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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第六章 『闘校祭』
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第五十四話 『闘校祭2』

 あの後、俺がからかわれることはあまりなかった。

 牧田も、四六時中俺をからかってるわけではないので、一旦引いてくれた。

 俺のからかわれラッシュは退いた。

 やったね。


 てなわけで、次はインタビュータイムだ。

 哉を探すのはその後。

 どんなインタビューが来るのだろうか。


 若干の不安を残し、インタビューが始まった。


「今大会の意気込みは?」


 おぉ、思っていたよりも普通な質問。

 ありきたりなインタビューだ。

 変なインタビューじゃなくてよかった。


 でも、意気込みか。

 改めて考えると難しいな。

 うーん......


「まぁ、目指すは優勝だな」


 と、ありきたりな質問に、ありきたりな回答を返す。

 お決まりみたいな流れだ。

 インタビューでは、軽いジャブ的存在なんだろう。


 次の質問だ。


「警戒している人はいる?」


 これは、『いる・いない』で答えるべきなのだろうか。

 それとも、誰を警戒しているのかを言わなければいけないのか。

 どっちなのだろうか。


 いや、どっちかにする必要なんてないんじゃないのか。

 『いる・いない』を答えた後で、いる場合はその人を言えばいいんじゃなかろうか。


 『いる・いない』とぶっきらぼうに言うより、その後になにか付け足した方が印象がいいってもんじゃないか。

 まぁ、牧田相手に印象なんて気にする必要はないと思うが。


「いる

 俺が警戒しているのは哉だな

 あいつは多分強い

 何も無けければ、上位まで上がってくるのはまず間違いないだろう」

「序列1位は警戒していないの?」


 と牧田が聞いてくる。

 確かに、序列1位の奴も警戒するべきではあるんだが......


「俺はまだそいつの試合を見ていないからな

 警戒するべきなのかは、まだ分からない」


 俺の返答を、牧田は「へー」とか「ふーん」とか言って適当に相槌を打ちながらメモを取っている。

 すごく前のめりだ。

 前傾姿勢でメモを取っている。


「それでそれで」


 牧田は、話を掘り下げてくる。

 やめて欲しい。

 そんなに掘っても何も出ないぞ。


「え、えっと......

 序列1位奴はAブロックだから、Bの俺とは当たっても決勝だろうな」


 そもそも、哉もAブロックだから、その序列1位とやらは哉にやられるだろう。

 決勝ですら会わないわけだ。

 まぁ、哉がやられる可能性もないことは無いがな。


「ほう

 カケは、決勝進出確定だと

 随分な自信だね」


 そう言って、牧田はメモにペンを走らせる。

 そういう、言葉の揚げ足を取って記事にしているあたり、ジャーナリスト感を感じる。


「事前に、君に質問したいことをアンケートしてたから、次はその中から抜粋して質問していくね」

「お、おう......」


 おい、ちょっと待て。

 一応「おう」とは言ったが、事態が飲み込めない。

 事前に、なんだって?

 俺についてのアンケートがどうやらって聞こえた気がする。


 俺、知らないんですけど。

 いつの間にアンケートなんてしてたんだ。

 しかも俺に無許可で。

 本人の了承はちゃんと得ましょう。


 これ、社会の常識だよ。

 まぁ、俺が常識を語っても説得力なんてないし、これがこの世界の常識なのかも分からないが、少なくとも俺の中では常識だ。


 とはいえ、「俺にとってはそれが常識なんだから、それに従え」なんて、無理難題を言うつもりは無い。

 俺個人の感想ってだけだ。


 だってあれじゃん。

 そんなの自己中じゃん。

 「俺を中心に世界が回ってるぜ」的なやつじゃん。

 俺はそんな自己中じゃない......と思う。


 ていうかそもそも、「俺を中心に世界が回ってる」なんて人任せすぎるだろ。

 何勝手に回らせてんだよ。

 どうせ自分を中心に世界が回るなら自分で回せよ。

 それこそが自己中ってやつだろ。


「まず初めに、好きな食べ物はなんですか」


 と、牧田は俺の心情など気にもせずにインタビューを再開した。


 心の中うるさい系男子は、いくら心の中で騒いでいようが何も言われないのだ。

 ちょっと寂しいね。


 そんなことはどうでもいい。

 今はインタビューだ。

 民衆の質問に、耳を傾けなくては。


 なになに、俺の好きな食べ物だって。

 ......は?

