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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第六章 『闘校祭』
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第五十六話 『戦闘後の仕事』

 あれから、くだらない話をした。

 能力研究部一同と+αで、試合を見ながら話をした。

 やはり闘校祭は出るんじゃなくて見る方が俺には合っているかもしれない。


 俺は戦闘狂じゃないし。

 いや、そう言うと宙や哉が戦闘狂みたいになるので訂正しよう。

 俺は闘校祭に出たかった訳では無いしな。

 うん、これがいいだろう。


 だから、俺に観客側が合っているのは当然なのだ。

 まったくあの神様って奴は。

 俺をこんな面倒な大会に参加させやがって。


 今度あったら、一言言ってやろう。

 てか、あの神様はどうして俺に優勝させようとしているんだろう。

 腰につけていた巻き取り式ワイヤーも、神様に貰った支援品だし。


 あのワイヤー、何て名前だったかな。

 マジックリールとか言う、そのまんまの名前だった気がする。

 糸を巻きとる魔道具でマジックリール。

 全くそのまんまだ。



 で、今は闘校祭も終わって放課後。

 俺も帰っているし、牧田以外はもうとっくに家に着いているだろう。

 牧田は学校に残って新聞を作ると言っていた。

 熱心なこった。


 そして、俺が今何をしているかと言うと、想像が着くだろう。

 いくら今日が闘校祭だろうと関係ない。

 学校が終わればバイト。

 俺は俺である。


「今日闘校祭だったんだろう?

 すまないね、こんな日にまで駆り出してしまって」


 俺にそう言ってくるのは店長だ。

 店長らしい大きな態度で、俺にそう言う。

 そこは別にいいんだが、この店長。

 左手にはチーズ、右手にはビールを持っている。


 こいつ......

