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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第七章 『最強』
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第七十八話 『ダンジョン』

 ―――哉伽月視点―――



 カケが西の最強と戦ったと言う噂が広まって一週間。

 北方神国の強さは第3位になって、それなりに時間が経った。


 カケが西の最強に勝ったことが原因で、カケの評判も少しづつ回復していっている。


 でも、全員ではない。

 やはり前みたいに、序列2位が......なんて思っている人もいる。


 ちなみに、その序列1位ってのが俺だ。

 だが、悪いとは思っていない。

 ただ、俺は序列1位ではあるが、カケの方が強いと思う。


 あの日の戦いで、俺は殺す気でカケと戦った。

 しかし、カケはそうではなかった。


 あいつは、俺を殺す気なんて全くなかったし、戦いに集中できていないみたいだった。

 さらに、これは後から知ったことだが、闘技場のように何も無い場所で戦うのを、カケは少し苦手としているらしい。


 俺はそんな相手に勝って、序列1位。

 勝ったことには変わりないと言っても、やはり喧嘩とかになればカケの方が強いだろう。


 俺よりカケの方が強い気がするのには、もうひとつ理由があるがそれはまぁいいだろう。

 どうせ勘違いなのだ。


「あなた、明香に随分懐かれているようね

 そしてあなたも懐いてる

 デレデレしちゃって気持ち悪い......」

「別に、デレデレなんてしてねぇよ」

「嘘ね

 どうせ、触れたい揉みたいしゃぶりたいとか思ってるんでしょ

 変態......」

「そういう発想が出てくるお前も大概だよな......」

「それ、どういう意味?」

「そのままの意味だ」


 そんな言い合いをしているのは、いつも通りカケとこなっちゃんだ。

 どういう流れでこうなったのかはよく分からないが、どうせカケかこなっちゃんが余計なことを言ったのだろう。

 よくある事だ。


 喧嘩するほど仲がいいって言うし、喧嘩しかしていないこいつらは相当仲がいいのかもしれない。


「俺は師匠が変態極めててもついて行くっすよ!」


 と、みかっさん(三上)


「私は、変態な翔琉先輩もいいと思います

 大歓迎です!」


 と、ほののん(穂香)


 カケはなんだか、諦めたような顔をしている。

 ここで訂正したところで無意味だということを、身に染みて理解しているのだろう。


 で、どうしてこのメンバーで歩いているのかと言うと、闘技場へと向かう途中だからである。

 今日は訓練の日らしいのだ。


 最初は毎日するつもりだったらしいが、数日後からは3日おきとかになっている。

 何でも、毎日やってると物凄く疲れてくるっぽい。

 まぁ、俺としても暇な日が減るので3日おきの方がいいんだよなぁ



 で、少し歩いていると、闘技場に着いてた。

 てなわけで、俺とこなっちゃんは観客席へ、残りは舞台へと向かった。


 遠くで剣やら槍やらを振りつつ、たまに模擬戦を行っているのを遠目から見ている。


「ユキが話してたけど、あいつ意外と教えるの上手いらしいわね

 あんなのが教え上手とはね、笑えるわ」

「いや、別に笑えはしないだろ......」


 こなっちゃんの毒舌は、主にカケにだけ向けられる。

 それに、心から嫌っているような口調でもないのだ。

 なんとも奇妙な関係だ。


「前にも聞いたけど、なんでお前はカケにそこまで強く当たるんだ?」


 この質問は、今までに何度もしたことがある。

 そのたびに小夏は、答えはしない。

 理由はあるが言いたくないとのこと。


 今回こうして聞いたのも、どうせ「言いたくない」とか言って流されるのだろう。


「あなたになら、言ってもいいかもね......」


 だが、思っていた返答とは違った。

 俺になら言ってもいい。

 どうしてか、俺はこなっちゃんに信用されているようだ。

 特に何かしたわけではないんだがね。

 いや、特に何もしていないからこうなのだろうか。


「......」


 俺は無言になった。


「簡単に言えば、腹が立つのよ」


 こなっちゃんは、遠くで槍を振るカケを見てそう言った。

 カケを見ているのだが、カケとは違う何かを見ているような目をしている。

 何を見てるんだろう。


 それにしても、腹が立つ、か......


