表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第八章 『夏休み』
82/158

第八十話 『花火大会』

 テストが終わり、闘校祭も終わり、他国の最強と一戦交えて、気付けはもう6月だ。

 しかも後半。


 この世界でも、6月には日曜日以外の祝日がない。

 日本の祝日が廃止され、この世界独自の祝日が多く決められたのにも関わらず、だ。


 6月は嫌われているんだろうか。

 可哀想に。


 夏と言えば夏祭り。

 この世界でも、花火は上がるそうだ。

 むしろ、前世よりもすごい花火が上がると評判だ。


 なんでも、花火に打って付けの能力者が集まって花火をあげるそうだ。

 中には『花火』なんて能力者だっているそうだ。

 花火を操れるんだと。

 なんともピンポイントな能力だこと。



 で、そんな花火の開催日が今日である。


 最近、学校でよく「花火」という単語を聞くのは、そういうことだったらしい。

 納得だ。


 ちなみに、今頃花火大会の存在を知った俺には、当然のようにお誘いはない。

 花火大会ってのは、人でごった返しているイメージがあるのでそんなに得意では無さそうだし、全く気にしていない。


 それに、宙と見るのもいいだろう。

 可愛い妹と見る花火ってのも、また違った良さがあるってもんよ。

 別に、友達がいなかったからこういうスキルを身につけたんじゃないからな。


 まぁ、哉とかそのへんが「今日の花火大会一緒に行こうぜ!」とか行ってくるんだろうさ。


「今日の花火、皆で見ない?」


 まさか、尋ねてくるのがお前だとは思わなかったよ。

 小夏。


 声の方向へと振り向くと、そこには哉の程よく筋肉の付いた体とは正反対のロリもとい、ちっちゃいのがいた。


 おや?小夏の様子が少しおかしい。

 ご立腹のようだ。

 心の中で「ちっちゃいの」と呼んだのがバレたのだろうか。


 さっきはポーカーフェイスを意識してなかったし、彼女のおメガネを持ってすれば心中を察することなんざどうってことないのだろうか。


 能力を持たずしてそれができるなんて、なんということだ。

 しかも、正答率ほぼ100%ときた。

 どこかのメンタリストじゃあるまいし、人の心を読み散らかすのはやめて欲しい。

 『読心』の能力を持つ菜月ですら読み散らかすことなんてしないというのに。

 なんなんだよ、こいつは......


「どうするの?」


 小夏への返答をせずに黙っていると、苛立たしげにそう言った。

 答えてくれないことに対して怒っいてるのか、「ちっちゃいの」呼ばわりされたことに怒っいてるのか。

 もしかすると、両方かもな。


「皆で見るか」


 俺も、花火大会自体は得意じゃなさそうとは言っても、花火は嫌いじゃない。

 引きこもり部屋の窓から見る花火は綺麗だった。


「ただ、俺は人混みが苦手だから誰かの家から見よう」

「同意見ね

 屋台も出るけど、あんなの疲れるだけだわ」


 俺と小夏の意見に、小夏の後ろにいるユキちゃんは少し不満そうだ。

 屋台に行きたかったのだろうか。

 でもごめんな、ユキちゃん。

 これだけは譲れないんだ。


「じゃぁ

 あなたの家でいいかしら?」


 何が「じゃぁ」なんだ。

 集合場所が俺の家になる流れが、今の会話に少しでもあっただろうか。

 いやまぁいいんだけどね。


 俺の家は、わかりやすいかつ眺めがいい。

 花火を見るための集合場所としては最適解であろう。


「いいよ」


 そうは言ったが、少し不満そうな声が出た。

 「仕方がない」みたいな感じだ。


 てなわけで、俺は花火を見ることになった。

 まぁ、花火自体は最初から見るつもりだったが。



 で、その話をしたのが放課後のことだ。

 というわけで、花火の話をした俺含め3人は、その後部室へと向かった。


 どうせ部活に行くんなら、そこで皆と話せば良かったんじゃないか?

 まぁあれだ。

 細かいことは気にしてもしょうがない。


 ちっちゃいことは気にするな、それワカチ〇ワカチ〇

 ワカチ〇ってなんだ?

