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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第八章 『夏休み』
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第八十三話 『川遊び』

 最初に出てきたのは穂香だった。


 テントの入口がヒラリと揺れ、中が見えるのではと期待してしまった。

 中が見えれば、お着替え中の女の子を遠巻きに拝むことができるのだ。


 しかしまぁ、あのテントを組み立てたのは俺と哉。

 中の構造は知っている。


 あのテント、無駄にしっかり作られていて、中が見えないよう入口付近に1枚の壁があるのだ。

 壁と言っても、テントと同じ素材の布だ。

 だが、そんな布でも覗き見防止には十分である。


 邪魔だ。本当に邪魔だ。

 例えるならなんだろうか、温泉回の謎光線くらい邪魔だ。

 いや、局部だけでなく何も見えないのでそれより邪魔かもしれない。


 まぁいい。

 中を見るのは諦めよう。

 今は目の前の水着美少女を見ようではないか。


 穂香の水着は、なんかスカートみたいなひらひらが付いたビキニ。

 名前はなんだっけか。

 パリオだったかガパオだったか。

 うる覚えだが、なんかそんな感じの名前だった気がする。


 そんな名前の薄い生地を腰に巻いた水着。

 見た目清楚系の彼女にとても似合いそうな落ち着いた感じの水着である。

 しかしそれであって露出度が高い。

 最高だね。

 てか、実際似合っている。


 全体的に白く、所々赤色の薔薇っぽい模様が入っている。

 俺は花についてそんなに詳しくないので本当に薔薇なのかは分からない。

 でも、薔薇ってこんな感じだったと思う。


 その模様も沢山では無い。

 ちょうどよくって感じだ。

 落ち着いた印象を受ける水着だな。


 しかしなんだろうか、落ち着いた印象を受けるのにドキドキする。

 女の子の白い肌がすぐそこにあるのだ。

 エロい。

 興奮しちゃうね。


「翔琉先輩、どうですか」


 穂香は、その薄い生地を両手で軽くつまんで、くるりと回って見せた。

 感想をよこせってことだろう。


「似合ってると思うぞ」

「えへへ、そうですかぁ」


 俺の言葉を受け、穂香は嬉しそうにだらしなく笑った。

 笑ったというより、照れていた。

 こいつのこういうところ、ちょっとかわいいよな。


「かけ君かけ君!

 私は私は?!」


 後ろから俺を呼ぶ声がして、振り返ると妙に距離が近い明香が目の前で目を輝かせていた。


 こいつも水着の感想が欲しいのだろうか。

 でもなよんちゃん。

 そんなに近づかれれば何も見えないぞ。

 見えるのは谷間だけ。


 無論、見えるからと言って直視したりなんかしないが。

 目に見えるものを、片っ端から見てればいいって訳じゃないんだなぁこれが。

 難しいこった。

 でも......


 目が、目がぁ、吸い寄せられてしまう。

 我慢だ我慢。

 ガン見なんてしたら気持ち悪がられてしまいかねない。


 てか、よんちゃんに関しては今までも水着であったため、今彼女の水着を見る必要なんてないんだ。


「似合ってると思うぞ」


 穂香に言ったのと全く同じ言葉を言ったのだが、よんちゃんは嬉しそうな顔をした。

 だが、一瞬だけ。


 すぐにいつもの笑顔に戻り、「そっかー」と明るく言った。


 個人的には上着は着ずに色々見せて欲しいものだが、嫌われそうなので言わない。

 今までよんちゃんを見てきたところ、彼女はあまり体を見られるのが好きではないらしい。

 まぁ、自分の体をまじまじと見られるのが好きなんてやつはあまりいないだろうが。



 次に出てきたには三葉さん。

 それを見た哉は、自分から「いいね」と言いながら親指を立てて見せていた。


 確認されてから感想を言う俺と、自分から感想を言う哉。

 彼女待ちと彼女持ちの違いは、こういう細かいところなんだろうか。

 なんかそんな気がする。

 次からはそうしてみようかな。


 俺がそんな考察をしていると、哉と三葉さんがイチャイチャしだしたのであまり関わらないようにしよう。


 てか、俺の前でイチャイチャしないで欲しい。

 虚しくなってくるじゃないか。

 はぁ......


 俺が声に出さないようにため息を着いていると、次の人が出てきた。


 こうやって一人づつ出てくる感じ。

 なんかファッションショーみたいだな。

 この石だらけの川辺がランウェイですか。


 そんなことはどうでもいい。

 次のモデルは大目玉。

 宙である。


 宙の水着は全身普通の服っぽいデザインだった。

 肩とお腹が少しづつ出ていて、ミニスカみたいなのを着ている。

 上が白い服で、下が焦げ茶のミニスカである。


 そして、セミロングの髪を後ろでひとつくくりにしている。

 いつ買ったのか分からない丸い浮き輪と水鉄砲も装備している。


 全体的にヒラヒラしてて、素人目に見てもかわいい。

 かわいいな。

 うん、かわいい。


「かわいいぞ」


 今回は俺からそう言って、近づいてきた宙の頭をわしゃわしゃと撫でる。

 あまりにも可愛くて、撫でくりまわしたくなってのことだ。


「やめて」


 結構本気で拒否されたので、頭を撫でるのを即中断した。


 失敗したな。

 次だ。


 俺が次を決意した直後、ちょうどよく残りの姉妹がテントから出てきた。

 この2人は、あまり水着に力を入れていないようだ。

 まぁ、力を入れるようなキャラでは無い気がするしな。

 そんな姉妹は、2人揃ってスク水だ。


 スク水。

 いいじゃないか。

 一定層からは爆ウケだろう。

 俺も嫌いじゃない。むしろ、好きとも言える。

 てか、男で女子のスク水が嫌いな人の方が少数なんじゃないか?


