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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第六章 『闘校祭』
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第五十五話 『闘校祭3』

 とまぁいろいろあって、明蓮寺とも合流した。

 ちなみに、水人形は明蓮寺が合流する少し前に消してある。


 その後、昼食をみんなで食べた。

 少し不機嫌だった明蓮寺も、いざみんなと食べ始めると楽しそうにしていた。

 機嫌が直ってよかった。

 明蓮寺は、あれからずっとムスッとしていたからな。

 まぁ、ムスッとしている明蓮寺はあまり喋らず、ちょっとかわいかったがな。


 彼女、喋らなかったらただの清楚系女の子なんだよなぁ

 口を開いたら残念な清楚系美少女なのだ。

 まったく、どうしてこう俺の周りには美形ばかり集まってくるんだ。

 主人公のご都合設定かよ。



 と、みんなで楽しく昼食を取った。

 ただ雑談をしていただけなので、その内容は割愛しよう。


 今は昼食を食べ終わっている。

 会話の内容は、変わらず雑談だ。


 現在、昼を食べ終えてしばらくたっているが、飽きずにどうでもいい話を続けている。

 どれくらいそんな話を続けただろうか。

 どうでもよくて、何の役にも立たない話だが、そんなものでも結構楽しい。

 時間も忘れて話してしまった。


「カケ、そろそろ試合じゃない?」


 と、牧田がそう言ってきた。

 確かに、言われてみればそうかもしれない。


 午後からの試合が始まってしまう。

 ここから闘技場は結構遠い。

 早めに移動し始めないと間に合わなくなってしまうかもしれない。


「じゃ、行ってくるわ」


 俺はそう言って立ち上がった。

 まだ、試合にはほんの少し早いかもしれないが、それでいいのだ。

 選手は、ひとつ前の試合までには控室に到着していなければならない。

 なので、俺はこの雑談から一足先に抜けなければならない。

 少し名残惜しいな。


「お前が行くなら、俺らも一緒に行こうぜ」


 哉は突然そんなことを言った。

 それに、遠坂妹と明蓮寺が「そうですね」と同意。

 姉は渋々立ち上がり。

 牧田は何も言わずに笑顔で立ち上がった。


「まだここで話してていいんだぞ?」


 みんなの行動に少し驚いた俺は、立ち上がろうとしているのを止める。

 こいつらは一つ前に試合に間に合う必要なんてないし、一つ前の試合を見たところで面白くなんてないだろう。


「移動しながら話しましょうよ」


 と、遠坂妹は恥ずかしそうに言った。

 俺が一人にならないための配慮だろうか。

 やっぱりこの子は優しい。

 姉とは大違いだ。


 てなわけで、俺たちは闘技場へと向かった。



 ---



 道中。

 それは楽しいものだった。

 一人で歩くよりも断然楽しいと思う。


 一人で歩く楽しさもあるが、みんなと歩く楽しさも捨てきれない。

 友達っていうのは、いいもんだな。

 前世の俺では、知りえなかった娯楽だ。

 大切にしよう。

 決して、くだらないことで決別なんてしないように。


 そんなことを考えている俺は現在、選手控え室にいる。

 さすがに、ここまではみんな着いてこなかった。

 ここは選手以外立ち入り禁止だし、仕方ないだろう。


 ちなみに、明蓮寺に水人形はつけていない。

 彼女も哉や牧田たちと一緒に行動しているからだ。


 午前中、明蓮寺がかなり無理してくれたおかげで、遠坂妹へのヘイトはかなり減ったと思う。

 俺が見ていた感じ、遠坂妹のイメージアップは成功だと思う。

 流石はクラスカースト上位勢。

 発言力が違う。


 明蓮寺の周囲の人間には大体伝え終わった。

 後は、勝手に話が広がるのを待つだけだ。


 だが、あまり早くは広まらないだろうな。

 人の悪い話は早く広がるが、いい話が広がるのは遅いのだ。

 遠坂妹には悪いが、これ以上はゆっくり待ってもらうしかない。


 彼女をいじめていた主犯連中の説得は終わったので、これからは遠坂妹への攻撃が治まることを望むばかりだ。


 明蓮寺には、本当によく頑張ってもらった。

 今度、何かお礼をしよう。

 俺の出来る範囲で、だがな。


 まぁそんなわけで、みんなは観客席に行ってしまった。

 俺は控室に一人だ。


 が、かといって寂しくはない。

 俺は一人の時も好きだ。

 落ち着けるのがいい。

 精神統一ってやつだな。

 試合前には大事だ。

 少なくとも俺は、大事だと思っている。


 この部屋からは、試合の様子が見えるようになっている。

 小さな窓がついていて、そこから見ることができるのだ。


 この窓、不思議なことに会場からは普通の壁に見えると言う。

 俺も、観客席から見たがどう見ても壁だった。

 それがこの部屋からだと窓に見える。


 仕組みはよく分からないが、どうせ何か都合のいい素材があるのだろう。

 もしくは魔道具とかそんなのだろう。

 ドキドキワクワクの化学ギミックとかでは無いんだろうな。

 化学は存在しているくせに、ほとんど能力頼りの世界なんだよなぁ

 まぁ、能力も十分にドキドキワクワクだけどね。


 いやいや、そんなことはどうでもいい。

 精神統一だ。


 相手は序列56位。

 正直俺の敵ではないが、油断は禁物。

 気を抜いているとやられるからな。


 俺はこの大会で、出来る限り能力を使わないで勝ち進みたいと考えている。

 なぜなら、俺自身も能力が分からない相手と戦うのはかなり怖いからだ。

 能力というのは一番の武器になる。

 それを隠している相手なんて、恐怖以外の何物でもないだろう。


 それに、俺の能力への対策もできない。

 能力を隠して勝ち進む利点は大きい。

 よって能力縛り。

 ピンチになるまで、能力を明かさないのだ。


 しかし、装備品は惜しみなく使う。

 左手に着けている、防御にも使えるという短剣。

 左の腰につけている巻き取り式ワイヤーの魔道具。

 左の二の腕に着けている神様からもらった紐の魔道具。


 それらを惜しみなく使って......

 あれ?

 俺の武器、左半身に寄り過ぎじゃないか?

 俺が右利きなので仕方がないとはいえ、左右でバランスが悪いのはかなり戦いにくいのでは......


 いやまぁ、大丈夫だろう。

 左に寄っていると言っても、重たいのは短剣だけだしな。

 他の二つは軽量。

 そんなに気にはならないだろう。


 っと、そんなことを考えていたら試合が終わった。

 次は俺の番だ。

 俺は控室を出てステージへ向かう。


 しかしこの大会、すんなりとはステージに出られない。

 なぜか。

 それは、一試合ごとに書類に記名しなければならないからだ。


 その書類には、『不慮の事故で命を落とした場合があります。同意しますか』と書かれている。

 その書類の「同意する」に丸をつけて記名しないと出場出来ないのだ。

 怖い怖い。


 俺は無理矢理出場させられているというのに、ひどいことだ。

 『対戦相手を殺してはいけない』というルールがあるとはいえ、死ぬことはある。

 俺はそんな大会に強制出場な訳だ。

 あの神様、狂ってるんじゃないか?


