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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第六章 『闘校祭』
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第四十七話 『呼び出し』

 あれから少しの間、三上に戦い方を教えていた。

 ゼーゼーと肩で息をしていた三上も、ようやく落ち着いてきた。


 俺は何故か三上の息が落ち着くまで待たされ、何故か一緒に帰ることになっていた。

 そしてその最中、三上は言った。


「師匠は闘校祭出るんすか?」


 闘校祭、か......

 とゆうか、師匠はやめろよ。


「出るつもりは、今のところ無いな」


 とりあえず、俺はそう言っておいた。

 どうせこいつに「師匠はやめろ」と言っても無駄だろうから。


 俺が言った言葉は本当だ。

 俺は本当に闘校祭に出る気はない。


「なんでだよ!

 師匠はそんなに強えぇのに、なんで出ねぇんだよ」


 なんで、か。

 そんなの考えるまでもないだろう。

 面倒臭いからだ。


 序列5位の俺は、闘校祭への出場資格を得ている。

 が、やはり面倒なのだ。

 どうしてわざわざ他の奴らと戦わなければならない。

 どうして出場しない奴らの見世物にならなくちゃいけない。


 まぁ、優勝すれば願いが叶うと言うのは魅力的だが。

 しかし、そんなこと言っても俺に願いなんてないしな。


「出たい理由もないしな」


 面倒だとは言わない。

 ただ、出る理由がないと言う。


 面倒だと言って、闘校祭の魅力について滅弁されても困るからな。


「そうか......」


 そう言った三上は、それ以上は何も言ってこないがどこか不満げだ。

 俺に出てほしいのか?

 ごめんだな。

 俺は出ないぞ。


「お前は出るんだよな?闘校祭」


 その答えを俺は知っているが、再度三上に聞いてみる。

 その問いを聞いた三上は表情を変え、気合に満ち溢れた顔で答える。


「あぁ」


 気合十分だな。


「そうか

 頑張れ」

「おうよ!

 そして勝ち進んでやる」


 そうかそうか。

 意気込みは十分だな。

 意気込みは。


「そのためにも師匠!

 明日かぁもいろいろ教えてくれ!」

「......ああ」


 なんというか、憂鬱だ。

 部活に行きたい。



 ---



「結局さ、カケは闘校祭に出るの?」


 お前もか。


 三上との練習初日の次の日、昼休み。

 牧田・哉・俺の三人で話している最中に牧田がそう言ってきた。


「いや、出る気はない」

「面倒臭いから?」

「ああ」


 よくわかってるじゃないか。

 面倒臭いんですよ。


「えっ!

 お前、参加しないのか!?」


 「やっぱりな」とでも言いたそうな顔をしている牧田とは裏腹、哉は驚きたまげている。

 彼の想像とは180度違ったのだろう。


 にしても面白い顔をするな。

 目が飛び出そうとは、このことを言うのだろうか。

 初めて見た気がする。


「ああ、出るつもりはない」

「えー

 俺、お前と一緒に出ようと思ってたのにー」


 哉はそう言ってむくれている。

 そんなにふてくされないでほしい。

 一人で参加すればいいだろ。

 俺は面倒なんだ。


 ちなみにこいつ、哉はさらっと序列内にいる。

 確か、17位とかだった気が。

 意外と高い順位にいるのだ。

 いつその順位になったのか分からないんだがな。

 哉は、いつの間にか上位になっていた。


 こいついつも俺と一緒にいるが、いつ戦う時間があったのだろう。

 こいつだけ別の時間を生きているんじゃないか?

 いや、それだと誰かとは戦えないか。

 だとすると違う時間軸を生きているのは俺......