「いいね!」


 俺はそう言いながら、親指を立てた。

 哉の真似である。

 やはり、お手本は真似するためにある。

 そんなことでも、お手本を真似することから始まるのだ。


「キモ......」


 小夏は、心底嫌そうな顔をした。

 心の底から気持ち悪がっている感じだ。


 なんなんだよ。

 俺と哉で何が違うってんだ。


 顔か?性格か?タイミングか?

 少なくとも、タイミングはかなり悪かっただろう。

 一番の原因とも言える。


 スク水女子相手に、キメ顔で「いいね」なんて思い返せばかなり気持ち悪い。

 今回も失敗。次はない。


「すいません、水着買いに行けなくて......」


 ユキちゃんは皆の水着を見ながら、そう言って頭を下げた。


「全然大丈夫だよ

 楽しめればいいんだよ!」


 そう元気よく言ったにはよんちゃんである。

 そうだ、楽しめればいいのだ。


「ユキちゃんが謝る必要なんてないよ」


 俺はよんちゃんに続いて言った。

 他の面々も、俺たちに同意する。


「そうですか......」


 俺たちの言葉を受け、ユキちゃんは静かに微笑んだ。

 小夏は、変な雰囲気になって面倒臭そうだ。

 そっぽを向いてむくれている。


「よし」


 そんな中よんちゃんは一人、川の方へと走っていった。

 そして入水。

 また魚でも捕るのだろうか。


「えいっ!」


 俺がそう思っていると、よんちゃんは両手いっぱいに掬い上げた水をこっちへと浴びせてきた。


 飛んでくる水を能力で止めようかと思ったが、そのまま飛んでくる水を浴びることにした。


 俺たちに水を浴びせた明香は、「アハハ」と笑っている。

 明るい笑顔だ。


「やったなー!」


 そう言って駆け出したのは三葉さん。

 それに宙も続く。

 少しして、哉とユキちゃんも続く。


 小夏は一人で歩き出した。


「行くか」


 小夏に続いて、俺と穂香も歩き出した。



 ---



 川の中では、誰が一番泳ぐのが速いかとか、誰が一番潜っていられるかなど、多くの企画を執り行った。

 どれもよんちゃんプレゼンツだ。

 まぁ、企画と言ってもふと提案したものに同意して始まるって感じだが。


 その企画の殆どに、俺は参加できていない。

 能力が『統水』であるため、不正があるかもしれないからである。

 小夏の提案だ。


 俺は基本的に、審判であった。

 しかし、特に不満はない。

 なんたって女の子だらけの水遊びを、見られるのだ。

 目の保養になる。

 一人、余計なゴツイのが混ざっているが見なければいいだけだ。


 残念ですが、あの男は目の保養には適さないのです。

 悪いな、哉。


 そんな俺でも、参加できたものもある。

 ひとつは水の掛け合い。


 例の戯れの延長で始まった、水をかけられたらアウトというゲーム。

 これは戯れの延長ということで自然と参加出来た。


 浅瀬でのかけあいと違い、結構楽しかった。

 いやまぁ浅瀬のも楽しかったが、長くは続かなかったのだ。

 それがなんだろう。

 水深が深くなっただけなのに、何故か変に楽しいのだ。

 不思議なもんだ。


 俺はそのゲームをしている最中、能力は使わなかった。

 能力を使ってしまったらフェアじゃない。

 水をかけあうゲームで、俺だけ水を操れるなんてチートもいいところだ。


 だがまぁ、それでも勝ったのは俺だがな。

 俺は序列2位で哉が1位だとはいえ、能力を使わない純粋なバトルなら俺が若干勝るらしい。

 まぁ、水の中で能力を使わずに戦うことなんてないだろうから、純粋に強いのは哉と言えよう。


 しかし、勝ちは勝ち。

 今回ばかりは俺の方が強かったみたいだな。

 フーハッハッハ

 まぁ、ここで喜んだところで特には何もないんだが。


 と、そんな感じで結構な間川の中で遊んだ。

 水以外でも、宙が持ってきた浮き輪を投げたりして遊んだ。

 水上バレーみたいな感じだ。


 世間では、こういう水着イベントの時にはビーチバレーなんてものをやるのかもしれないが、残念ながらここは川。

 海のようなビーチはないのだ。

 てなわけで水上バレーである。


 水の中にいるせいで本当に動きにくい。

 能力を使えは話は別なんだろうが、使わない。

 理由はさっき言った通りだ。


 とはいえ結構楽しいものだ。

 体を動かすってのは、結構いいものだ。


 宙の一つに束ねた髪やよんちゃんのポニテ、ユキちゃんのショートヘアが揺れる。

 浮き輪を追ったり打ったりする度に、髪が左右に揺れる。


 よんちゃんに至っては、ポニテ以外にも2つのボールが揺れている。

