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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第六章 『闘校祭』
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第六十四話 『決勝戦・前編』

 あの2人は、この学校でも有名な友人同士だ。

 いつも一緒にいる。


 あの2人にはもう1人友達がいる。

 我が校随一のイケメン優男である。


 しかし、そのイケメンはこの大会に出ていない。

 新聞部として、自分の仕事を全うしている。


 イケメンを除く2人の決勝が始る。

 どちらも、かなり強い。

 2人につけられた期待のルーキーなんて言葉も、そろそろ似合わなくなるだろう。


『試合開始です!!』


 そのアナウンスの直後、佐々木は体制を低くした。

 それは意識を失ったように、完全に脱力してフワッと。

 その後、足に一瞬だけ力が入ったと思えば人間技とは思えない速度で走り出す。

 そして、手を丸めて作っただけの鞘から、日本刀を抜刀する。

 手が切れそうでひやひやするが、相当な訓練を積んできたのか全く切れる気配がない。


 その一瞬で放たれた抜刀術を、対戦相手の哉は軽々と防ぐ。

 一瞬で作り出した石の剣で、佐々木の攻撃を受け止める。


 佐々木の刀の切れ味がいいのはもちろん、哉の石剣もかなりの切れ味だ。

 体に当てればあっさりと切れてしまうだろう。

 そのため、防ぎきれなければ敗北。

 それどころか、場合によっては命も危ないだろう。


 石と玉鋼がぶつかり合った、『キン』という甲高い音が響く。

 剣を合わせ睨み合ったあと、再度高い音が鳴る。



 が、しばらくして2人は離れた。

 互いの剣を弾くように、後方へと飛んで。


 次、またしても佐々木から動いた。

 佐々木は離れてすぐ。離れた瞬間と言ってもいい。

 そんな一瞬で進行方向を真逆へと変えて走り出したのだ。

 後ろに飛び、着地した時にはもう進み出していた。


 またしても、佐々木は一瞬で距離を詰める。

 哉の体制はまだ後ろのまま。

 佐々木の攻撃を防げても、次には続けないだろう。


 と、誰もがそう思っていた時、佐々木の足元が動いた。

 そう思った直後、そこから石の柱が飛び出した。

 形は円錐状で、まともにくらえば穴が開きそうな威力だ。喰らう


 それを、佐々木は体を回転させて避ける。

 その一瞬。

 佐々木が石錐を回避した一瞬だけ。

 それだけの隙があれば、哉が体制を立て直すには十分だった。


 石錐を避けたあとの佐々木の刀を、哉はまたも剣を使って防御する。

 佐々木は短剣を腕に取り付けて防具のように使っているが、哉には防具どころかそれの代わりになるものすらも身につけていない。


 剣だけで全ての攻撃を防いでやる、ということだろうか。


 と思っていたところ、佐々木は体制を低くした。

 そして、その低い体制のまま下から振り上げるようにして三連撃。

 が、これも防がれる。


 三連撃の後佐々木は地面に手を付き、転がるようにして哉から距離を取ろうとする。


 相手が地に伏せている。

 こんなチャンス、逃すまいと哉は転がるよう佐々木を追いかける。


 と突然、佐々木は手元に水泡を作り出し、それの反作用を利用して哉に向かって飛び上がる。


 水泡によって作られた回転力を活かし、いつの間にか逆手持ちになった刀で、回転斬りを仕掛ける。


 流石にこれには哉もギョッとする。

 だが、意外にも冷静。


 哉は石剣を使って佐々木の攻撃を受け流した後、岩砲弾で即座に反撃。


 しかしそれも、佐々木の腕に取り付けられた短剣によって防がれる。


 が、距離をとることはできた。

 ここで戦闘が静まる。


 互いが互いの動きを警戒し、何をしてくるかの読み合いをしているのだ。

 見ている側からしても試合の強弱があって面白い。

 強者同士の戦いは、こうなるものなのだろうか。

