコンビニに向かう。

 あいつらのも買って帰ってやろう。

 全員ヨカ・ヨーラでいいよな。


「!?」


 一瞬、俺はどこからか視線を感じ、後ろを見た。

 が、そこには何も無い。

 音もしなし気配もない。


「気のせいか?」


 俺は再度、屋根の上へと登った。

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