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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第六章 『闘校祭』
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第四十八話 『神様の願い事』

「とまぁこんな感じで、闘校祭に出ることになりました」


 神様と別れた後、俺は闘校祭に出なければいけなくなった経緯を哉や牧田に話した。

 優勝しなければいかないことを隠して。

 いくら家が無くなるからと言って、哉に手を抜いてもらって優勝なんて嫌だからな。

 戦うなら本気で来て欲しい。


 これは俺のわがままだ。

 家が無くなるかもしれないと言うのに、どうして俺はこんなことをしているんだろうな。

 俺自身にもイマイチ分からない。

 これが男の意地と言うやつなのか。

 そんな気もするし、ちょっと違う気もする。


「これはいい記事になるね」


 と、牧田。

 相変わらずだな。

 俺や哉が何かに絡むと、基本的には記事にされる。


「というかお前、神様に会ったことあるのか」


 と、哉。


 最初は「一緒に頑張ろうな」とか言って喜んでいたのに、急に冷静になってきた。

 神様に会ったことのある人っていうのは、俺が思っていたよりも少ないのだろうか。

 まさか哉もあったことがなかったとは思わなかった。

 転生者ならだれでもあっているものだとばかり。


 まぁ、よくよく考えればわかったことだ。

 いくらチート能力を持っている神様でも、転生者全員のに顔を出していたら疲れるだろう。

 いくら神様だって、疲れることは面倒なのだ。

 興味のある奴にしか顔を出さない。

 そんな感じだろう。


 だとすると、俺は神様に興味を持たれているのか。

 そりゃそうか、直々に最強を頼まれたわけだしな。

 ......自意識過剰か?


「まぁ、前に二回だけな」

「いいなー」


 俺の言葉を聞いて、哉は羨ましそうにしている。

 神様、そんなに人気だったんだな。

 呪われちゃえなんて言ってごめんよ。

 あれ、言ってないっけ。

 じゃぁいいや。


 それにしても、牧田はあまり驚いていないな。

 これも知っていたのか。

 恐ろしい情報収集能力だな。

 こいつを敵に回したら面倒臭そうだ。


 ......ふと、疑問というか不思議に思ったことがある。


「そんなにいいものなのか?」


 俺は、羨ましがってくる哉にそう問いかける。

 正直なところ、あの神様はいつも笑顔で不愉快にはならないのだが、たまにイラッとさせられる。


 鎌をかけてきたり、相談無しに物事を確定していたり。

 手のひらで遊ばれているような感覚が、どうも気に入らない。

 まぁ、それ以外はいい神様なんだが。

 欠点って目立つんだよなぁ


 実際、俺もその欠点が目立ったせいで人見知りを克服した今でも能力研究部一同と牧田以外に友達がいない。

 とまぁ、そんな感じ。

 俺はあの神様にそれほどいい印象を持っていないのだ。


「いいに決まってるだろ

 四神の中でも一番合いにくいのが北方神様なんだ

 その北方神様に二回も会ったなんて、羨ましいに決まっているだろ」

「そういうもんなのか」


 あいつ、会いにくかったんだな。

 意外とポンポン出てくるもんだと思っていた。


 聞いたところによると、他の国にいる神様は立派なお屋敷に住んでいるらしい。

 しかし、この国にいる神様の家は誰にも知られていない。

 家を持たないのではないかとも言われている。

 一説によるとホームレスな訳だ。

 まぁ、あの神様は好きでホームレスしているっぽいが。


 そのため、どこにいるか分からない。

 神出鬼没で、いる場所が確定していない分他の神様より見つけにくいと言う訳か。



 そう言えば、神様には親衛隊が付いているらしい。

 その親衛隊はこの国も例外ではない、のだが。

 誰も居場所の分からない神様を、どうやって親衛するのやら。

 あの神様はテレポートもできるからすぐに見失ってしまう。

 親衛隊とはいったい......


