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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第六章 『闘校祭』
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第六十一話 『闘校祭8』

 本大会、残るは後2試合。

 準決勝と決勝だけだ。


 明日の二試合で、優勝者が決まる。

 神様の命令により、俺は優勝しなければならない。

 最初は面倒臭がっていたこの大会だが、もうここまでくると少し面白くなってくる。


 ラスト2試合。

 優勝目指して楽しむとしよう。



 その2試合に出場する俺含めた4人は、皆強い。

 宙と同じか、それより以上だ。


 俺の次の試合相手は、まだ確実ではないのだが決まっているようなものだ。

 次の相手は序列2位。


 能力は『雷鳴』。

 雷で戦ってくるのだ。

 今までの試合を見たところ、雷というよりも電撃って感じだったが。

 ポケ○ンで言うところの1○万ボルト的な。


 まぁ、その辺はあまり問題ではない。

 問題は、俺はその電撃を避けなければならないというところだ。


 普通に考えて不可能である。

 いくら足が速いからって、たかが人間が光の速さに近づくことなんてできないのだ。


 それは能力があってもそうだ。

 光よりも速く走れる、みたいな能力はあるかもしれないが、生憎と俺は持ち合わせていない。

 俺の能力は『統水』。

 電気に水という、非常に不利な能力だ。


 どうしたものかな。


 今はバイトも終わり、宙と十分ゆっくりし終わったところ。

 あとは寝るだけってところ。

 俺は明日のことを考えながら、自室のベットに座っていた。



 俺の部屋の一面は、本が入っていない本棚でいっぱいだ。

 多少の本は入っているのだが、それでもスカスカ。

 お金が無いから隙間を埋めようにも埋められないのだ。

 結局はお金なんだよ。

 世知辛い世の中だね。


 俺のベットは、その本棚に隣接するようにして設置されている。

 頭は部屋の入口側だ。

 大きな地震なんて起きれば、本が全て俺に降ってくる。


 とは言っても、この世界は地震とは無縁。

 もし地面が揺れるようなことがあっても、それは自然な地面ではない。

 ものごっつい能力を持った誰かの仕業だ。

 まぁ、地震が自然だろうが人工だろうが、俺に本が降ってくるのには変わりないわけだが......


 机はベットの対角で本棚に背を向けるようにして置かれてある。

 少し大きめな机だ。

 デスクトップパソコンを置いても余裕があるくらいだ。


 パソコンか......

 また使いたいな。


 そんなこと、この世界で考えたって叶うわけない。

 それがこの世界の(ことわり)ってやつだ。

 潔く諦めようじゃないか。

 今日のところは寝るとしよう。



 ---



 その日の夜、久しぶりに夢を見た。


 夢なんていつぶりだろう。

 長らく見ていないと思う。

 もしかすると、最近でも見たのかもしれないが、全く覚えていない。


 しかし、今日の夢はべったりと頭にこびりついた。

 それは、手に着いたドロドロの血液のように。

 べったりと、ぐっちょりと。


 この夢は、しばらくの間忘れることは無いだろう。

 忘れたくても忘れられない、衝撃的な夢。

 本当に最悪で、夢だとしても吐き気がするようなそんな夢。



         『哉伽月を、斬殺する夢。』



 場所は分からない。

 場所なんてどうでもいい。

 おそらくあれは闘校祭。


 そこで俺は刀を振るい、うっかり哉を切り捨てていた。

 うつ伏せになって動かなくなり、ドバドバと血が溢れだしている。

 俺は返り血を浴びて、刀からは哉の血がポタポタと落ちている。


 それは夢のくせに妙にリアルで、気持ち悪い。

 俺を異常なまでに不安にさせる。

 何かをグサグサと切り開かれるような感覚。

 ズキズキと、何かが痛む。


 俺の何かを切り開くのが何なのか分からない。

 何が痛むのか、具体的には分からない。


 ただ、目の前でぐったりと倒れる哉を見ていると、何かが強烈に痛む。


 これが夢だというのは分かっている。

 俺も、うっかり殺してしまうなんてことはない。


 絶対に、俺が哉を殺すことなんてありえないのだ。

 これは夢だ。

 実際、哉の周りは真っ白で現実とはかけ離れている。


 しかし、それなのに。

 妙にリアルな夢。

 なんだか気持ち悪くなってくる。


 死んだ哉の、開いたままの目が俺を見ている。

 臓器をかき回されるみたいに、ぐちゃぐちゃな気持ちになって......



 ---



「......っ!」


 俺は飛び起きた。

 体は汗でグッチョリとしていて、気持ち悪い。

 本以外の娯楽がない部屋で、声にならない悲鳴を上げた俺は、きっと顔が青ざめている。


 嫌な夢だった。

 普段なら夢なんてすぐに忘れてしまう。

 だが、この夢は消えない。

 こびりついている。


 今日の試合が、少しだけ不安になってしまう。

 うっかり殺してしまうなんてことになりそうな気がしてくる。

 まぁ、気がするだけなんだが......