「ユキって、癪だけど翔琉の事好きじゃない?」

「まぁ、多分そうだな」


 そうだ。

 少しだけ分かりにくいが、おそらくユキちゃんはカケのことが好きだ。


 カケが率先してユキちゃんを助けているから、そうなるのも頷ける。

 助けられて好きになると言うのは、よくあることだと思う。


「ユキに好かれるなんて幸せを浴びているのに、それにまったく気づいていないのが腹立たしいのよ」

「あー、それでか......」


 そう言えば、こいつも妹好きだったな。

 こいつら、口喧嘩ばかりなのにどうしてかよく似ているんだ。

 妹好きの所とか、特に似ている。


 どうしてここまでぶつかり合うのかと不思議に思っていたけど、そういうことだったのか。

 妹好きであるからこそのぶつかり合いだったんだな。


「最後に、翔琉がユキを選ばないのは百歩譲ればしょうがないと思う」


 答えを知れたので、俺としてはこれ以上聞かなくてもいいのだが、こなっちゃんは言葉を続けた。

 それにしても、百歩譲らないとダメなんだな。


「最後にフラれると言うもの経験としては良いと思う

 まぁ、ユキの願いが叶ってほしいのが本心だけど」

「そうだろうな」

「でも、思いに気づかないのは論外

 腹立たしい」


 腹立たしいとは言うが、あれに気づかないのは無理ないんじゃないか。

 まぁいいか。

 どうせ、今のこなっちゃんに何を言ったところで考えは変わらないだろう。


 だからって、俺がカケにユキちゃんの思いを伝えるのも違う。

 これはカケ本人が気づかないといけないことなのだ。

 頑張れよ、カケ。


 俺は、遠くで槍を振るカケを見ながらそう思うのだった。



 ―――佐々木翔琉視点―――



 ユキちゃんらと訓練を初めて2週間以上経った。

 最近では、休みも設けて頑張っている。

 休みの方が多いのはあまり触れないで頂きたい。


 この練習期間で、1番成長したと言えるのは穂香だ。

 その次にユキちゃん。

 この2人の槍術は、見違えるほど成長した。


 俺は、たまに「ここをこうした方が攻撃を当てやすいんじゃ?」みたいな感じでアドバイスするだけで、槍の扱い方に関しては、むしろ教えられている。

 2人とも、槍を持った途端人が変わったように強くなる。

 体術の方も順調だ。

 メキメキと成長している。


 一方、三上の方はと言うと。

 なんと言うか、お変わりないようで......


 剣術も体術も力任せで、何においても動きが多い。

 彼の能力が無ければ、すぐに負けてしまうだろう。


 動きの速さはあっても、無駄な動きが多いせいで総合的には普通なのだ。

 マイナスがゼロになった感じである。


 とは言っても、彼とて序列7位。

 以前よりも序列は下がったとはいえ、十強の1人なのだ。

 成長していないとは言え、それなりに強い。


 なんとも無慈悲なことに、着々と成長している雪音と穂香よりも強い。


 戦闘能力ってのは、ある程度までは生まれ持ったものだけで行けてしまうのだ。

 おそらく、その最大ラインが今の三上だ。

 まぁ、そのラインってのも人によって違うんだろうが。


 でだ。

 俺を含めて4人。

 訓練のしめは模擬戦だ。


 俺以外の3人は自由に、俺は槍と体術のみ。

 これをハンデとか言うつもりは無い。

 ただ単に、俺が槍術を上達させたいだけ。


 こうすれば、意外と力差はちょうどよくなる。

 結果的にはハンデとなっているが、彼女らを舐めている訳ではない。


 俺は三上とユキちゃんに勝ち、穂香に負ける。

 三上は穂香とユキちゃんに勝ち、俺に負ける。

 穂香は俺と三上に勝ち、ユキちゃんに負ける。

 ユキちゃんは穂香に勝ち、俺と三上に負ける。

 最終的に、順位が決まらない勝敗が決まるのだ。


 それで不思議なのが、ここで決まった勝敗で、序列が変動しないことである。

 こうして順位が決まらない戦いだったとは言え、序列は決まるはずだ。


 負ければその瞬間に降格し、勝ては昇格する。

 それが序列というものだ。

 なぜこうなるのだろうか。


 正式な戦闘ではないから?

 俺が槍と体術だけという、いわば縛りのような状況で戦っているから?