 なんてね。

 そんな訳ないだろう。


 きっと、俺が知らないだけでどこかで戦っていたんだろう。

 どうせ牧田は知っているんだろうな。


「じゃぁ、一人で戦うよ」

「頑張れよ」


 俺は適当に応援の言葉を口にした。


 仮に俺が出たとしても、お前は一人で戦うことになるんだぞ。

 「じゃぁ一人で戦う」、というのはちょっと違うと思う。

 まぁ、そんなことどうでもいいんだけどね。


「優勝するから見てろよな!」


 随分な自信だな。

 応援くらいはしてやろう。

 しかしそれも、あの三上を教育しながらだが。


 悪いな哉。

 俺もお前を本気で応援したい気持ちは山々なんだがな。

 状況がそれを許さないんだよ。

 悪いな。


「見ててやるよ」


 俺は、半笑いでそう言った。


 と、俺が笑った直後、チャイムが鳴った。

 予鈴や、授業開始のチャイムでは無い。

 連絡をする時などに使われるタイプのチャイムだ。


 誰かが呼ばれるのだろうか、それともただの連絡だろうか。

 何故かこのチャイムは少しワクワクする。


 俺はしたことないが、このチャイムに呼べれた人は、友達から「お前何やったんだよ」とか「呼ばれてるぞ」とか、言われている。

 少し面倒臭そうではあるが、ワイワイやってて楽しそうでもある。


『二年四組、佐々木翔琉君

 至急、校長室に向かってください』


 マジですか。

 俺ですか。

 しかも校長室?


 校長室に呼び出しなんて、この学校に来て初めて聞いたんだが。

 よくあることなのか?


「お前、何やったんだ」


 哉はそう聞いてくる。

 ただ、他の奴らみたいな軽い口調ではない。


 深刻そうな顔、深刻そうな口調だ。

 本気で心配されているんだろう。

 心配どころか、不安になっているかもしれない。

 俺も不安です。


 何もやっていないのに、校長室に名指しで呼び出し。

 正直、凄く怖い。

 何を言われるんだろう。


 あっ、もしかして前に序列碑を壊そうとしたのがばれたのか。

 いやでも、壊してみようと思っただけで行動には移していないはずだ。

 ただ思っただけ。

 口にも出していないのだ。

 未遂にもならないほどだと思う。


 この件に関しては、考える事すら許されないと言うのか。

 思想の自由もないのか。

 びっくりだな。


 というか、俺の考えがばれたということは、教師側に心を読める奴がいるのか?

 生徒の心筒抜けだと。

 俺の変態的思想も。

 なんてことだ。


 変態すぎて呼び出しなんてないよな。

 そんなことなら、俺学校に来なくなっちゃうかも。

 不登校ルートまっしぐらだ。

 恥ずかしいよ。


「行かなくていいの?」


 と、俺がそんな不安になるようなことを考えていた時、牧田がそう言ってきた。

 そう言えば放送でも『至急』とか言ってたな。


「じゃぁ、行ってくるよ」


 急ぐとしよう。

 俺は教室を早足で飛び出す。


 皆の視線が痛い。

 クラスのほとんどが俺を見てくる。


 なんだよ。

 俺が何したって言うんだよ。

 何もしてないだろ。

 ただ、訳も分からず校長室に呼び出しくらっただけ。

 俺も悪くない......と思う。

 思いたい。


 はぁ......

 ため息が出てしまうよ。

 憂鬱だ。

 校長室なんて、行きたくもない。


 休み時間で人があっちこっちにいる廊下を、人にぶつからないようにして進む。

 出来るだけ急いでる風にゆっくりと。

 人の間を縫って進む。


 おっ、これちょっと面白いかも。

 動き回る人たちに、絶対にぶつかってはいけないけど進み続ける。

 ちょっとしたゲームみたいだ。

 弾幕系シューティングゲーム的な?