 正夢なんてものもあるらしいが、これはきっと違う。

 違うと思いたい。


 そもそも、事が起こって初めてそれが正夢だと言うことになる。

 結局、正夢なんて言葉は後付けに過ぎないのだ。


 要は、あの夢を正夢にするかは今日の俺次第。

 正夢にならないよう、気を付ければいいだけの話だ。

 哉をはじめ、誰一人として殺さない殺させない。

 俺はそう強く決意し、グッと拳を握り込む。


 でもでも、気を付けすぎて試合に影響が出れば本末転倒。

 程々に気をつけよう。

 言ってしまえば、いつもと一緒。

 安心安全、通常運転の佐々木君で本日もお送りします。



『コンコン』


 俺がそんなことを考えていると、部屋の扉が鳴った。


「朝ごはんできたよ」


 扉の向こうから、そんな声が聞こえる。

 宙の声だ。


「はーい」


 振り切ったとはいえ、夢のせいで気分が悪い。

 ほんの少しだけ、いつもより悪い声色で俺は返答した。

 無論、こんな声を出すつもりなんて毛頭なかった。

 いつも通りの、普通の声で返すつもりだった。

 でも、やはりあの夢の影響は大きいようだ。

 何とかしないとなぁ


「おにぃ、声が変だけど大丈夫?」


 そうやって俺を心配する言葉を、投げかける。


 俺にとってこの声色はいつもと少し違うくらいだが、宙にとっては結構違うらしい。

 完全に隠し通そうとは言わないが、ちょっと聞いたくらいでは分からないくらいにはしたい。

 平常心だ、平常心。

 夢ごときに心を動かされないよう、気を強く持たなければ。


「ちょっと変な夢を見てな

 大した事無いから心配しないでいいよ」


 俺は、出来るだけいつもの調子でそう言った。

 あまり宙を心配させないように。

 気持ちを入れ替えて声を発する。


「別に、おにぃのことは心配してないし......」


 毎度のことだが、それで「心配してない」なんて無理があるだろ。

 俺を心配してくれているのが扉越しにも伝わってくる。

 それにしても俺、そんなに心配されるような声してたのか。

 そうか。


「......ごはんできたから、早く来てね」

「はーい」


 俺は座っていたベットから腰を離し、立ち上がった。


 宙の美味しいごはんが待っている。

 暗い気持ちは消し去り、宙の味を堪能するとしよう。

 宙の料理は、誰がなんと言おうが超絶品。

 あれでなぜ料理が下手だと思っているのか、宙と一緒に過ごして長いが、未だそこは理解できない。


 店でも開けば、大繁盛間違えなしだと思うんだけどなぁ

 身内びいき無しで考えてもそう思う。

 それくらい宙の料理は美味しい。


 そんな絶品を、俺は朝一番から食べるのだ。

 俺は、リビングへと向かった。



 ---



 宙との朝食もとっくに終わり、俺は現在学校にいる。


 数日前みたいに、今日は全員が集まったりなしない。

 あれもたまたまだったしな。

 大体は闘技場に着いて、遭遇してから一緒に行動する。

 RPGゲームで、仲間を集めるみたいな感じだ。


 特に集合とかはしないのだが、最終的にはなぜか全員が集まるのだ。

 まぁ、今日の俺はそんなに行動を共にはしないだろうけどな。


 なんせ今日のBブロックでは計2試合あり、順調に行けば俺はどちらにも出るという形になる。

 計2試合とは言っても、2試合目は決勝でこっちの競技場でしか試合は行われない訳だが。

 まぁ、そこはどうでもいいだろう。


 で、今俺が居るのはは闘技場の控え室前。

 その通路に、ある奴と一緒にいる。


 遠坂姉妹でも牧田明蓮寺でも、もちろん哉でもない。

 鷲宮でもない。


 今、俺の隣で大きくかつ爽やかに座っているのは、牧田級のイケメン。

 色んなことを勝手に決めてくるあいつ。

 俺がこの大会に出る羽目になった原因、神様だ。


「順調にここまで上がってきてるね」


 神様は、俺に向かってそう言った。


 順調、か......

 宙との試合は結構危なかったので順調とは言い難い気もするが、無事にここまであがってこれている。

 とりあえずは、順調と言っておこう。


 それより......