 良く分からんな。

 序列を決める魔法陣が、どのような仕組みなのかを知らないことには、この謎は解けないのだろう。

 まぁ、特別解きたい訳でもないがな。



 ---



 翌日、授業中。

 俺はしっかりと起きていた。


 俺が授業中いつも寝ている奴みたいになっているが、知らないことや興味のあることを話しているときはしっかりと起きている。

 俺が寝るのは、理解している内容の時と眠たい時だけ。

 だから、授業に遅れることは無いのだ。


 で、今俺が起きているのはどうしてか。

 授業内容に興味があるからだ。


 今の授業は地理。

 その中で、ダンジョンとやらいうものについて話している。


 ダンジョンってのは聞いたことある。

 聞いたことあるどころか、生前はそれを聞いてワクワクしていたものだ。


 ダンジョン。

 それは、ゲームだとか異世界ファンタジーだとか、そんな話に出てくるものだった。

 それがどうやら、この世界にもあるらしい。


 しかし、俺が知っている物とは少し違った。

 俺の認識では、ダンジョンってのは森の中とかにあって、何十年もかけて攻略していくものだ。


 それに対し、この世界のダンジョンは入口だけが地上にあり、それ以外は地下に埋まっている。

 さらに、攻略時間は長くても半年なんだと云う。


 別に、物凄く浅いとか、モンスターがすこぶる弱いとか、そんなんじゃない。

 そもそも、それくらいの期間しかダンジョンが現れないのだ。


 この世界のダンジョンは、時所構わず、一週間から半年の間とランダムな期間で出現するらしい。

 つい最近まで何もなかったところにいきなりダンジョンが出現したり、ダンジョンがあった場所がいきなり何も無くなったりするらしい。


 で、このダンジョン。

 怖いのが出現と消滅の際、その場所にいた人も一緒に消滅してしまうのだ。

 しかしそれでも、ダンジョンに潜る奴は大勢いる。


 なぜか。

 それは、ダンジョンの奥に眠る魔道具があるからだ。

 ダンジョンの最終層には、天然の魔道具がある。

 天然の魔道具には魔法陣が埋め込まれておらず、人工魔道具よりも優れた性能を持つものがあるそうだ。

 天然魔道具は、高値で売れるらしい。


 自分で使うにしろ、売って金にするにしろ、天然魔道具の需要は物凄いものだ。

 何に使うのは分からないような、需要の無い魔道具さえ、天然であれば売れてしまうのだと。

 そんな天然魔道具を求めて、そ奴らはダンジョンに潜る訳だな。


 で、そいつらはいつ消えるか分からないダンジョンで、自分が消される恐怖に振るえながら潜る訳でもない。

 ダンジョンが消える前兆として、少しづつ能力が使いにくくなるそうだ。

 そういった感覚的なものを頼りにしつつ、ダンジョンを攻略するらしい。


 恐ろしいね。


「ちなみに、ダンジョンに入ることで生計を立てている者を、『冒険者』という」


 と、顎髭を蓄えた中年地理教師は言った。


 これもダンジョンと同様、俺のイメージとは違う。

 俺のイメージは、世界中を旅しつつ、モンスターと戦う奴らが冒険者だ。


 まぁ、基本的にモンスターが出てこないこの世界では、そういった冒険者はいないだろう。

 この円状の世界も知られ尽くしているしな。

 それに、冒険って意味では間違っていない。


 だが、俺の冒険者というイメージが広範囲を行くせいか、ダンジョン攻略の冒険者ってのが随分小規模に感じる。


「冒険者の収入は天然魔道具だけではない

 ダンジョンの情報も金になる」


 随分とアレな話になってきた。

 金の話とか、学生にするものなのだろうか。


「先生も若い頃はよくダンジョンに入り浸っていたものだ」


 地理教師は過去を懐かしむように、どこか遠くを見ながらそう言った。


 聞いてねぇよ。

 俺は、お前の若かりし時代の話には興味ない。

 余談を挟まず、ダンジョンの話をして欲しいものだ。


 余談が面白いのなら、どんどん話してもらって構わないのだが、過去の話とかどうでもいい。


「そんな先生から忠告だ」


 忠告か。

 経験者からの忠告というのだから、聞いておいた方が良いだろう。


 てか、この中年にとっての『昔』っていつくらいの話なんだろうか。

 十何年前とかかな。

 最近のダンジョンと、変わらなければいいのだが。


「ダンジョンに入るのなら、序列入りか、それと同等の力を持っている奴と入ることをオススメする」


 まぁ、モンスターも出るんだし、力が無ければやられるだろうな。


「0とは言わんが、力のない人達だけでダンジョンに入った場合の生存率は極めて低いからな」


 最低序列入りかそれと同等の力を持つ奴と、か......

 ダンジョン攻略も、簡単ではないな。


 投稿祭で、俺が序列下位を瞬殺したせいで序列上位以外はそんなに強くないと思うかもしれないが、実際のところそうでは無い。

 十強が特別強いだけで、彼らも十分強いのだ。

 上には上がいるってやつだ。


「だがまぁ、誰かとパーティーを組んで攻略に行くのもいい経験だと思うぞ」


 と、教師が話を締めくくった。


 それからの教師の話は、過去の有名なダンジョンがどうだったとか、そんな感じの内容だった。

 その話によると、過去にはモンスターがいない迷路みたいなのもあったのだとか。

 俺としては、迷路よりもモンスター退治の方が楽そうでいい。


 ダンジョンの中には、良く分からないモンスターから人間と、あらゆる種類の骨が落ちているんだと。

 恐ろしいな。

 だが、ダンジョンらしくて少しワクワクしてしまう。


 もしかしたら今後、ダンジョンに赴く機会があるかもしれない。

 面白そうだし。

 まぁ、部活やらバイトやらと忙しいせいで、そう簡単には行けないだろうが。



 それで授業後、席に座ったままでいる俺に、いつも通り哉が話しかけてきた。


「ダンジョン、今度行ってみようぜ!」


 もうワクワクが止まらないって感じだ。

 俺はそれに、


「いつかな」


 と、曖昧な肯定をした。


 1つ、思い出したことがある。

 哉に言わなければならないこと。


「なぁ、日曜日って空いてるか?」

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