「お前もあったことないだろ?」


 と、哉が牧田に話を振った。

 まさか自分に話が飛んでくると思っていなかったのか、それとも他のことを考えていたのか、牧田は少し驚いていた。


「僕も会ったことあるよ」

「えっ!?」


 牧田の思いもよらない返答に、哉は衝撃を受けた。

 驚きの声が口から漏れ、目を見開いて軽く一歩後ずさる。


「まさか二人とも神様に会っていたなんて......」

「そんなに驚くことないだろ」


 俺からすれば哉の驚き方は異常だ。


「いや、多分これが普通なんだよ

 むしろまだましな方なんじゃないかな」

「嘘だろ......」


 俺は俺で、牧田の発言に驚かされる。

 これでも反応が薄い方だと?

 神を自称する人間に会うだけで、ここまで一喜一憂するのか。

 この世界の住人はどうなっているんだ。


 俺と牧田が話している最中、哉は驚きっぱなしでおどおどしていた。

 そんなに会いたいと思える奴なのだろうか。

 正直、あの神様は一度会ってしまえば次も会いたいとは思わないだろう。

 まぁ、会いたくないとも思わないが。


 要は、自分から進んで会いたいとは思わないような奴ってことだ。

 これは俺だけの感想なのだろうか。


「お前は、どうやって神様と会ったんだ?」


 俺は、そう牧田に問いかける。

 俺の問いかけに「俺も気になる!」と哉が食いつく。


 と、二人の期待を一身に背負わされた牧田だが、そんな彼は顔をしかめる。


「あんまり思い出したくはないんだよね」


 と、牧田は目を逸らしながら無理矢理笑ってそう言った。

 思い出したくない過去なんて、誰にでもあるものだ。

 俺にだってある。

 あまり詮索しないでおこう。


「何かあったのか?」


 と、哉。

 思い出したくないって言ってるんだから、思い出させてやるなよ。

 まぁ、これはこれで哉らしいんだが。


「ちょっと失敗しちゃってね」


 牧田は、これにも目を逸らしながら答える。


 一応返答はするのね。

 いやホント、嫌なこと思い出させちゃってごめんね。

 うちの哉が。本当に申し訳ない。


「失敗か......

