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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第六章 『闘校祭』
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第五十三話 『闘校祭1』

 俺(コピー)は、明蓮寺にああ言ったが、あれは嘘だ。

 明蓮寺が遠慮しないように言ったことだ。


 前にも言ったが、水人形の意識は本体に重複される。

 それぞれが独立した意識を持っているわけではない。

 二人分の五感が重なるのだ。

 それを一つの頭で制御する。


 普通なら結構辛い。

 正直、いつも通りに行動することは難しい。


 が、俺にかかればどうってことない。

 毎朝、三体の水人形を動かしつつ自分も戦っている。

 水人形一体を動かすくらい、大きな問題ではない。

 序列50位以下くらいならどうにかなるだろう。


 実際、俺も既に一戦を終えたがさほど苦労はしなかった。

 まぁ、そいつが弱かったってだけだが。


 火でできた大きな剣を振り回しているだけの奴だった。

 当たっても致命傷にはならないし、第一、うっかり当たれるほどの剣速でもない。

 俺はあれに負けるほど弱くないのだ。


 一瞬で差を詰め一発腹にねじ込んだらくたばった。

 言ってしまえば瞬殺。

 語るまでもない。


 ちなみに、哉の初戦もそんな感じだった。

 語るまでもない。


 てなわけで話を変えるが、今俺は牧田と一緒に宙の試合を見ている。

 遠坂姉妹はどこかに行ってしまった。

 それも仕方ないだろう。

 彼女らは宙が俺の妹であることを知らない。

 他人そのものなのだ。


 興味のない試合など、見る気にはならない。

 宙が俺の妹だと知っているのは、俺の知り合いだと男子軍だけ。

 哉はどこにいるか分からないし、女子軍は宙を知らない。


 そうすると、必然的に俺と牧田だけが残る。


「お前、なんで遠坂たちに宙の事言っていないんだ?」


 どうでもいい話なのだが、こいつがどうしてあいつらに言っていないかが気になってしまった。

 あの牧田なのだから、面白半分で言っていてもおかしくはないと思うのだが。


「だって、今それを言っても面白くなさそうだしね

 むしろ言わない方が、後々面白くなりそう」


 牧田のニヤニヤが止まらない。

 俺のニヤニヤは気持ち悪いかもしれないが、イケメン牧田のニヤニヤはファンが付きそうだ。


 ちなみに、今の牧田の片目は黄金色に輝いている。

 俗に言うオッドアイだ。

 まぁ、一時的なものだが。


 というか、面白くなりそうってなんだよ。

 その面白いっての、絶対俺だけは面白くないだろ。

 嫌な予感がするぞ。


「まぁ、その場に僕がいないと面白くないけどね」


 相変わらずニヤついている牧田の顔は、今の俺には悪魔にも見える。

 小悪魔イケメン的な。

 これまた、ファンの付きそうな属性だな。


 俺は苦笑いを零す。


 ちなみに、牧田は俺と話してはいるが俺の方は見ていない。

 試合の様子を、能力を使って海馬に焼き付けている。

 そっぽを向いて、ニヤニヤと。

 人によっては不気味とも思えるんじゃないか。

 俺は、これが普通だと知っているから不気味でも何でもないが。


 そう言う俺も、牧田の方は関節視野でしか見ていない。

 俺も牧田と同様、試合の様子を海馬に焼き付けている。


 とは言っても、目的は違う。

 牧田は新聞の記事にするため。

 俺はかわいい妹の姿を覚えておくため。


 宙はかわいいからな。

 お兄ちゃんである俺は、宙の姿を見届ける義務がある。

 と、俺は勝手に思っている。


 心なしか、観客も少しだけ多い気がする。

 宙にメロメロな男子共か?えぇ?