 それにしても、序列内100人がそんな大会に出るなんて、優勝すれば大概の夢は何でも叶えられるということはかなりの魅力なんだろうな。


 正直、こんな試合に宙を出場させたくなかった。

 死ぬ恐れがあるということをあらかじめ知っていたら、俺は宙の出場を許可しなかったと思う。

 万が一にも、宙を死なせたくなんてない。

 失敗したなぁ


 でもまぁ、いまさらそれを嘆いても仕方がない。

 宙の試合を見たところ、うちの妹はそこそこ強い。

 死ぬことはないだろう。

 頑張れよ、宙。お兄ちゃん応援するからな。


 あと哉についてだが、あいつも心配はいらないだろう。

 おそらくあいつはかなり強い。

 死ぬなんてことはないはずだ。


 ちなみに、この世界で殺されるということは珍しくないらしい。

 それを聞いた時はゾッとした。

 しかし、考えてみれば当然かもしれない。

 能力を持った人間が、法律のない世界に解き放たれればそうもなるだろう。

 仕方がないとは言わないが、必然的なのだろう。


 と、そんなこともあって、この書類にサインすることに抵抗がある奴は少ないのかもしれない。

 そう言う俺も、抵抗はない。

 俺の場合、一度死んでいるから次の世界とやらを期待しているのかもしれない。

 次があるという保証はないから、そういう考えは無くしていかなければ。

 それに、宙がいて友達もできたこの世界。

 そう簡単に手放す気は無い。

 全力で生き抜くつもりだ。


 死なないし死なせない。

 こんな大会で死んでたまるもんか。


 俺は決意高らかに記名して、前へと進む。

 ステージ前のゲートに、石で作られた小さな台座がある。

 一回戦で係員の人に怒られたのだが、ここに生徒証を置いて試合に出なければならないらしい。


 一回戦目、そんなことを知らなかった俺は生徒証を持って来ず、散々役員さんに怒られた。

 だってしょうがないじゃないか。知らなかったんだから。

 生徒証なんて、戦いの場には必要ないと思うだろ。


 でもまぁ、そんなことはもういい。

 二度同じことをしなければいいだけ。


 同じ失敗は繰り返さない。

 そうすれば係員さんにも怒られずに済むのだ。

 文句を言ってもしょうがない。

 早くステージに出るとしよう。


 俺は、生徒証を台座に置いて歩き出す。

 同時に、反対側から対戦相手が出てくる。

 男だ。

 一つ上の男子生徒。面識はない。


 彼は細身の筋肉質で、黒く日焼けした男性だ。

 サーフボードのような板を持っている。

 海のないこの異世界で、サーフボードなんて売ってんだな。

 びっくりだよ。

 もしかすると特注なのかもしれないな。


 彼の能力は確か『水操』という能力だった気がする。

 俺と同じ能力のようで、少し違う。


 どこが違うかは、戦っていればわかるだろう。

 だが、多少なりとも俺の能力とは違うはずだ。

 この世界の仕組みによると、全く同じ能力ではないはずだ。

 一体どこが違うのか、戦いの中で見つけるとしよう。



『試合、開始!』


 そのアナウンスに続いた笛の音で、戦闘が開始される。


 サーフボードと水を操る能力。

 予想できる行動パターンは一つだな。


 試合開始の合図が鳴った刹那、男は俺が予想した通りの行動をとる。


 その男の後ろに水の塊が作り出され、彼を飲みこむように流れ始める。

 そこに男はサーフボードを置き、華麗に飛び乗り動き出す。

 その水流はさながら彼だけを襲う波のようで、彼はその波に乗るサーファーだ。


 その戦闘スタイルは面白い。

 上手く波に乗れば通常よりも速いスピードが出るし、彼の周囲1mは波があって近寄りにくい。

 バランスさえ崩さなければ、彼には得しかないわけだ。


 だが残念。

 相手が悪かった。

 俺に当たらなければ、彼は順調に序列を上げられたことだろう。

 悪いな。