 まぁいいか。


「よっ!」


 部室の扉を開けた途端、右手を挙げた哉に迎えられた。

 その奥には穂香もいる。


 ちょうどいい。

 全員いるなら今話そう。


「今日、俺ん家で花火見るけど来るか?」

「行きます!」


 即答したのは穂香だ。

 座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、机に身を乗り出して食いついた。


「翔琉先輩の家、行きたいです!!」


 どうやら、花火にはそれほど興味が無いようだ。

 花火より俺の家ってか?

 花よ〇男子だな。


「俺も行きたいんだが......」


 哉の歯切れが悪い。

 どうしたのだろうか。

 お腹でも痛いのか?


「彼女も連れてっていいか?」


 申し訳なさそうに言った。


 何それ、彼女自慢?

 いやいや、いいともいいとも。

 俺だって、彼女が欲しいわけじゃないし、自慢なんてされてもどうとも思わないね。

 欲しいわけじゃないし!

 欲しいとも思えないしっ!!


「......いいぞ」


 俺は渋々といった感じで、彼女の同行を許可した。

 てか、許可したは良いんだが、彼女と花火を見るんなら二人きりの方がいいんじゃないか?

 彼女がいたことのない俺だが、それくらいはなんとなく分かる気でいる。


「二人で見てもいいんだぞ?」


 俺はそう思い、哉に問いかけてみた。

 その問いかけを聞いた哉は少しだけ考えるそぶりを見せ言った。


「皆でワイワイ見たいんだよ」


 哉は爽やかな笑顔を見せた。

 この様子だと、彼女の方も同意しているのかもしれない。


「あいつも、お前らに会いたいって言ってたしな」


 哉の言うあいつってのは、彼女さんの事だろう。

 まぁ、二人ともがみんなでワイワイしたいと考えているのならそれでいいや。


 それにしても、嬉しいこと言ってくれる彼女さんじゃないか。

 俺達にも合ってみたいとな。

 いやぁ、哉の友達ってことで期待されてるんだろうか。

 それなら頑張っていい友達をしようではないか。


 いつだったか、俺の目の前でイチャイチャしだしたら速撃迅斬をくれてやるとか思ってたが、勘弁してやろう。

 そもそも、初対面の人の彼女に玄名流奥義をお見舞いするものではない。

 たとえお見舞いするとしても、哉にだけで十分だ。

 てなわけで哉、背後に気を付けるんだ。

 イチャイチャしたいなら、俺の目を盗んですることだな。

 もし俺がそれを見つけた時には、お前はどうなるか分からないぞ。


「それじゃぁ今日の7時、こいつの家集合ね」


 小夏は話を締めくくるようにして、俺を指さしながらそう言った。

 それにしても、哉の彼女も来るのか。

 部員だけの集まりではないという事。

 なら、俺としてはもう一人誘いたい人がいるのだが。


「なぁ......」


 小夏が締めくくった話を、再度続けようとする俺の言葉に、部員全員の視線が集まった。

 なんか、こうも注目されると、特に大したことではなくても緊張してしまう。


「バイト仲間を一人誘いたいんだがいいか?」


 勝手に誘ってもいいのだが、知らない奴が急に増えたらびっくりするだろう。

 てなわけで、一応許可を取ってみる。

 まぁ、ダメと言われても誘う気ではいるので許可についてはどうでもいい。


「バイト仲間って、あの女の人ですか?」


 いつもより少し低い声でそう尋ねたのは穂香だった。


 俺が誘いたいと思っているのはよんちゃんだ。

 そういえば、穂香とよんちゃんは前に1度会ったことがある。

 お互い、そんなにいい雰囲気ではなかったが、喧嘩という感じでもなかったし問題ないだろう。

 それに、なにかあれば俺が何とかする。


「そうだ」


 俺は穂香の質問に短く答えた。


「......そうですか」


 あの、穂香さん?

 不機嫌でいらっしゃいますか?