 なんだよそれ。

 闘校祭関係ないじゃないかよ。

 てか、俺の食べ物なんて聞いてなんになるんだよ。

 誰得情報なんだ。


「好きな食べ物?」

「うん、好きな食べ物

 結構多かったんだよ。この手の質問

 みんな、君に食べ物を恵んでくれようとしてるんだよ

 良かったね」


 んなわけねぇ〜


 俺に食べ物を恵んでくれようと、だって?

 そんなわけないだろ。

 俺は食いしん坊キャラじゃない。


 この質問、絶対適当に入れたヤツだろ。

 好きな食べ物なんて、王道も王道。

 ド定番の質問だ。

 困ったらこれ聞いとけばいいだろ、みたいな質問。

 質問する内容に困ったやつが、適当に書いて入れたヤツに違いない。


 無理に質問を絞り出すくらいなら入れるなよな。

 ていうか、好きな食べ物か......

 あまり思いつかないな。

 適当に言っておくか。


「ミカンかな」

「ほうほう」


 牧田は、これもメモする。

 こんなくだらないことまでメモしなきゃいけないなんて、新聞部も大変だな。

 同情するよ。


「じゃぁ、次の質問

 好きな人はいますか」

「神園宙」

「そうだね。じゃぁ、次の質問」


 牧田はメモも取らずに、次の質問に行こうとする。


 おいおい、ちょっと待てよ。

 もう少し語ろうよ。

 どうして宙が好きなのかとか、宙のどこが好きなのかとか。

 この話題だったら、何時まででも話せるぞ。

 もっと宙について話そうよ。


「強さの秘訣はなんですか」


 そう言う牧田の表情は、いち早く面倒な話を切り上げたいといった感じだ。

 面倒な話に首を突っ込んでしまった、みたいな顔をしている。

 やっぱり、俺の妹愛は他人からすると面倒臭いらしい。


 俺が、北方紳を崇めすぎている奴を面倒だと思うのと一緒だろうか。

 一緒ではないにしろ、似たような感じなんだろうな。

 そう思うと、なんだか申し訳ない。


 次の質問に答えるとしよう。


 強さの秘訣、か......