 残念だが、そんじょそこらの奴に宙はやらんぞ

 最低限、宙と俺が認めた相手でなければ。


 やっぱり、宙にもファンがいるんだな。

 ファンクラブとかもあるんじゃないのか。

 宙はかわいいからな。

 仕方がないだろう。

 だが、節度ってものを守れよ。

 守れていなければ、お兄ちゃんが出動するからな。


 と、そんなことを俺が考えている間に繰り広げられている試合は、圧倒的に宙の優勢だ。

 序列23位である宙と、95位である対戦相手の戦いなので差はあるとはいえ、それでも優勢だ。


 宙の戦い方は、俺のと似ている。

 カウンターを基本とした戦闘スタイルで、たまに自分からも攻撃する。

 そういったものだ。

 毎朝俺の訓練を見ているので、似てくるのも頷ける。


 強さはというと、哉ほどではないにしろ宙もなかなかやるようだ。

 俺が想像していたよりもはるかに強い。


 強くなったな、宙。

 お兄ちゃん嬉しいよ。


 で、その宙にボコボコにされているのは宙と同学年の男。

 能力はおそらく『植生』植物を操る的なやつだ。


 能力を惜しみなく使う彼は、能力を使っていない宙に為す術もない様子だ。

 植物を使って繰り出す攻撃はひらりと躱され、カウンターを返されている。


 木製の短剣でポコポコと地道にダメージを与えている宙は、可愛らしさの中にかっこよさがあって、なんとも言えない良さがある。

 最高である。

 お兄ちゃんでなければギャップ萌え間違え無しだ。


 宙の戦いを見ている男子共は、目をハートにして萌え萌えしてるに違いない。

 宙はかわいいので仕方ない。

 萌え萌えだけなら許そう。

 手を出そうものなら、問答無用で成敗だ。


 塵も積もれば山となる。

 そんなポコポコとした可愛らしい攻撃も、受け続ければ大きなダメージとなる。

 宙の勝ちだ。


「勝ったね

 流石君の妹さんだ」

「そうだろう、そうだろう

 ウチの妹は最高にかわいいからな」


 と、俺の返答に牧田は苦笑い。

 そりゃあ、仕方ないだろう。

 だって、そうだろう。

 話かみ合ってないもん。


 勝利と可愛さは関係ないだろう。

 その上、妹自慢。しかも可愛さの。

 妹愛爆発兄さんである。


 苦笑いもしたくなるだろう。


「そうだね

 君はそういう奴だったね

 君の妹はかわいいと思うよ」


 と、牧田は呆れたように言う。

 だよなだよな。

 うんうん。


「お前、宙のこと狙ってんの

 いくらイケメンのお前でも、認めないぞ」


 こいつはドはつかないにしろS。

 宙が心配になってしまう。


「君、妹のことになると面倒くさくなるよね」

「......ごめん」


 牧田の言うことはごもっともである。

 俺も、妹のことになると面倒くさくなるのは自覚している。

 反省しないとな。


「まぁ、妹思いなのは君のいい所だと思うよ

 でも、妹さんを束縛してはいけないよ」


 ごもっともであります。


「ありがとう」


 なぜかは分からないが、感謝の言葉が飛び出した。

 ありがとう、牧田。

 ためになります。



 と、知らぬうちに兄の暑苦しい愛を浴びせられている宙は、歓声の中会場から退場している。

 宙は大人気なんだな。


「カケ、次の試合はどうするの?」


 牧田は、俺にそう問いかけてきた。

 その牧田の顔には、さっきまでの面倒臭そうな表情はない。

 俺はその様子に少し安心する。


 俺の面倒臭さに、愛想をつかされたのかと不安になっていたところだ。

 一安心だ。

 けど、これからも気をつけないとな。


 俺が妹妹言っていると、いつか愛想つかされるかもしれない。

 頑張って妹愛を抑えなければ。


 で、この後はどうするかだったな。


「宙に会いに行って、哉を探して遠坂姉妹と合流って感じかな」


 まずは宙に会いに行かなければ。

 妹愛を抑えなければいけないとはいえ、宙に「お疲れ」と「おめでとう」は言いたい。


「じゃぁ、僕もそれについていっていい?」

「いいよ?」