「こんなところに姿を見せて、大騒ぎにならないのか?」


 そう、こいつはこんなでも一応は神様。

 北方神国の国民から絶大な人気を誇る神様なのだ。


 この大会にも、神様目当てで来ている人だっているという。

 それにも関わらず、こんなに気軽に姿を見せていいのだろうか。

 この控え室までの通路、人通りが少ないとは言ってもゼロではない。

 神様がいたなんて観客に知れたら、大騒ぎになってしまう。


「それは大丈夫だよ

 能力で君以外からの認識を遮断しているからね

 今、君以外に僕は見えない

 もし今のこの状況を誰かが見れば、君は一人で話している変な奴だね!」


 「変な奴だね!」じゃねぇよ。

 もし誰かに見られてたらどうするんだよ。


 見えると見えない以外にないのか。

 0と100しかない神様なのか。


 そんなチート能力なんだから、もう少し何かあるだろ。

 30とか50とか、バランスってものがあるんじゃなかろうか。


 どうせどんなこともできる能力を持っているのなら、どうにかしてほしいものだ。

 認識遮断ではなく認識阻害とか。

 完全に見えなくなるのではなく、「なんか人がいるなぁ」くらいに思う感じでさ。

 ちょうど良くしてくれよ。


「認識阻害はできないのか?」

「できるよ」


 神様は、何食わぬ顔で即答した。


 できるのならそれでやってくれよ。

 そうじゃないと、俺が変な奴みたいじゃないか。

 ただでさえ、十狂に仲間入りさせられそうなのに。


 俺はまだ狂ってない。

 一人で話していたら、それこそ狂っている。

 ここぞとばかりに十狂入りだ。


「今度からは、認識阻害にしてくれ」


 俺の切実な願いを、神様に告げる。

 もし認識遮断で廊下でなんて話されようもんなら、たまったもんじゃない。


「そうか、じゃぁそうするよ」

「是非ともそうしてくれ」


 とこんな感じで、運動で言う準備運動みたいなことが終わった。

 実際、こんな話はどうだっていいのだ。


「で、何の用だ?」


 そう、俺はまだ、神様が何の用で俺に近づいてきたのか分からない。

 彼のことだ。

 どうせ勝手なお願いを押し付けてくるんだろう。

 と、俺はそう思っていたのだが。


「特に何もないよ

 元気にしてるかなぁと思って」

「......そうか

 それなら、俺は元気いっぱいだ

 ほらな」


 俺はそう言って、力こぶを作って見せた。

 そんなに大きくない力こぶを。


 実際、力こぶを見せたところで元気である証明にはならないわけだが、「ほらな」と言ってしまった手前、なにかしなければいけなくなったのだ。

 それで咄嗟に力こぶを作ったのだ。


 でも、なんだかこれじゃない気がする。

 両手でも広げれば良かっただろうか。


「......君、よくそんな筋肉であれだけの強さを出せるよね」

「力の使い方が違うんだよ」


 俺は神様の言葉に、ドヤ顔で答えた。

 理由はない。

 なんとなく、ドヤってみたかった。


 まぁ、俺は俗に言う『着痩せするタイプ』ってやつだし、パッと見じゃ分からないだろうな。

 脱げばムキムキなんだぞ。

 ......人並み以上には。


 と、俺が内心そんなことを思っていると、神様は信じられない行動に出た。


 俺の服を、バッと捲り上げたのだ。


「何すんだよ!!」


 俺は、神様から距離をとってそう言った。

 自分の体を抱きしめるように、両腕をクロスさせて。


「いやいや、本当に着痩せするタイプなのかなぁと思ってね」


 そういえばこいつ、心が読めるんだったな。


「なんだそう言うことか

 てっきり襲われるのかと思ったぞ」

「ハハハ、急にそんなことするわけないだろ」


 俺の反応に、神様は笑って答える。


「『急に』って、ちゃんと段階を踏めば襲うのか?

 お前、男もいける口なのか?」

「へへ......」


 俺の軽口に、神様は不敵な笑みを浮かべるだけだ。


 あれっ?冗談のつもりだったんだけどな。


 ......えっ、本気で言ってんの?

 いやまぁ、神様は何も言っていないんだけど。

 その何も言っていないことが問題なんだけど。

 何か言ってくれよ。

 否定してくれよ。

 じゃないと、俺は安心してお前の隣を歩けない。


 自分より圧倒的強いやつに、襲いかかられる危険性があるなんて怖すぎる。

 俺にそっちの気は無いのだ。

 初めてが男なんて、冗談じゃない。


 俺は、さっきよりも神様との距離を開ける。


「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ

 それに僕は男じゃないとダメって訳じゃないからね

 そこに愛さえあればいいんだよ」


 そうかそうか。

 それならよかった......

 愛がないと襲われないんだな。

 俺と神様の間に、愛なんて微塵も存在しない。

 だから安心だね。


「君は魅力的ではあるんだけどね」


 と、神様は笑顔で......というよりも、ニヤニヤした顔でそう言った。

 あのねちゃっとしたニヤニヤ顔でさえイケメンでいられるんだから、本物のイケメンは羨ましい。

 男女問わず魅了するこいつが、両性とも行けるとは。

 恐ろしいもんだな。心が振るえるぜ。

 ゾッとする。


 この神様には、よりいっそう警戒するとしよう。


「まぁ、そんなことはどうでもいいんだよ」


 神様はそう言って、また言葉を続けた。


「次の試合、頑張ってね」


 その続けた言葉は神様にしては珍しく、俺を応援するような言葉だった。

 神様は、いつも通りの笑顔でニコニコしている。

 頑張れ、か......


「当然だろ」


 俺は自分の胸をドンと叩く勢いで、そう言った。

 次の相手の能力は『雷鳴』

 校内序列2位で、かなり面倒な相手だが問題ない。

 俺は強いからな。


 余裕で......全力を出して勝つとしよう。

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