 ようやく、闘校祭に少し関係のある質問が来たな。


「毎日コツコツ練習することだな」


 とりあえず、それっぽいことを言っておこう。

 別に間違ってはいないし、これでいいだろう。


「おっけー

 これでインタビューは終わり

 協力ありがとう」


 と、牧田は笑顔でそう言った。


 爽やかイケメンの、爽やかスマイルだ。

 もし俺が女の子だったら、イチコロだろう。


「あ、あともう一つ聞きたいことがあるんだけど」


 牧田は、忘れていた最後の質問を思い出した。

 さてさてなんだろうか。

 答えにくいものじゃなければいいんだが。


「なんだ?」


 答えにくいではなく、答えたくない質問かもしれない。

 少し心構えをしておこう。

 まぁ、答えたくないなら答えなければいいだけだが。


「カケって、何人いるの?」


 あーそれね、その事ね。

 質問の意図が一瞬で理解できた。

 俺にしては、かなり早い理解だ。


 つまりは、あれだ。

 俺のコピーが、誰かに見られたわけだ。

 コピーだけ見られただけではなく、本体にもあったのだろう。


 まぁ、当然だ。

 これだけ大勢の人がいるんだ。

 一人や二人、俺が複数人いるのに気付いたって不思議じゃない。


 あっちで会った俺に、こっちでも会うのだ。

 そりゃあ気づくだろう。

 どっちの俺も、人目を気にして歩いている訳ではないからな。


「今のところは二人だ」


 そう、今のところは二人。

 まだ、増やそうと思えば増やすことが出来る。

 多くてあと三、四体だがな。

 それ以上はしんどい。


 戦いに支障が出るなんてもんじゃない。

 通常生活に支障がでる。

 日常会話で嘔吐してしまう。


 どんなもの好きだって、人の吐瀉物を見ながら会話したい人はいないだろう。

 俺だって嫌だ。

 自分だろうと関係ない。

 見たくないし、見られたくない。


「カケは、コピー系の能力なの?」


 と、牧田は追加で質問して来た。


「お前、知らなかったのか!?」


 俺は、牧田のその態度に驚愕した。

 まさかこの情報収集オバケが、俺の能力を知らないなんて思ってもいなかった。

 どうせ、俺の知らないところで情報を集めているものだとばかり。


「カケの能力は、調査しようと思ったんだけど全然情報が出てこないんだよ

 結構調べたけど出てこなかった

 僕も、なんでも知っているわけじゃないんだよ」


 俺の驚いた反応に、牧田は少しむくれてそう返した。

 悔しそうだ。


 思えば俺は、家の庭(早朝)とバイト以外で能力を発動したことはほとんどない。

 ついさっき、闘技場のトイレで明蓮寺のために水人形を作ったのが、外で能力を発動した初めてかもしれない。

 そりゃあ、俺の能力を知らなくても当然だろう。

 むしろ知っていた方が怖い。


「俺の能力はコピーじゃない

 でも、ここでは言わない

 闘校祭が終わったら教えよう

 まぁ、俺の試合を見てたら分かるかもだけど」


 敵には、あまり情報を与えない方がいいだろうからな。

 情報の量が、勝敗を分けると言っても過言ではないからな。

 とは言っても、牧田は敵ではないんだがな。


「そんなことしなくても、誰かに言ったりはしないのに

 僕はあまり信用されてないのかな」


 と、牧田は悲しんでいるような笑っているような、そんな表情でそう言った。


「別に、お前を信用していないわけじゃない

 どこに耳があるか分からないからな

 壁に耳あり障子に目あり、ってやつだ」


 とりあえず弁明。

 こんなことで、牧田との距離を作りたくない。


「分かってるよ」


 どうやら、初めから分かっていたようだ。

 俺の能力以外は何でも知っているみたいな感じだろうか。

 いや、意外と他のことも知らないことがあるんだろうな。


 牧田の情報収集能力は凄まじいものだが、やはり限界があるのだろう。

 何でもかんでも知ってるわけではない。

 彼は全知の神ではないのだ。

 しょうがない。


「じゃぁ、カヅを探そう」

「そうだな」


 てなわけで哉捜索。

 あいつは何処にいるのだろうか。

 あいつはAブロックで試合をしていたから、もしかするともう一方の闘技場にいるのかもしれない。


 俺たちがいるのはBブロック会場。

 Aブロック会場までは少しあるが、そっちに行ってみよう。


 俺は歩き出す。

 牧田も、同じことを考えたのだろう。

 牧田は、何も言っていないのにも関わらず、俺と同時にAブロック会場へと歩き出した。


 今の、すごい息が合ってたみたいだった。

 こういう、何も言っていないのに相手の思ってることがわかる的なやつ。

 お互いの行動を予測して同時に行動する的なやつ。

 俺、結構憧れてたんだよね。

 もう一回やろうよ。


 無論、もう一回なんてやらないし、「もう一回やろうよ!」なんて言わない。

 いくら憧れてたとはいえ何度もするのは面倒だ。

 今は何もせず、大人しく哉を探そうじゃないか。

 こういうことは、いつでもできるしな。



 ---



 てなわけで、哉を探し始めたのだが、思っていたよりも早く見つけることができた。

 遠坂姉妹と一緒に、AとBの会場のちょうど真ん中あたりを歩いていたのだ。

 哉を見つけた後は遠坂姉妹を探そうと思っていたのでちょうどいい。

 手間が省けたってもんだ。


 哉らは、B会場方向に向かって歩いていた。

 どうやら、哉たちは俺ら側に向かっていたようだ。

 入れ違いにならなくてよかった。


 やっぱり、集合場所的なのを決めて置けばよかったかな。