 なぜ、ついて来るのに許可がいるのか分からない。

 いつも勝手についてきているじゃないか。

 勝手に、と言うよりも知らぬ間に。


 異常なまでのステレス性を持っている牧田は、俺であっても近寄られるまで分からない。

 気付いたらそこにいるのだ。

 この学校の新聞部は、みんなそうなのか。

 それとも、牧田にはそうゆう才能があるだけなのか。


 うちの学校の七不思議かもしれない。

 『忍び寄るイケメン』、みたいな。


 この学校に、七不思議ってあるのだろうか。

 今度、牧田に聞いてみよう。


「試合の写真撮影はいいのか?」


 七不思議について聞くのはまた今度でいい。

 今は今のことを聞こうじゃないか。


 牧田は新聞部。

 試合をカメラに収めるので忙しいはずだが、俺に着いてきてもいいのだろうか。


「新聞部も何人かいるからね

 ふたつの闘技場に一人づつでいいんだよ

 10試合毎に交代なんだ」


 ちなみに今は10試合目が終わったところ。

 ちょうど牧田の交代のタイミングなのだ。


「そうなのか

 ちゃんと休みもあるんだな」

「君は新聞部を、どんなブラック企業だと思ってるんだ」


 別に、ブラック企業だとは思っていない。

 ただ、この闘校祭が行われる一週間、ずっと試合の撮影をしなければいけないのだと思っていた。

 それだけだ。


 とまぁ、そんな話をしてから宙のもとへ行った。

 結論から言おう。

 宙に会うことができなかった。

 宙には、俺が思っていた以上のファンがいたのだ。


 どうせ、宙を好きな奴らは結構いるだろうとは思っていたが、まさかここまでとは......

 この学校で宙の噂を全く聞かなかったので、最近では宙にファンがいるとしても多くはないのだろうと若干諦めムードになっていた。


 が、その予想は大ハズレ。

 俺の耳に、噂が届いてないだけだった。

 宙には、たくさんのファンがいた。

 ホッとして良いのか悪いのか。


 宙の可愛さが証明されたことには安心だが、お兄ちゃんとしては心配だ。

 あの男どもが何かしでかさないか、不安で不安でしょうがない。

 今大会中に釘を刺しておくとしよう。


 でだ。

 そのファンたちが、宙を出待ちしてせいで俺が宙に近づけなかったのだ。

 宙に会おうとその集団を押しのけて前に出ようとする俺は、まるでファンクラブの一員のようだった。


 それにしても、意外なことにそのファンクラブは統制がとれていた。

 前列の方は座って、後ろの人にも見えるようにと配慮していた。

 サインなどを強請るでもなく、ただただ見ていた。

 見ることこそが俺たちの目的だと言わんばかりの落ち着きようだ。


 そこを切り裂くようにして進もうとする俺は、迷惑な奴といった感じだった。

 なんだか申し訳ない。


 そんな時、宙のもとに女生徒が4人集まって来た。

 宙は、その女生徒たちと楽しく話し始めた。

 お友達だろうか。

 いつも宙と遊んで頂き、ありがとうございます。


 というか、宙の友達レベルたけぇ......

 宙の所に来た女生徒は4人とも美系だった。

 宙を含めたおの5人は、まるでアイドルグループみたいだ。

 きっと彼女らは、わが校自慢のアイドル的集団なんだろう。


 どうして俺は、そのアイドル的集団の一員である宙の噂を知らないのか。

 俺の情報収集能力、欠落していないか。


 それにしても、最近の学生は美男美女が多いな。

 もう、怖いまである。


 まぁそんな感じで、宙に合うことができなかった俺がトボトボと出てくるの見た牧田は、「ほんと、君はシスコンだよね」と笑いながら言った。

 シスコンで何が悪い。

 シスコンは愛の結晶体だぞ。


 無論、そんなことは口に出すはずもなく心に留める。


「じゃぁ、哉を探すか」


 宙に会えなかった俺は、気持ちを切り替えて哉を探そうとする。

 俺は歩き始める。

 のだが、


「その前に、ちょっと君にインタビューしてもいい?」


 牧田がそう言ってきた。

 インタビュー?