 大丈夫か。

 まだ夕方に差し掛かったくらいなんだが。


「全然大丈夫ですよ」


 俺は心情を隠しつつ、笑顔を作ってそう言った。


「でも、仕事中の飲酒は控えてくださいね」


 控えるというより、やめて欲しい。

 そもそも、仕事中に飲酒なんて普通はしない。

 この店長が、どうかしているだけだ。


 深夜のコンビニとかには、酔ったおっさんがちらほらいた。

 が、夕方から酔ってるファミレスの店長は見たことない。

 まぁ、うちの店長は酒に強いのか、酔ってはいないが。

 しかし、それとこれとは別。

 夜でも、仕事中には飲むんじゃない。


 良かったな、店長。

 この世界にSNSがなくて。

 もしあったなら、客にバレた途端一瞬で話が広がるだろう。


 でも、SNSが無いこの世界だとしても勤務中の飲酒はやめましょう。

 いくら酔いにくいからと言ってもやめましょう。

 バイトもせずに食っちゃ寝していた、元クズニートからの助言だぞ。

 しかと受け止めよ。


「店長、オーダー!」


 フロアの方から、店長を呼ぶ声がする。

 その声に、店長は「はーい」と声をあげて振り向いた。


「じゃぁ、カケちゃん

 着替え終わったらよろしくね」


 そう言って、店長は酒とチーズを近くにあった棚に置いてフロアで向かった。

 酒飲んでんのにフロア出んのかよ。

 なんて図太い店長なんだ。

 もう休んどけよ。


 ちなみに、店長も言ってた通り俺はバイト姿ではない。

 バチバチの私服姿である。

 家にあったジャージ姿である。


 俺はまだここに来たばっかりであり、着替えようとしていたところに店長が来た。

 俺は基本的に下から着替える派なのだが、着替えようとしているところに店長が来たのでかなり焦った。

 こんな酒豪店長だが、何もしなければベッピンさんなのだ。

 ただ話をするだけで、緊張してしまう。

 あんな美人に、着替えてるところなんて、興奮しちゃうじゃないか。


 俺の性癖が歪んでしまう。

 見られることに興奮を覚えるようになってしまう。


 あの店長、危険人物だな。

 急に男子更衣室に入るのはやめろ。

 酒よりも先にやめろ。

 店員の性癖が歪んでもいいのか。


 まぁ、いいや。

 早いとこ着替えるとしよう。


 と、俺は頑張って着替え始める。

 できるだけ早く着替えられるように、全力を出しましょう。

 あれだ。

 俺の力を開放する時が来たってやつだ。


 まぁ、そんなわけで、俺はウェイター姿にフォルムチェンジした。

 人一倍時間がかかったと思う。

 自慢じゃないが、俺は着替えるのが遅いらしいからな。


 と、そんな自慢にもならないことはどうでもいい。

 自分の仕事をするとしよう。

 俺はフロアへと向かう。


 楽しい楽しい接客だ。

 いい人から嫌な人まで。

 十人十色人それぞれの個性をぶつけ合うバトル。

 それが接客だ。


 見れば、ついさっきまで酒を飲みチーズを貪っていたべっぴん店長もバトル中だった。

 彼女の対戦相手は、いい人なようだ。

 何をもっていい人なのかは分からないが、とにかくいい人そうだ。

 あの客からはそういうオーラを感じる。


 いい人にはいい人の、悪い人には悪い人なりのオーラが多少ばかり出る。

 これは見た目とは少し違う何かだ。

 まぁ、所謂勘というやつだ。


 見た目で判断していないとはいえ、それよりも酷い判断理由かもしれない。

 でも、勘ってのは意外と当たるらしいぞ。

 賢い人が言っていた。


 俺は見た目で人を判断することはない。

 俺が人を判断するのは、実際に会って感じた印象とオーラだけだ。

 その二点で、人の良し悪しを決定づける。

 見た目なんて関係ないんだよ。


 とりあえず、俺も赤い札が上がっている席に向かう。


「ご注文、お決まりですか?」


 俺は、「お姉さん」と呼んだら喜ばれるくらいの歳であろう女性客集団の注文を聞く。

 この客は、一応常連客だ。

 最近よく見かける。


 注文は色々。

 グラタンだったり味噌汁定食だったり、例の水だったり。

 人それぞれだ。


 俺はその注文にどうこう言ったり、なにか思ったりはしない。

 そもそも、人が食べる物になんざ興味無い。

 勝手に食べてくれ。

 この人たちが何を食べようが、俺には関係ない。


 俺はただ、注文を聞いて厨房へ伝えればいいだけ。

 それが俺の仕事だ。

 客の注文にイチャモン付けるのは仕事じゃない。


 てなわけで、俺は無心で注文を紙に書く。

 ただただ「はいはい」と、淡々と頷く。


「ご注文を繰り返します」


 俺はそう言って、おばさま方の注文を口に出して読む。

 この行為は、ルールというかお決まりというか。

 そういう感じの、しないといけない行為なのだ。


 とまぁ、繰り返し終わったら厨房へと向かう。

 俺が厨房に注文票を貼りに行った時、奥の更衣室から鷲宮が出て生きた。


「あっ、かけ君!」


 鷲宮は俺を見た途端、そう言って手を振ってくる。

 2・3(メートル)しか離れていないのに、手をおおきく振ってくる。

 そんなに自己を主張しなくても、俺にはちゃんと見えてるよ。

 大丈夫、自信持てって。


「どーも」


 俺も何か反応はしないとなので、俺もとりあえず適当なことを言う。


 正直、この昼でもなく夕方でもないこの時間は客が少ない。

 鷲宮にはせっかく来てもらったが、あまり仕事がない。


「あっ、よんちゃん

 よんちゃんもよろしくね〜」


 接客が終わり、俺たちの隣を通り過ぎた店長は振り返らずに俺たちに背中を見せたままそう言って手をヒラヒラと振る。


 あの人、おそらく今から飲酒だろう。

 フロアに出ていない時は、休み無しで飲んでいるのだろうか。

 今度監視カメラとかつけて観察してみようかな。


 無論、この世界に監視カメラはない。

 だからこれは冗談だ。


 でも、天眼があるなら監視カメラを作れても不思議ではないと思うのだがな。

 部活の研究内容として作ってみるか?