 俺を波に飲み込ませようと俺に向かってくるそいつに向かって、俺は走り出す。

 そして波に飲み込まれる寸前。

 俺は右足踏切で、体を斜めにして飛躍。

 そのまま体を回転させ、踏み切った右足で男の厚い胸板に蹴りを入れる。


 波という不安定な場所に立っていた男は、簡単にバランスを崩して飛んでいく。

 蹴りと同時に向かい来る波を回避した俺は、彼を蹴飛ばした右足で着地する。


 蹴り飛ばされ、ゴロゴロと転がり終わった彼は体を起こそうとする。

 させない。


 俺は着地した刹那、地を蹴って走り出す。

 彼との間合いを一瞬で詰め、左腕に装備していた短剣を抜いて彼に突きつける。


「......」


 一瞬のうちに蹴られ短剣を突きつけられた彼は、目を丸くして驚愕の表情を浮かべる。

 そして事態を十分に飲み込んだ後、彼は大人しく両手を挙げた。


『ゲームセット!』


 アナウンスにより、試合の決着が告げられた。


『いやー、佐々木選手

 先程の試合に続き能力を使わずに瞬殺

 お見事ですね』

『そうですね

 一部では、あの早業こそが彼の能力だという噂も出ていますが、実際のところはどうなのでしょうか

 今後の活躍に期待ですね』


 アナウンサーもとい放送部が、さっきの試合について好き勝手話している。

 その的はずれな噂話を聞きながら、退場するため歩き出す。

 台座に置いていた生徒証を取り、フィールドを後にする。


 みんな、俺の運動神経を能力だと勘違いしている訳か。

 なら、次の試合からは少し動きにくくなるかもな。

 それは少し困る。


 でもまぁ、そこは相手の想定を上回ればいいだけ。

 そうは言っても、相手の想定を上回るというのは難しい。

 次回からの試合は、少し苦労するかもな。


 ていうかあのアナウンサー、「期待ですね」とか言わないでほしい。

 緊張しちゃうじゃないか。

 もしかしてあのアナウンサー、俺の敵なのか。

 放送部からやっつけた方がいいだろうが。

 なんてね。


 きっと偶然。

 どうやら俺は優勝候補筆頭なので、その期待も仕方ないことなのかもしれない。

 でも、それでも、期待を口に出さないでほしい。

 俺のパフォーマンスに影響が出ちゃうかもだろ。


 まったくもう。

 胃が痛くなりそうだぜ。


 緊張から来る胃の痛みに、治癒魔法陣は効果があるのだろうか。

 後で使ってみよう。


 いや、それとももっと別の方法がいいだろうか。

 手のひらに『人』って書いて飲み込むみたいなやつ。

 少し古典的すぎるか。

 でも、それくらい古典的でおまじない的なものほど、緊張というやつには効くかもしれない。


 治癒魔法陣は、俺の知りうる限りのおまじないを済ませた後にしよう。

 緊張をほぐすおまじない、他に何があったっけな。

 確か、大丈夫と書いた折り紙で鶴を折って右か左の手で持つやつとか、何かの花の名前を何回か唱えるとかいうやつ。

 あといくつかあった気がする。


 どれも不確かな記憶だな。

 記憶も不確かなら、噂の信憑性も薄い。

 結局俺は何も出来ない。


 治癒魔法陣もタダではないし、やっぱり自力で何とかしよう。

 うちもお金持ちではない。

 そんな簡単には魔法陣を買い集められないのだ。

 緊張で胃が痛いと言うくらいで、ポンポン使ってはいられない。


 まぁ、能力部組と牧田といれば緊張も収まるだろう。

 みんなといれば大丈夫ってやつだ。


 今日の俺の試合は終わり。

 哉と宙の試合も今日は一回だけだし、後はあいつらとワイワイするだけだな。

 思えば、今日これから緊張する理由なんてないのだ。

 第一、今日の試合はほとんど終わったようなものだしな。

 確かあと、2・3戦。

 それが終われば帰れるのだ。


 そう思えば、胃の痛みも治まってくる。

 さっきの話の続きをしようではないか。

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