 まぁ、誰にでも失敗はあるからな」


 哉は、ありきたりな言葉で牧田を励ます。

 励ますのは良いが、もともと落ち込んでいた牧田にとどめを刺したのはお前だぞ、哉。

 オーバーキルした相手をいたわるなんて、なんて残酷な。

 なんてね。


 きっと哉は、この一連のことに関しては無自覚だ。

 こいつはそういう奴だ。

 アホというか天然というか。


「励ましてくれてありがとう

 でも、そんなに落ち込んでないから大丈夫だよ」


 牧田はそう言って、ニヒルな笑みをこぼす。

 本当に思い出したくないんだな。

 今後はあまり触れないようにしよう。

 牧田が話したいと思った時でいい。

 急かす必要はないのだ。


「お前、闘校祭に出るってことだが、あいつとの練習は続けるのか?」


 と、空気を取り戻さんとするように哉は話を変える。

 哉の言う「あいつ」は、三上のとこだろう。


「ああ、続けるつもりだ」


 約束したことだし、何より急にやめるとまた廊下で土下座されかねない。

 それはどうしても避けたい。

 周りの目線が痛いのだ。

 あんなのはごめんだ。


「やめとけ」


 哉はぶっきらぼうにそう言った。

 牧田もコクっと一度だけ小さく頷いている。

 牧田も同じ意見なのだろう。


 哉は、先ほどの言葉に続くように話をする。


「敵になる奴に、戦い方を教えることはないだろ」


 あー、そういうことか。

 敵を強めるなんて、勝率が下がるかもしれないと言いたい訳か。


「それについては大丈夫だ」


 そう、大丈夫なのだ。

 決して三上をなめている訳ではないが、あいつに戦い方を教えても俺にとってはどうでもいいのだ。

 まぁ、あくまでも俺にとっての話だが。

 哉にとっては分からない。

 俺の予想だと、問題ないと思う。


「正直な話、俺と三上の差は数日で埋められるものじゃない

 おそらくだが、お前にも追いつかないと思うぞ」


 哉が俺より強いか弱いかは分からないが、俺と同じくらいな気がする。

 哉、「俺は強いからな」とか言ったいた時には自意識過剰だなとか思っていたが、最近はそうでも無さそうだと思ってきた。


 それは校舎裏での例の一件があったからだ。

 あの一件では、序列5位だった三上を倒した俺ばかりがフューチャーされているが、哉もサラッとすごいことをしていたのだ。

 俺が森の中で三上とやり合っていた少しの間で、哉は三上の取り巻きを全滅させてケロッとしていた。


 あの取り巻きは戦えない訳では無さそうだった。

 あれだけ喧嘩っ早いんだ。場数も踏んでいるだろう。

 しかもそれが大勢。

 あれを簡単に全滅させるのは、並大抵の強さではできない事だ。


 とまぁ、そういった根拠から哉も大丈夫だろうと思った訳だが......

 哉はまだ不安そうだろうか。

 そう思い哉を見ていると、なんとも言えないあほ面になっていた。


「そっか

 それなら大丈夫だな」


 哉はそう言って「アハハ」と笑う。

 いつも明るいやつだな。

 まぁ、接しやすいからいいのだが。



 ---



「まじっすか!師匠も闘校祭出んのか!

 これは俺も頑張んねぇとっすね!」


 放課後。

 休み時間に哉と牧田にした話と同じことを三上に伝えると、彼はやる気に満ち溢れた顔をする。


「師匠を倒す!