 そんな感じだ。


 俺は若干遊び感覚で廊下を歩きながら校長室へと向かった。

 まぁ、そんなことをしてたら遅れるのは当然なわけで。



「遅かったですね」


 と、校長室に入った俺に、校長がそう言った。

 別にいいじゃないか。

 昼休みはまだまだ終わらないんだし。


「少し人が多くて廊下が通りにくかったもので」


 とりあえず言い訳しておこう。

 通りにくかったことは確かだし。

 まぁ、少し楽しかったけど。


 俺の言い訳に、校長は顔を顰める。

 そして、その顔のまま言う。


「それでも急いで来るんですよ

 はぁ......まぁいいです

 君に、お客様が居らっしゃっている」


 校長の口調は、冷たい。

 突き放すような感じだ。

 なんだこの感じ悪い校長は。


 俺も遅れてきたのは悪かったが、そんなに態度を悪くしなくてもいいんじゃないか。


 と、俺が心中で文句をつらつらと書き綴っていると、校長室の奥の扉が動いた。

 ゆっくりと扉が開いて、誰かが出てくる。


 それは長髪の男。

 その男と目が合う。


 それは長髪を耳の後ろで一つ括りにした男。

 その男は俺を見てニッコリと格好良く笑う。


 それはイケメンな青年。

 その青年は俺に向かって手を振る。


「久しぶりだね

 翔琉君」


 それは北方神様だった。


 どうしてこうも俺の周りにはイケメンが集まってくるんだ。

 俺はイケメンに飢えている訳ではないぞ。

 飢えている奴は、他にいるはずだ。

 そいつらの所に行って来いよ。


 あっ、でも行く前にちょっとだけイケメン分けて行ってね。

 俺もイケメンになりたいからね


「久しぶりだな」


 まぁ、言われてみれば久しぶりなのか。

 一か月近く会っていなかったしな。


 俺が神様にため口を使っているのを聞いた校長は、凄まじい剣幕で俺を見ていた。

 その後、早足で俺の元まで来てから言った。


「神様に向かってなんて口の利き方だ!

 謝って許されることじゃないぞ!」


 いや、そんなこと言われてもな。

 俺も好きでこの口調をしている訳じゃないし。

 やっぱり俺だって、神様なんて呼ばれている人に向かってため口なんて使いたくないよ。

 ため口で話してくれって頼まれたからこの口調な訳で。


 と、俺が心の中で言い訳を並べている最中、校長は神様にペコペコと頭を下げていた。

 「強く言い聞かせます」とか「退学処分も検討します」とか。

 退学は勘弁してほしい。

 話をしましょうぜ、校長先生。


 果たしてこの校長は、俺の話を聞いてくれるのだろうか。

 俺にどぎつい視線を向けてきているあの様子を見ると、聞いてくれなさそうだ。

 俺は退学になるのだろうか。


「頭を上げてよ

 彼にはため口で話してくれるように、僕からお願いしたんだ」


 神様から説明をしてくれた。

 これなら俺の退学も......


「いやでもしかし......」


 どうして納得しないんだよ、校長さんよ。

 あんたが敬っている神様がああ言ってるんだぞ。

 信じろよ。


「僕がああ言わせてるんだ、いいね?

 彼を退学にしたら許さないよ」


 神様は、明らかに分かる作り笑顔でそう言った。


「......分かりました」


 校長は神様の言葉を受けて引き下がった。

 俺の退学はどうやら免れた。


 がしかし、納得はしていないのだろう。

 執拗に俺を睨んでくる。

 やめて。

 そんなに熱い視線を向けられたら困っちゃうわ。

 なんてね。


 まぁさっきのは冗談だが、睨んで欲しくはないよね。

 睨まれたい人なんて、そんなにいないだろ。

 例外も一定数はいるだろうがな。


「「「......」」」


 完全に静まり返った。

 足音一つ聞こえない。

 心臓の鼓動が聞こえそうなほどの静けさだ。


 三人もいて、こんなに静まり帰るんだな。

 もう不気味なほどだ。


 こんなに静かで不気味であるのに、神様は笑顔で校長は睨み続けている。

 この空気に緊張しているのは俺だけなのか。


「......悪いんだけどさ、出て行ってくれないかな」


 と、神様は校長に向かってそう言った。

 校長に向かって、この校長室から出て行けと。

 なんてゆうか、変な感じだな。


「分かりました」


 校長は、渋々ながらそれを了承する。

 その後、もうしばらく俺を睨んでからトボトボと校長室を出て行った。

 そんなにトボトボと歩かれたら、可哀そうに見えてきてしまう。

 どうしてそんなに睨みを利かせながら悲しげに歩けるんだ。


 校長は、怒りながら悲しんでいる。

 器用なもんだな。

 俺はどちらか片方しかできないと思う。


「よしよし、これで話しやすくなったね」


 相変わらず、笑顔の多い神様だ。

 よくもまぁ、あの雰囲気に続いて笑っていられるな。

 さすが神様と言ったところか。


 それにしても「話しやすくなった」、か。

 どんな話をされるのだろう。

 雰囲気を読み取ったところ、お小言ではなさそうだ。


 だが、それも雰囲気から読み取ったところ、だ。

 この神様が出す雰囲気はあてにならない。

 いつも笑っているからな。


「何の話なんだ?」


 とりあえず、その話とやらを聞いてみようじゃないか。

 さてその話って言うのはどんなものなのだろうか。

 お小言か、それ以外か。


 俺は「それ以外」だと思う。

 さて、答え合わせと行こうじゃないか。


「単刀直入に言うよ」

「ああ」


 もったいぶらないで早く行っておくれよ。

 まぁいいや。

 改めて、答え合わせだ。


「闘校祭に出て、優勝してほしいんだ」


 おお、単刀直入だな。

 まぁ、単刀直入に言うって言っていたしな。


 というか、闘校祭に出てほしいだと?