 どうされたんでしょう。

 分かんねぇや。


 さてさて。

 ここで少し疑問に思った人もいるんじゃないだろうか。

 俺もよんちゃんもバイトはどうした、と。


 それについては問題ない。

 今日は、2人ともバイトは休みだ。

 というか、店が休みだ。


 なんでも、祭りの日は客足が減るらしい。

 花火会場の近くでは当然客足が増えるのだが、生憎俺たちのバイト先は会場から距離がある。

 残念ながら、客が吸い取られてしまうのだ。


 客が来ない店を開け続けるよりは、閉めてしまった方がいいのだと。

 そうした方が、電気代とか食材費とか人件費とか、その他諸々が浮くのだそうだ。


 で、その場合俺とよんちゃんが出会う場所がないと思うかもしれないが、実のところそうではない。

 俺はほぼ毎日よんちゃんを送っているので、彼女の家は熟知している。

 ......なんだろうか。

 女の子の家を熟知してるって、なんか気持ち悪いな。

 ストーカーみたいだ。


 しかし安心してくれ。

 俺はストーカーなんてしていない。

 したこともない。

 正式に付いて行っているのだ。

 オフィシャル同行者だ。


 てなわけで、俺は部活が終わってから鷲宮宅に向かうとしよう。



 ---



 現在、会場である俺の家のお掃除中だ。

 宙も掃除してくれている。

 巻き込んでしまったようで申し訳ない。

 でも、宙も楽しそうにしていて少しだけ救われている。


 あれから部活が終わってすぐ、俺は鷲宮宅にお邪魔した。

 言うまでもなく、お誘いのためだ。

 よんちゃんの着かえをのぞき見してドュフドュフするためではない。

 そもそも、俺はそんなことしたことない。


 で、結果はOK

 即答だった。

 知らない人も多いと説明したのだが、それでもいいとの事だった。

 俺からのお誘いを楽しみにしているようで、俺としても嬉しいものだ。


 で、よんちゃんは準備があるからと俺一人だけで帰って来た。

 その準備ってのは、よんちゃんだけに限らず女の子全員にとって必要不可欠なものだそうだ。

 俺も今こうして家の掃除をしているし、そんな感じなんだろうな。


 その家掃除、宙が監督として仕切っているおかげで、とてもスムーズに進んでいる。

 とても二人作業とは思えない手際だ。

 流石宙。かわいいぜ。


 あらゆる場所の掃除がすぐに終わってしまうので、掃除する場所を探しているくらいだ。

 そもそも、最初から宙のおかげできれいに整っているこの家。

 俺としては掃除する必要も無いように思える。

 まぁ、宙が掃除するってんだから俺もするしかないだろう。


『カンカン』


 と、おそらくすべての場所を掃除しつくし、次はどこを掃除しようかを思っていると、ドアノッカーが音を放った。

 誰かが来たのだ。

 まだ時間よりは少し早いが、集合としては数分前ってのは普通だろう。

 俺は家のカギを開けるため、玄関へと向かう。


「いらっしゃい」


 扉の向こうにいたのは遠坂姉妹だった。

 二人仲良く並んで立っている。


「最低......」


 来て早々、軽蔑の眼差しを向けてきたのは姉の方だ。

 小夏は俺を見るなり、いきなりそんなことを言ってきたのだ。

 心当たりがない。

 こいつは何を言っているんだ。

 まぁ、小夏のこういった暴言は今に始まったことじゃないし、適当に流しておこう。


「そうか......ん?」


 小夏の隣にいるユキちゃんを見てみると、なぜか絶望したような顔で何かを見ていた。

 何かを見ているというよりは、何にも焦点が合っていないと言った感じだ。

 大丈夫か?

 ユキちゃんの様子を見ていると、少し不安になってくる。


 ん?

 よく見れば、小夏も俺を見ていない。

 俺の後ろに焦点が合っている。


 俺は小夏の視線につられて後ろを向く。

 するとそこには宙がいた。

 さっきまで奥で掃除をしていたと思ったんだが、いつの間に玄関まで来たのだろう。


 抑えようとしていない気配には、特に意識していなくても気づくことができるのだが、どうして気づかなかったのだろう。

 宙が意図的に気配を消していたのか?

 どうして?


「かけ君、その女誰?」


 そう言ったのは宙だ。


 何言ってんだこいつ。

 いつも俺のことは『おにぃ』と呼ぶのに、どうして急に『かけ君』なんて呼ぶんだ。

 いつもみたいに、「おにぃ」って呼んでくれよ。

 俺、その呼ばれ方結構好きなんだぜ。


「同級生と後輩だ

 前にも話しただろ?」


 確かいつだったか、部員については話したことがあったと思う。


「その子、よく見たら神園ちゃんじゃない

 あなた、中学生にまで手を出したの?」


 手なんて出すわけないだろ。

 自慢の妹だぞ。

 小夏のやつ、何言ってんだ?