 そうすれば、こうしてすれ違いそうになる危険はなかったわけだしな。

 あとで、そういうのも決めておこう。



 さて、こうして俺たちが集まろうとしていたのには理由がある。

 それは、昼食をとるためだ。

 この大会が始まる前、みんなでお昼を食べようと約束していた。


 まぁ、食べる場所も考えていなかったためこうなっているんだが。

 自分でも馬鹿だと思う。

 集合場所は決めてなくても、食べる場所くらい決めておくべきだった。

 そうすれば、自然にみんなが集まりそうだったしな。

 明日からはそうしよう。

 明日、みんなで昼食を食べるかは分からないが。


 もうそろそろ、お昼時。

 まだ少しだけ早いが、俺と哉の試合が午後からあるので早めに食べる事となった。

 お腹がいっぱいで動けない、なんてことになったら間抜けすぎる。

 そうならないために早めに食うのだ。

 おそらく、他の出場選手も同じようなことをしているだろうな。


「何処で食う?」


 そう言ったのは哉だった。


「人がいない所だったら何処でもいいわ」


 遠坂姉のその意見は、簡単なようで難しいものだった。

 外部からも観客が来ている今日、人気のない場所を探すのはかなり難しいと思う。

 使われてない教室を使えばいいと思うかもしれないが、今大会中は校舎内が使えないのだ。

 二つの闘技場と食堂、校庭くらいは開放されているのだが、そこで人気のない場所を探すなんて難しい。


「闘技場と反対側の校舎裏とかか?」


 自分でそうは言ったが、正直グレーゾーンな気がする。


 校庭が開放されているとはいえ、基本的には中にはくらいまでだと言われている。

 基本的には。校舎内とは違って禁止はされてない。

 故にグレーゾーン。

 行っていいのか悪いのか分からない。


 どうしたものかな。

 俺の判断に困る発言に、この場の全員が頭を抱えた。


「とりあえず、穂香ちゃんを探すわよ」


 遠坂姉はそう言った。

 それに他の皆も同意して、明蓮寺を探して歩き始めた。

 が、


「いや、探さなくていい

 俺が連れてくるよ」


 俺がみんなを止めた。


 水人形を明蓮寺にべったり付かせている俺は、彼女がどこにいるのかも分かるし、遠くにいる彼女と会話をすることだってできる。

 それで明蓮寺を呼びつつ、俺たちも向かえばいい。

 それだけだ。

 むしろ、それが最善の手だろう。

 効率的だ。


「そうだね」


 と、同意したのは牧田だけ。

 他の三人はキョトンとしている。


 それもそうだろう。

 俺のコピーが明蓮寺と一緒にいることを知っているのは、今この場で牧田だけなのだから。

 他の三人の心情は、「皆で行けばいいのに......」みたいな感じだろう。

 そんな顔している。


「まぁまぁ、俺に任せろって

 大船に乗ったつもりでいてくれ」

「大船?笑わせてくれるわね

 あなたの船なんて、恐ろしくて乗れたもんじゃないわ

 乗るのは勝手だけど、一人で乗りなさい」


 俺の自信満々やる気宣言もとい意思表明は、遠坂姉の言葉によって完全にへし折られた。

 お前らがそんなだと、コピーについて説明する気すら無くなってしまう。


「はぁ......」


 思わず漏れたため息が空を切る。


「おねぇちゃん、言い過ぎだよ

 先輩は頼れる人だよ」


 そう言ってくれるのは、妹の方だ。

 本当にちぐはぐな姉妹。

 無口で優しい、小さくかわいい女の子ユキちゃん。

 この姉とは違い、妹の方は優しいな。


「そうだぞ小夏

 言い過ぎだぞ」

「ユキに言われるのはいいけど、あなたに言われるのは癪ね」


 俺が、遠坂妹の言葉に便乗して調子に乗ったことを言ったのに対し、姉はいつも通りの調子で返してくる。

 そういうとこですよ、小夏さん。

 以後、気をつけてくださいね。俺が傷つきます。


 まぁいいや。

 とりあえず、明蓮寺を呼ぼう。


 俺は水人形を使って、明蓮寺に話しかける。


----------------


「今からご飯食べるから、みんなのところ行こうぜ」


 俺(コピー)は、前を歩く明蓮寺に声をかける。


 午前中、俺は明蓮寺の後ろを付いて回っていた。

 傍から見れば、情熱的な追っかけだろう。

 明蓮寺にもファンは多そうだから、恨みを買いたくないな。


 学校のマドンナに近ずき過ぎると、ファンクラブの奴らに抑制されるなんて、学園モノのお決まりだ。

 最悪、手足を縛られて監禁されるというアレだ。

 監禁されるなんて冗談じゃない。


 でも、明蓮寺には付いておかないとだしなぁ

 八方塞がりだ。

 俺には、ファンクラブの奴らに監禁されるしか道は無いのだろうか。

 出来るならば回避したいですな。


 いや、今はそんなことはどうでもいい。

 とりあえずは、明蓮寺を連れて行こう。


「皆で食べるんですか?」


 と、明蓮寺は少し不満げな表情を見せる。

 何が不満なんだろう。

 みんなで食べるのは結構楽しぞ。

 おかずは取られちゃうけどね。


「二人っきりで食べないんですね

 その時は、デザートはわた―――」

「じゃぁ、みんなの所に行くぞ」


 俺は、明蓮寺の言葉を途中で止める。


「......はい」


 俺に言葉を止められた明蓮寺は、肩を落として悲しそうに返事をした。


 そんなに悲しそうにしないでほしい。

 なんか申し訳なくなっちゃうだろ。

 いやほんと、途中で遮ってごめんなさい。

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