 しかも優勝しろと?


 いやだよ。

 面倒臭い。


 俺は楽に、平和に生きたいんだ。

 上位100人が戦いあう殺伐とした祭りになんて出たくない。


「嫌だ

 俺は闘校祭には出ない」


 出る気はないと伝えよう。

 面倒臭いのは嫌なんだ。


「嫌って、どうせ面倒臭いからとか言うんだろ?

 なら別に出てくれたっていいじゃないか」


 なんだこの神様。

 俺の考えることはすべてお見通しだと言うのか。

 さすがは神様だ。

 尊敬しちゃうぜ。


「いや、別にそういう訳じゃ......」


 とりあえず否定しておこう。

 嘘をつくことになるが、仕方ない。

 ここで「そうだ」なんて言ったら、きっと出場させられる。


 出場なんて冗談じゃない。

 面倒だ。


「嘘だね

 僕は人の心も読めるんだよ。そういう能力だからね

 君が出場したがらない理由は面倒だから。だよね?」


 と神様は笑いながら言う。

 こいつ、理由を確信していて鎌をかけやがったな。

 ちっ、このチート能力者め。

 能力が使えなくなる呪いにでもかかっちゃえ。


「......どうして俺を出場させて、その上優勝までさせようとしてくるんだ」


 俺は神様にそう問いかけた。


 正直なところ、神様のチート能力とか、俺の心が読まれているとか、そんなことはどうでもいい。

 俺が闘校祭に駆り出される理由が分からないのだ。

 理由も分からず、そんな面倒なことに参加なんてできない。

 ちゃんとした理由を教えてもらわなければな。


「この国の最強になってもらいたいんだ」


 神様は、サラッとそんなことを言った。

 最強って言うとあれか。

 国で一番強い奴だけが就けると言うあれか。

 収入だけは良いと言うあれか。


 俺はあの職に、いい印象を持っていない。

 確かに収入は魅力的だが、それだけだ。


 力の基準にはされるし、最強を狙う奴がうじゃうじゃとやって来るし。

 ストレスが半端じゃなさそうだ。

 俺、心は弱いんだ。


 いやだ。

 冗談じゃない。

 最強になんてなりたくない。

 なってたまるもんか。

 あんなストレスの塊みたいな職業。


「嫌だ

 闘校祭だけならまだしも、最強になんてなりたくないな」


 と、自分の意思を表す。

 闘校祭も嫌だが、最強になるのはもっと嫌だ。

 理由はさっき言った通り。


 最強になるために闘校祭に出るのなら、お断りだな。


「いや、君には最強になってもらう

 決定事項だ」


 勝手に決定事項にするなよ。

 普通なら、決定する前に本人に相談だろ。

 俺何も聞かされてないんだけど。


「お前の中で確定事項でも、俺の中では違う

 勝手に巻き込まないでくれ」


 その決定事項とやらを何とか回避しなければ。

 俺の回避スキルをなめるなよ。


「家、無くなるのは嫌だよね」


 あっ、これは回避できないですわ。

 家なくなるなんて嫌だわ。

 宙にも迷惑かかっちゃうわ。


 にしても、家を交渉材料にするなんて卑怯だぞ。

 一度手に入れた快適な生活を手放すことは容易ではない。

 それを分かっての交渉。

 そんなの、俺に拒否権がないようなもんじゃないか。

 それは確定事項ですな。


「闘校祭に出蔵させていただきます」

「うんうん

 君は素直でいいね」


 神様の笑顔が、今はなんだかうざい。

 悪魔に見える。


「君が最強になった時には、あの家はあげるよ

 家賃はもう払わなくていい」

「そうか......」


 報酬みたいなものか。

 最強になることの報酬(イコール)

 報酬が依頼に釣り合っているのかいないのか。

 よくわからないな。


 というかこいつ、始めからこうやって交渉材料にするつもりで俺に家を貸したのか。

 策士だな。

 俺はまんまと策に乗せられてしまったわけだ。


 面倒臭い......

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