 でも、そうなると魔法陣の書き方とかも一から学ばないといけない。

 学校でも魔法陣について学ぶことはあるが、それは高校三年生からの選択科目で、高二以下は学べない。

 俺はまだ学べないのだ。


 本を買うのは高いし、先生に聞くのは面倒臭い。

 面倒臭がっていたら何も出来ないのだが、面倒なことは面倒なのだ。

 いつか、気が向いたら先生に聞いてみるとしよう。

 本を買うにはお金が足りないからな。


「かけ君」


 俺がそんな、部活動計画を立てていると、鷲宮が俺の名前を呼んだ。

 俺はそれに返事をして鷲宮を見る。


「かけ君、闘校祭出てたんだね。凄かった」


 その「凄い」っていうのは、俺のことだろうか。

 それとも観客の多さだろうか。

 はたまた他のなにかだろうか。


 観客の多さなら、俺も同意だ。

 あの大会、開催中は付近の学校も休みになって大会を見に来る。

 それに加え、保護者や部外者も見に来る。

 地域のおじさんとかが、「野球でも見ようかな」みたいな感覚で観戦しに来るのだ。


 その総量と言ったら、とても数えられたもんじゃない。

 闘技場二つ分の客席は当然のように満席だし、客席の上の通路である手すりにも観客がずらっと並んでいた。


 あの闘校祭というやつが、こうも人気なのは単に面白いというものではないだろう。

 おそらくだが、あの大会が北方神様主催の大会であるからだろう。

 おそらく、きっとだが、合っているという確かな自信がある。


 この国の神様は、異常なほど人気だからな。

 居るかもしれない神様を人目見ようと集まっているのだ。

 中には、試合を楽しみに来ていた人もいただろうがな。


 鷲宮は、信者なのか、試合を楽しみに観戦しているのか。

 今まで彼女を見てきた感じ、信者っぽくはない。

 ということは、鷲宮は後者なのだろう。


 なら、俺が楽しませてやるよ。

 いや、これは単純に楽しませるってだけ。


「俺と一緒に楽しいことしようよ」


 的な、ナンパ風のやつではないし、他意もない。

 俺はナンパなんてしたことない。

 する気もないし、何より度胸がない。


 あのナンパとか言う行為。

 肝っ玉の据わった強者にしかできない異業だと、俺は思っている。

 俺にはあんなことできないな。

 惚れ惚れするぜ。


「そうか」


 とりあえず、鷲宮の言葉に相槌を返しておこう。

 一人で、何も言わずに考えていると無視していると勘違いされかねないからな。


 で、結局その「凄かった」という鷲宮の言葉が何に向けられたものなのかが分からなかったので、どうとでも取れる言葉を選んだ。


 俺が凄かったと言われていると勝手に勘違いして「ありがとう」なんて言ったら、恥ずかしいことになる。


「うん、あっという間に勝っちゃうし、強いんだね

 かけ君、その......か、かっこよかったよ」


 鷲宮は下を向いてそう言った。


 言いにくいなら、無理して言わなくていいよ。

 俯いてたし、途中言葉に詰まってたし。


 むしろこれ、言い難いっていうより笑いを我慢してるんじゃないのか。

 笑っているから言葉に詰まって、笑っているのがバレないように顔を下に向けて。

 そういうことなのか、鷲宮。

 答えろよ鷲宮。

 よんちゃーん。よんちゃんさーん。


 俺は笑われているのか。

 鷲宮の顔も、若干赤くなっている。

 あれはもう笑いを我慢しているようにしか見えない。


 馬鹿にしてんの?

 俺、馬鹿にされてんの?


 まぁ、いいや。

 かわいい女の子に馬鹿にされる。

 これもまた本望だ。

 全員かどうかは分からないが、人によっては興奮しちゃうよ。

 気を付けようね。


「ありがとう」


 どんなに馬鹿にされてても、あの言葉は俺に向けられたものだったので礼は言っておこう。

 「ありがとう」と「ごめんなさい」はちゃんと言わないとダメ。

 いつだったか、お母さんによく言われたものだ。


「ていうか、見に来てたんだな」

「うん、友達と一緒にね」


 そうか、友達と。


 学校が休みってのはいいな。

 うちの学校も休みといえば休みだが、運営とかしないといけない人もいるし、完全に休みと言いきれるかといえば人によってはそうじゃない。

 俺とかマジそうだろ。

 出たくもない大会に無理やり出場させられて。

 することが違うだけで、感覚的には学校とそう変わりない。


 これがあと四日も続くなんて、憂鬱だ。


「かけ君、水でコピー作れるんだね

 すごいなぁ」


 鷲宮は、能力のことを褒めてくれた。

 多分、心から。


 戦いのことは笑われるけど、能力については褒められる。

 褒められたことは嬉しいのだが、なんだか複雑な気分である。

 素直に喜びたいんだけど。

 まぁ、いいや。

 何も気にせず、喜んでおこう。

 わーい、わーい


 うちの学校の奴らとは違い、鷲宮は俺の能力を知っている。

 俺が二人いるという噂を聞いて、すぐにどちらかが水人形だと気づいたのだろう。


 ん?