 俺に?


 まさかあれか。

 出場者全員にインタビューしてるとか。

 新聞部は大変だな。


「ご苦労さんだな」


 俺は牧田の肩に手を当てて、同情するようにそう言った。

 が、それに対して、牧田は不思議そうな顔をした。

 俺もその牧田の表情に首をかしげる。


「出場者全員にインタビューとか大変だろ?」

「そんな訳なんだろ?」


 そんな訳ないのか?

 じゃぁ、なんなんだ。

 興味本位だろうか。


「君は優勝候補者だからね。」


 俺、優勝候補者なのか。

 それはなんだか嬉しいな。


「しかも君、筆頭と言っても差し支えないほどの期待されてるよ」


 牧田はそう言ってニヤついた。


「期待とか言うなよ

 胃に穴が開いちゃうだろ」


 期待されたら緊張しちゃう。

 俺、人から期待されるの慣れてないんだよ。

 ほんと、俺に期待するのはやめて欲しいものだ。


「君は前に大暴れしちゃったからね

 序列1位に並んで優勝候補だ」


 と、またも牧田はニヤついている。

 俺の緊張を煽るなよ。

 「序列1位と並んで」なんて、そんなこと言わないでくれ。

 うっ、さらに胃が......


 ん?


「大暴れってなんだよ

 俺、そんなに暴れてないだろ」


 暴れてないと思うんだけどなぁ

 俺の記憶にないだけだろうか。

 無意識のうちに、何かしたのか。


 まさか、俺は二重人格......

 なんてことは流石に無いだろう。


 じゃぁ、なんなのだろうか。

 酔っ払い?

 いやいや、それもないだろう。


 微妙にグレている俺だが、酒は飲んだことはない。

 酔っ払うなんてありえないのだ。


「いやいや、暴れてたよ。噂になってたもん

 元序列5位をボコボコにして土下座までさせたっていう」


 あぁ、あのことか。

 なんか話が事実と微妙に違くないか。

 三上をボコボコにしたのは確かだが、


「土下座はさせてないぞ。あいつが勝手にしてきたんだ」


 そう、俺はさせてない。三上が勝手にしただけだ。

 そこは弁明させてもらおう。


「知ってるよ」

「知ってんのかよ」


 牧田はニコニコしている。

 こいつ......


 もしかしなくとも、俺で遊んでやがるな。

 俺が弁明しようと焦っているのを見てて楽しんでいたわけだな。

 なんてやつだ。


 俺はMではないが、Mの気持ちも分からくはない。

 のだが、それは女の子相手の話。

 いくらイケメンでも、男の子はちょっと専門外だ。


 牧田の一言一言に、満遍なく反応している俺を見て、牧田は静かに笑っている。

 俺にバレないように、そっぽを向いて笑っている。


 ほんと、楽しそうだなこいつ。

 新聞を作ることと、俺をからかうことを生き甲斐にしてるんじゃないかと疑ってしまうほど楽しそうだ。


 俺も今度、牧田をからかってみようかしら。

 でもどうやって?

 『俺にからかわれている牧田』というビジョンが見えない。

 それはもう微塵も。


 そもそも、牧田をからかったところで、いい反応をしてくれる気がしない。

 からかわれていることに気づかなさそうだ。

 こいつ、基本的にはニコニコしているからな。


 俺には、からかわれるしか道は無いのか。

 俺も牧田で遊びたいんだが、俺が遊ばれてばっかりだ。

 俺がからかうのが下手なのか、牧田がからかうのが上手いのか。

 多分、両方だろうな。


 あれだ、からかい上手の牧田さん、みたいな感じだ。

 悲しいな。

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