 それを俺の目標にするっす」


 三上は俺に、人差し指を向けながらそう言う。


「そうか、頑張れよ」


 残念だが三上、それは無理だ。


 お前は訓練して俺に近付いてるつもりだろうが、俺は俺で訓練をしてお前から遠ざかっている。


 止まっているやつに走って追いつくのは簡単だが、走っているやつに同じスピードで走って追いつくのは不可能。

 つまりそういうことだ。

 今現在の三上の成長スピードでは俺には追い付けない。

 俺だって成長する。

 日々成長しているつもりだ。


「じゃぁ師匠、教えてくれ!」

「ああ」


 俺はもう、こいつがこういう奴だということは分かっているからいいが、その言い方は人にものを頼む態度ではないだろう。

 と思いつつ、俺は何も言わない。

 なぜなら、俺が教えるのは戦い方であって態度ではないからだ。

 俺は仕事以上のことをする気はない。

 だって面倒だもの。


「とりあえず、今日はスピード強化だな」

「おうよ!」


 元気いっぱいでよろしいこと。

 嫌いじゃないよ、そういうの。

 やる気だけで疲れてくれるなよ。


「確か、能力は『衝撃』だったよな」


 俺の一応の確認に、三上は「あぁ」と返事をした。

 何故か得意げなその返事は、どことなくウザさを感じさせる。


「その能力を自分の足に付与することって出来るのか?」


 これが出来るとできないとでは、今後の方針に大きな差が出来てしまう。

 出来ない場合、こいつの教育方針を改め直さないといけなくなる。

 そんな面倒なことしたくないので、何としても付与してもらいたい。


「......やったことぁねぇが、多分できっと思うぜ」


 「とぁ」とか「できっと」とか、おらついた言葉遣いのせいで、何と言っているのか分かりにくい。

 まぁ、訳すとこうだ。

 『やったことはありませんが、おそらく出来ると思います』


「出来るのか」


 ならいい。

 教育方針を改めなくて済む。

 「きっと」や「思う」に、多少の不安は感じるがまぁいいだろう。


「俺はどうすりゃぁいぃんだ」


 と、三上は体を前のめりにして聞いてくる。

 まぁ、落ち着けよ。


「まず走れ」


 俺のイメージでは、あとひと手間で格段にスピードが速くなると思う。


「えー、ラントレはしねぇっつってたじゃん」


 口調が強い。

 怖いんですけど。

 それに加え、三上はいきなり面倒臭そうな顔をする。

 さっきまでのやる気はどこ行ったんだよ。


 そもそも、「走れ」とは言ったがラントレではない。

 勝手に勘違いしてモチベーションが下がっている。

 そんなに走るのが嫌なのか。

 だとすると、嫌なことから逃げているから強くならないのでは?

 もう、普通に走らせようかな。


 いや、それは時間もかかるしやめておこう。

 それに付き合わされる俺が嫌だ。


「足を踏み切る瞬間、足が地面に与える衝撃を大きくしろ」


 俺の言葉に、三上は首を傾げる。

 よくわからなそうな顔だ。

 だが、その顔のまま「師匠が言うなら」みたいな感じで実行に移す。

 しぶしぶやっているみたいだ。


 嫌ならやめてもいいんだぞ。

 俺もそっちの方が楽でいいからな。


 と、俺がそんなことを思っていると、三上は軽く走り出した。

 ジョギング程度の走りだ。

 まぁ、徐々に速くしていけばいいんだから、初めはこんな感じでもいいだろう。


 そう思って三上を見ていると......

 コケた。しかも後ろ向きに。


 おそらく、能力をいきなり使ったのだろう。

 踏み切った三上の足がポンッとペットボトルロケットのように大きく振りあがった。

 その結果、三上はバランスを崩しておしりから派手に転んだ。


 転んだ当人は、痛いのか驚いているのかよく分からないような、二つを足して二で割ったような顔をしている。

 どういう顔なんだ、それ。


「はぁ......」


 俺はため息をこぼし、頭を抱える。

 いきなり衝撃を大きくすると、そうなることくらい分かるだろ。

 徐々に大きくするんだよ、徐々に。


「お前、バカなのか?」

「バカじゃねぇよ!

 能力を最大にしたぁ、いきなり足がふっとんだんだよ」


 こいつ、馬鹿だな。

 いきなり能力を最大にするなんて、火を見るより明らかだろ。


 ちなみに、足が吹っ飛んだとか言っているが、もちろん足がどこか遠くへ飛んで行った訳では無い。

 三上は、五体満足だ。


「ちょっとずつ衝撃を大きくしていくんだよ

 最終的には一瞬で出来るようにしてもらうが、始めからできる訳ないだろ」


 そう、最終的には一瞬で最速で動けるようにしてもらうつもりだ。

 だがそれも最終的には、だ。

 始めからやってもらう気はないし、出来るだろうとも思っていない。

 ちょっとずつだ。


「ちょっとずつ、か......

 それってどんくらいかかんだ?」

「知らない

 お前次第だな」


 俺の話を聞いた三上の言葉に、俺はぶっきらぼうに答える。

 いやだって知らないものは知らないし。

 というかそもそも、強さがすぐ手に入ると思うなよ。


「じゃぁ、もっかいやってみっから見てろよ、師匠」


 師匠に向かってその口の利き方はなんだ!

 俺が本当に三上の師匠なら、そんなことを言うんだろうか。

 俺はこいつの師匠じゃなくて、こいつが勝手に俺のことを師匠と呼んでいるだけなので、今の俺にはよくわからない。


 まぁ、いいや。

 そんなこと。

 どうだっていい。

 とりあえず見ておいてやろう。



 結論。

 三上はこの日、制御を完璧にすることは出来なかった。


 当然だ。

 何度も失敗して何度も成功して、その過程の中でコツを掴む必要があるのだから。

 自転車の練習と同じだ。

 いきなり初日からできることなんてないのだ。


 まぁ、精々頑張れよ、三上。

 お前が諦めないうちは、俺もできる限りを教えてやる。

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