 鷲宮、友達と闘校祭来てたって言ってたよな。


「俺の能力、人に話したりした?」


 もし話されていたのだとすると、俺が能力を隠している意味がなくなる。

 噂は時期に広がって、俺の優位性が一つ消えてしまう。

 まぁ、能力が一つや二つバレたところで並大抵の相手には負けないだろうが。

 ある程度の強さを持つ者には、相手の強さもおおよそわかるのだ。

 相手が意図的に隠している場合を除くが。


 でも、ナメてかかるのはよくない。

 想像もしていないところで、序列上位勢と当たるかもしれない。


「言ってないよ

 誰も知ってなかったし、隠してるのかと思って」


 随分と察しがいいな。

 物わかりのいい子は大好きだぞ。


「ありがとう」


 俺は鷲宮に礼を言う。

 「気を使わせてごめん」と行こうとしたのだが、あるアニメで「ごめん」って何回も言うより「ありがとう」と一回言ってくれる方が相手は満足すると言っていた。

 それに倣って、俺は「ありがとう」と言う。


 本当に、心の底から感謝している。

 彼女がもし宙なら、思わず頭を撫でてしまうことだろう。

 だが、鷲宮は俺の妹ではないので自重する。

 別段好きでもない奴に、頭を撫でられるなんて嫌だろう。

 軽率な行動は控えようと、そう決心する。


 その決心をくすぐるように、『チーン』と店員を呼ぶ音がした。

 俺はベルの鳴ったテーブルを見る。


 男性客数名。

 若い。

 学生だろう。

 見たことがないから、どこか他所の学校の生徒なのかもしれない。

 もしくは、ただ単純に俺が知らないだけか。


 そろそろ忙しくなる時間かな。

 ひとまず、オーダーを受けて来よう。

 と、俺は歩き始めようとしたところ、


「私が行ってくる」


 そう言って、鷲宮が行ってしまった。

 鷲宮が行ってしまったなら、俺は別の客の所に行こう。


 少しづつ、客足も増えてきた。

 いっちょ頑張りますか。



 ---



 帰路。

 今の俺は仕事が終わって、帰路についている。

 当然のことのように、鷲宮と一緒に。


 特別な話はしない。

 哉らと話すことと同じように、何のことない雑談を交わしながら帰るのだ。

 今日はこんなことがあって楽しかったとか、客のここが面倒臭かったとか。

 いいことから悪いことまで。

 その日あった事や、今まであったこと、これからしたいことなどなど。

 そんな雑談だ。


 特に語ることなどない。

 語るのも恥ずかしいようなそんな話だ。


 あいつらとは少し違う方向で、鷲宮ともだいぶ仲良くなってきたと思う。

 あいつらは騒げる友達。

 鷲宮は落ち着く友達。

 そんな感じだ。

 いい関係を築けていると思う。


 前世では散々だったが、この世界ではいい人生を送っている。

 ちょっとばかり腹の立つ神様もいるが、これも含めて大切にしていきたいな。

 危ない時は俺が守るし、人間関係もこのまま深めていきたい。


「かけ君」


 俺がそうやって感傷に浸っていると、鷲宮に声を掛けられた。

 否、声はずっとかけられていた。

 俺もそれに返答していた。


 会話をしながら考えていた。

 それが、鷲宮に名前を呼ばれたことで意識が覚醒。

 現実に戻って来た。


「ここまででいいよ

 ありがとう」

「そうか」


 見れば、鷲宮宅の付近だった。

 長いはずの帰路は、彼女と話していれば早く感じる。


「バイバイ

 また明日頑張ろうね」

「そうだな

 また明日」


 俺たちは手を振り合う。

 互いに、哉みたいな大振りではなく小ぶりのバイバイだ。


 また明日。

 明日、俺の試合は一試合だけなので今日より楽な一日になるだろう。

 それでも、今日は明日のためにゆっくりするとしよう。

 早く帰って、早く寝よう。

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