 先程から、両者とも一歩も引かない戦闘を繰り広げている。


 これだけの観客がいるのにも関わらず、その全員が試合の雰囲気に飲まれ、会場全体が静まり返る。


 少しの間睨み合った2人は、同時に走り出した。

 互いが互いに向かって。


 哉は岩砲弾、佐々木は水粒と、互いに遠距離攻撃を走りながら繰り出す。

 それぞれの放った攻撃が空中で大きな音を立てて弾ける。


 岩が弾け飛ぶ中、2人の武器はそれらを気にする素振りもなくぶつかる。


 上段から下段、右から左へと、常人では追えないほどの剣速でぶつかり合う。


 その互いに無駄のない剣撃の中、哉の剣が佐々木の頭へと突き刺すように放たれた。

 それを佐々木は何のことなく首だけを動かして躱す。


 そのまま彼は体制を低くし、刀を哉へと振り上げた。

 それを哉はまたも剣で受け止める。

 が。


『キーン』


 哉の石剣が宙を舞った。

 彼の手から剣が零れたのだ。


 ここぞとばかりに佐々木は振り上げた刀を振り下ろす。

 が、一瞬、剣速が鈍った。

 しかし、それでも佐々木の刀は哉の首へと一直線。


 それを哉は、自らの腕に分厚い岩をまとって防御する。


『ボコッ』


 岩が崩れるような音がした。

 瞬間、哉の顔が歪んだ。

 腕に纏った岩の隙間から、赤い血が垂れ出している。

 佐々木の刀が、浅くだが哉の腕まで届いたのだ。


 が、哉もそれだけではない。

 佐々木が砕いた岩から刀が抜けないよう、岩を組み替えて刀を抜けなくする。

 そして、もう片方の腕にも岩を纏い、そのまま拳を放つ。


「くっ......!!」


 哉の拳は入ったのだが、それを回避しようと後方へと飛んでいたため、ダメージは大きくない。

 とはいえ、やはりその拳は岩。

 ダメージはしっかりとある。

 決して軽い攻撃ではない。


 佐々木は、大きく後ろへと飛ぶ。

 飛ぶ、と飛ばされる、が織り交ざったように後方へと。


 またしても距離ができた。

 こうなってしまえば、また沈黙が訪れる。

 互いを警戒しつつ、どうやって攻撃するのか。

 そんな沈黙が。


 哉は、両腕に纏った岩をボロボロと解く。

 やはり、片腕からは血が垂れている。

 だが見たところ、傷はかなり浅い。


 皮一枚とちょっとといったところだろうか。

 あの程度の切り傷なら、まだまだ戦えるだろう。


 次、最初に攻撃を仕掛けたのは哉だ。

 だが今までのような近接攻撃ではない。

 遠くからの能力を使った攻撃だ。


 哉は岩砲弾を高速で放ちつつ、鋭い石錐を地面から出現させる。

 佐々木はそれを、哉を中心に円状に走りながら回避し続ける。

 勿論、ただ走っているだけではない。

 飛んでくる生えてくる攻撃を避けながら、だ。


 石錐だけなら距離を詰めることは容易だが、岩砲弾もとなると簡単には近づけない。

 だが哉も、余裕の表情で能力を使っている訳ではない。

 当てずっぽうのように見える攻撃も、考えながら放たれているのだ。


 まず岩砲弾で前後の回避口を遮り、石錐で下から突き上げる。

 が、佐々木はそれをスルスルと回避する。

 飛んで回避、回って回避。

 極僅かな隙間でも、華麗に回避している。


 哉は、その佐々木の回避術に顔をしかめる。

 と同時に、佐々木もよい表情はしていない。

 華麗に回避しているとはいえ、やはり一瞬で岩砲弾からの脱出口を見つけるのは大変だ。

 時には刀を使って岩砲弾を切っているがそれでもだ。

 余裕綽々で避けられるはずもない。


 佐々木は時計回りで連撃を躱す。

 哉はそれを追って攻撃。


 が、次の瞬間。

 哉の視界で走り回る佐々木が、聳え立っている石錐の後ろを通った刹那。

 佐々木は消えた。

 佐々木はかなりの速度で走っていたのにもかかわらず、石錐の裏を通りかかった一瞬で止まった、もしくは方向を変えたのだ。


 哉は、一瞬にして佐々木を見失った。

 どこへ行った、と当たりを見渡すが居ない。

 なら石錐の裏にまだと思いその石錐を砕いてみるがそこにも居ない。