 お前はユキちゃんに手を出すのか。

 出さないだろ?


「先輩、かっこいいですもんね

 かわいい彼女さんがいてもおかしくないですよね......」


 彼女な訳ないだろ。

 妹だぞ。


「お前ら、何か勘違いしてないか?」


 この姉妹、何を言っているのかと思ったが、どうやら勘違いをしているようだ。


 まぁ、無理もないだろう。

 俺と宙は兄妹とはいえ、苗字が違うのだ。

 それに加えて宙の態度がこれ。


 まさか宙......

 こうなることを予測して、楽しんでやがるな?

 見るとさっきまでの不安そうな顔を止めてニヤニヤと笑っている。

 楽しそうだ。


 宙が楽しい時は、お兄ちゃんも楽しいよ。

 こんな状況じゃなければな。


「うるさい

 変態は黙ってなさい」

「ちょっと待て、これには......」

「黙りなさいと言っているのよ?

 うちの妹に手を出しておきながら、中学生にまで手を出すなんて

 変態

 優柔不断

 死になさい」


 とんでもない言われようだ。

 でも、ここ俺が何と言おうと聞いてもらえないし、俺はどうしたらいいんだろうか。


「お姉ちゃん、言い過ぎだよ」


 そうだよお姉ちゃん。

 ユキちゃんの言う通り、言い過ぎですわよ。

 わたくしの言い分も聞いてくださいまし。


「誰を選ぶかは先輩の自由だよ

 例えそれが中学生でも、私たちが文句を言ってはダメなんだよ」


 ユキちゃん。

 そうなんだけどそうじゃないんだよ。

 俺と宙は付き合ってないんだよ。


「こいつは俺の妹だ」


 とりあえず、弁解だ。

 誤解を解かなければ。

 そう思って真実を述べた。

 のだが......


「その子があなたの妹?

 顔面偏差値が違い過ぎるんじゃない?」

「......」


 そこには触れないでいただきたい。

 悲しくなるじゃないか。


「まぁ、入れよ......」


 悲しい気持ちになった。

 この話を早く終わらせるべく、二人を家に入れた。


「宙、お前が訂正しておいてくれ」


 だいたい、宙が変な演技をしたせいでこうなったのだ。

 後始末くらいはしてくれ。


「分かったよおにぃ

 任せといて」


 宙はニヤニヤしながらそう返事をした。

 不安だ。

 俺も付いて行った方がいいかもしれない。



 ---



 それから少しして、穂香、よんちゃん、哉らの順で全員が集まった。


 ユキちゃん、穂香、よんちゃんの3人は終始何かしら言い合っていたが、喧嘩っぽい雰囲気はなく、何かで争っている感じだった。

 何で争っていたのかは分からない。


 宙が作ってくれた夕食を皆で食べつつ花火を見た。

 丘上崖から見る花火はいいものだった。


 美味い飯といい眺め。

 そしてみんなとワイワイ。

 とてもいい花火大会だった。


「楽しいか?」

「おにぃの友達、面白い人多いね」


 哉意外と面識が無いはずの宙も、少し前までみんなと混ざってワイワイと楽しんでいた。

 雑談をしつつボードゲームなんかもして、とても楽しかったそうだ。

 俺も楽しかった。


「翔琉君」


 宙と話している最中、俺の名前を呼んだのは三葉(みば)加奈子(かなこ)さん。

 哉の彼女だ。

 とても綺麗で礼儀正しく、お姉さんキャラって感じの人である。

 お姉さんキャラと言っても、俺たちの1つ上らしい。


 今日の花火では知らない人ばかりだった三葉さんだが、楽しそうにしていた。

 楽しんでもらえたなら何より。

 それで、なんの用だろうか。


「これからも、カヅ君のことどうかお願いします」


 この人は哉のお母さんだろうか。

 それだけ、あいつの事を大切に思ってるってことだろう。

 幸せ者め。


「もちろんですよ」


 断る理由なんて微塵もない。

 俺は笑顔で即答した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