 揺れているというか跳ねている。

 それはもう『ボインボイン』と。

 服の上からでも分かるほど元気に暴れている。


 め、目が。

 吸い寄せられてしまう。

 これはやばい。

 攻撃力が高い。刺激が強い。


 しかしなんだろう。

 物凄いダメージを負っているはずなのに、攻撃を受ける度にMPが回復している気がする。

 あの攻撃力を見た時は、よんちゃんはアタッカーだと思ったのだが、もしかするとヒーラーなのかもしれない。

 なんてね。


 しかし、そのヒーリングは気安く受け取れない。

 できるだけ......いや、全力で見ないようにしなければならない。

 見たいという欲に全力で抗うのだ。


 もしガン見でもしてしまおうものなら、嫌われてしまう。

 あの明るく接してくれるよんちゃんに嫌われるなんて嫌だ。


 踊る2つのボールを見れば、幸せになれるかもしれない。

 だがその幸せは一瞬のもの。

 一瞬の幸せと、平凡な毎日。

 俺は後者を取るね。


 ちなみに、哉はしっかり見ていて、三葉さんにどつかれていた。


 ちなみに、小夏と穂香の髪は揺れていない。

 細かくいえば前髪とか横髪とかが揺れているが、そこについては男子である俺達も揺れているのでノーカンだ。


 さて、どうしてロングである2人の髪が揺れていないのか。

 それはまとめているからである。

 小夏はお団子に、穂香は昔の綺麗な人みたいに簪で、それぞれ長い髪をまとめあげている。


 というか、小夏のあの長い髪が1つのお団子で収まっていることが納得できない。

 質量保存の法則はどうなったんだ。



 と、そんな感じの疑問を抱きつつ、川遊びを楽しんだ。

 遊んだ後には何をするか。

 バーベキューに決まっているだろう。

 楽しんでいたらもう夕方なんだ。

 お腹が減ってきた。


 ちなみに、着替えるのが面倒なのと煙の臭いが着くのが嫌だという理由から、水着のままである。

 夕方とはいえ今は夏。

 上着を1枚羽織るだけで事足りる。


 魚にしろ肉にしろ野菜にしろ、焼くのは相変わらず俺宙三葉さんの3人だ。

 他の奴らは焼けたものを勝手に取って食べるだけ。

 まぁ、絶賛してもらえるので悪い気はしない。


「それにしてもあなたたち、全然似てないわね」


 ワイワイと食事をしている食事中に、肉を焼いている宙を見ながら小夏が言った。


 お前に言われたくねぇよ。

 お前とユキちゃんだって全然似てねぇぞ。

 性格なんて真反対だ。

 何をさせてもあべこべの2人が、一緒にいられる意味がわからん。


 まぁ、ちっちゃいってとこ似てるけど。


「義妹だからな」


 当然、ちっちゃいなんて言うガチギレされるので言わない。

 代わりに似ていない理由をと。


「でも、血は繋がってるんでしょ」


 花火大会の日、俺達兄妹の関係の説明は宙に任せたが、結構詳しく説明したんだな。


「そうだが、親戚ってんならこんなもんだろ」

「確かにそうね」

「お前らの方こそ似てないと思うぞ」


 小さいところ以外は。


「......父親が違うのよ」

「そうだったのか......」


 長い間の謎が解けた。

 遠坂姉妹が似ていないのはそのせいだったのか。


 だがそうだな、父親が違うってんなら、姉である小夏の現在の父親は本当の父親では無いわけか。

 家にいて、居づらいと感じることとかはないんだろうか。


 そのへんが少し心配になるが、あまり深く突っ込まない方がいいだろう。


「まぁ、2人目の父親は死んだけどね」

「そうなのか......」


 おいおい、突然とんでもないことを言い出すな。

 俺はその言葉になんて返すのが正解なんだ。


「それは残念だったな......」


 今の俺には、とりあえずこんな事しか言えない。


「別に構わないわ

 あんなダメ人間、死んだってなんの問題も......

 いえ、何でもないわ。忘れてちょうだい」

「......分かった」


 忘れられるわけない。


 血は繋がっていなくても、一応は父親だった人を思い出して作るような表情ではなかった。

 とても単純なんかでは無い、とてつもない憎悪がさっきの小夏からは感じ取れた。


 その憎悪は普通に嫌っているものに向けるものでは無い。

 この世で最もクズな奴に向けるような顔。

 殺気にも近い、そんな憎悪だった。


「変な話になったわね

 せっかくのバーベキューなんだから、楽しみましょう」


 そう言った小夏は既にいつも通りで、俺だけ取り残されているように感じた。


「あぁ......」

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