 完全に見失った。

 哉が周囲への警戒を一層強めた刹那、まだ見ていなかった場所を思い出す。


 上だ。

 そう思い上を見上げると案の定、佐々木が降ってきていた。

 それは既に哉の目と鼻の先。


 哉は転がるようにしてその攻撃を避けた。

 その後、手の中に石剣を生成する。


 それを確認したのかしていないのか、佐々木は一瞬で手の中に納刀し、刀を逆手で背後に回して鞘じゃない方の手を(かしら)に軽く当てて体制を低くした。


 なんとも奇妙な構え方。

 身を低くして後ろで手を組んだような妙な格好。

 それに刀を加えたような感じだ。


「『断絶必線』」


 佐々木はボソッとそう呟いた瞬間、走り出した。

 否、走っていない。


 それどころか、未だ一歩も進んでいない。

 ただ足を支点に倒れつつ、体を捩らせている。


 大股一歩で届く位置に哉がいるからか、それともまだ見ぬ技なのか。おそらく後者だろう。


 佐々木は、倒れる体を一回転させて抜刀。

 体がちょうど一周した刹那、彼は哉へと向かって走る。

 否、これもまた走ったのではない。

 飛んだのだ。


 哉に向かって、一直線に。

 地面と平行に飛び、一瞬で距離を詰めてから逆手に持った刀を振るう。


 よく見ると、佐々木の刀には水が纏われている。

 その水は、水でありながら鋭い。

 アクアカッター的なそれだ。


 それを刀に纏わせ、刀を守ると当時に斬れ味をあげているのだ。


 そんなことができるのならずっとそれで戦えばいいと思うかもしれないが、そうはいかない。


 普段なら強度なんてあるはずもない水を圧縮して強度を上げ、あまつさえ極限まで研いでいる。

 試合中ずっと維持できるほど、簡単なものではない。


 そんな水の刃を纏った刀は、哉へと振りかざされる。


 哉は、慌ててそれを石剣で防ぐ。

 防ごうとする。


 哉の石剣に刀が当たって、佐々木の攻撃を受け止めたと思った直後。



 音もなく、石剣に一線が走った。



 必ず断絶する一線。

 それがこの技、『断絶必線』。


 その攻撃は、文字が表す通り圧縮され黒く輝く石剣を2つに断絶した。

 だが、哉までは届かない。

 哉が一歩後ろへと下がる方が、ほんの寸分だけ早かった。

 剣先が、哉の鼻頭をかすめる。


 逆手で上から下へと刀を振り下ろした佐々木は、素早く順手持ちに持ち替えて振り上げる。


 振り上げた先。

 そこに哉はもういない。

 横へと飛び、佐々木と距離をとっていた。


 刀は空を切る。

 横に大きく飛ぶ哉を目で追う。

 直後、逃がすまいと左手元に水球、そのまま水粒を飛ばす。


 あの2人ほどの実力になると、こんな一瞬でさえ距離ができる。

 その距離を水粒で3発、遠距離から追撃をする。


 その小さな水の粒は、白い線になって飛んで行く。

 常人には見えないその粒も、あの2人ほどになると何とか補測できるのだ。

 哉は分厚い石錐を作り出す。


 その石錐に水粒が直撃。

 石錐の一点が、三度抉れる。

 が、貫通はしない。

 これまでの石錐とは違い、かなりの強度を持っているようだ。


 佐々木の水は強度を保って維持することは苦労するが、哉の石は一度作り出してしまえばそれでいい。

 硬い石は作り出してしまえば勝手に維持されるが、固い水は操作をやめると普通の水になる。

 通常なら、水なんて圧縮など出来るはずもない。

 よって、普通の水に戻ってしまうのはごく普通の事なのだ。


 と、そんなことはどうでもいい。

 佐々木は石錐へと走り、自分で作った石錐のクレーターに、バレーボールほどの水球を手で持ったままぶつける。


『ゴォォオン!!』


 直後、水とは思えない轟音を轟かせて水砲が石錐を爆散させる。

 その水砲は、石錐の奥にいた哉に一直線。

 まともにくらえば、哉の体も石錐と同様はじけ飛ぶだろう。


 それを哉は、斜めに作り出した石壁で受け流す。

 その後哉は、最初に作った壁と自分の間にあと数枚の壁を作り出す。


 水泡は、1枚2枚と壁を壊して進む。

 だが、最後の1枚までは届かない。

 後数枚といったところで水泡の威力が尽きた。


 佐々木はそれに「チッ」と舌打ちを1つ、根元しか残っていない目の前の石錐を飛び越えて哉へと走る。


 石壁を『ボロボロ』と音をたてながら壊した哉も、佐々木へと走る。

 互いに姿勢を低くし、異常な速度で走っている。


 佐々木が走りながら、刀を腰の位置で構えた。

 それを見た哉は、佐々木の眼前に再度石錐を生成。

 さっきほどの強度は、見るからにない。

 色が違うのだ。


 鉄球でも打ち込めば、ポロポロと崩れ落ちるだろう。

 素人目に見てもそうだと分かる。

 今までで1番強度の低い石錐だ。

 石の塊と言っても差し支えないし、むしろそれより弱いだろう。


 しかし、そんな石の塊も、目眩しには十分だ。

 その証拠に、佐々木が石錐を前に足を止めた。

 そりゃあ、ぶつかりそうになれば誰だって避けるか止まるかするだろう。


 そう、避けることも出来たのだ。

 止まるより、避ける方がこの戦局であれば最適である。

 これは佐々木のミスだ。

 致命的とまでは言わないが、戦局を変えてしまう大きなミス。


 そんなこと、佐々木だって理解している。

 1度完全に足を止めた彼は、慌てて次の行動へと移る。


 が、間に合わなかった。


 目の前の石錐が『ミシミシ』と音を立てながら砕け、飛び散る岩の向こうから1つ大きな岩が飛んでくる。

 否、岩ではない。

 拳に黒い岩を纏わせた哉だ。


 哉は、岩越しに硬い拳を繰り出したのだ。


 それを佐々木は避けることができず、まともに喰らって大きく飛ばされる。

 逆さまになって飛ばされている最中、地面に手を着き、体を捻って何とか両足で着地する。

 転がって地面に這うことは回避したが、佐々木は腹を抑えている。


 あの打撃は、内臓がつぶれそうなほどの威力だった。

 それを佐々木は、顔を歪めただけで済ませる。

 あんな華奢な体型をしている佐々木は、意外にも体が丈夫なのかもしれない。


 と、彼が痛みに顔を歪めていた時、彼を囲み逃げ道を潰すように石壁が生成される。

 その壁には返しが付いている。

 その返しには鋭い棘が多く取り付けられていて、容易には登れない。


 そんな石壁を作った哉が、続いて石壁の上へと手を向けた。

 そこに石が生成される。


 その石はみるみる大きくなっていき、岩と言われるようなサイズになり、その後もどんどん大きくなる。

 それは人の大きさなど裕に超え、落下を始める。


 異常な大きさが故、落ちるスピードはゆっくりだが、落下までの時間に石壁から逃げられるほどの時間はない。


「クソッ」


 石壁の中から、吐き捨てるような声が聞こえてくる。

 こうした状況では、普通なら待ったがかかり、試合が終わるのだ。

 だが一向に終わる気配はなく、試合が続いている。


 このままでは佐々木がつぶれてしまう。

 この学校に治癒系の優秀な能力者がいるようだが、死んでしまってはどうすることもできない。


 あのサイズの岩。

 あまり硬そうではないにしろ、あれにまともに潰されれば即死だろう。

 あそこまでの大きさとなれば、固さではなく重さだ。


 あの吐き捨てるような佐々木の言葉以降、彼の言葉は聞こえてこない。

 もう諦めたのだろうか。


 もう巨大な岩は佐々木の眼前まで迫っている。

 ここまでくれば、哉であってももう止められない。


 それであるのにも関わらず、哉に動揺はない。

 ただ、今までと変わらない、薄く殺気の籠った目で佐々木がいる場所を見つめている。

 彼は相手が友達でも、戦うとなったらとことんやるのだろうか。

 とても、日本という平和な異世界からの転生者だとは思えない。


『ドオおぉぉぉん』


 ここ一帯の土地を揺らすような大きな振動と、耳を劈くほどの轟音が鳴り......

 石壁は巨大な岩によって跡形もなく潰された。

 当然、中にいた佐々木も......

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