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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第四章 『序列』
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第三十九話 『新入部員』

「ここの部活に、入部したいです!!」


 部室の扉をコンコンと叩き、入ってきた少女はそう言った。


 その少女は、俺も何回か見た事のある女の子。

 この学校でも、かなり有名であろうほどの美形だ。

 かわいい系と言うよりは清楚系。


 宙がかわいい系No.1なら、彼女は清楚系No.1だ。

 そう言いきっても過言ではないだろう。

 彼女はそれだけの美貌を持っている。


 高一女子なら平均的な身長。

 腰まで届きそうな自由に伸びた髪。

 パッチリとした瞳。

 黒タイツ越しにでも分かる健康的な脚。


 清楚系の彼女だが、どことなくエッチだ。

 これも清楚系の魅力と言うやつなのだろうか。


 で、そんな彼女が誰なのかと言うと俺は分からない。

 しかし、会ったことはある。

 遠坂妹を呼びに行く時、遠坂妹が誰なのかを聞いた彼女だ。

 校舎裏でも一度会ったと思う。


 で、なぜそんな清楚系美少女がうちの部活なんかに来るんだろう。

 こんな名前だけで何もしていない部活に。

 もし、彼女がここでの真面目な研究をご希望なら、あまりお勧めしない方がいいと思う。


「なんで、この部活に?」


 とりあえず、それを確認しなくてはな。

 研究したい人なら申し訳ない。


 と、俺はそう思って聞いてみたのだが。


「先輩がいるからです」


 彼女はそう言った。


 先輩って誰だ?

 遠坂姉か?

 哉か?


 申し訳ないが、哉はもうフリーじゃない。

 諦めて貰うしかない。

 本当に申し訳ないな。

 哉はお隣さんにぞっこんだから。


 と、チラチラと遠坂姉と哉を見つつ、彼女の方を見ているのだが、何度彼女を見ても目が合う。

 何度目を逸らしても、次に目を見ると合ってしまうのだ。


 あれ?

 これって、俺のこと見てる?

 哉じゃなくて?


 もしかして、俺モテてるんじゃね?

 先輩がいるから入りたいと言った。

 そして、その先輩は俺?

 いやもうこれ、俺のこと好きだよね。


 いやー、困っちゃうなぁ。

 俺はかわいい系のほうが好きだが、清楚系も悪くない。


 いや、ちょっと待て。

 たまたま俺を見ているだけで、先輩が俺ではないかもしれない。

 それに、先輩がいるからと言っても、その先輩が好きだという保証はない。


 危ない危ない。

 一度も付き合ったことないことがばれてしまうところだった。

 ギリギリセーフだ。


「先輩って誰だ」


 いや、聞くべきことはそれではないはずだ。

 もう少し詳しい入部理由や、この部活についての説明など、しなければならないことは他にもあるはずだ。

 しかし、その『先輩』が誰を指すのかが気になってしまった。


「えっと、佐々木先輩です......」


 彼女は、恥ずかしそうにそう言った。

 もじもじしている。


 いやー、これは俺のことが好きで確定なのでは?

 モテる男はつらいよ。

 えへへ。


 俺にも、彼女ができちゃうのかぁ......

 哉よ、俺の前でもお隣さんとイチャイチャしていいんだぞ。

 俺は心が広いから許そうではないか。

 速撃迅斬なんてお見舞いしないさ。

 する訳ないじゃないか。

 どうしてお見舞いしようだなんて思ってるんだ?

 俺がそんなことする訳ないじゃないか。


 いやいやまだだ。

 まだ俺を好きと決まった訳ではない。

 落ち着くんだ俺。


「俺がいるからってどういうことだ?」


 これもまた、今聞くことではない。

 しかし、気になって仕方ないのだ。

 俺に春が来たのかそうではないのか。


「私、先輩に一目ぼれしました!」


 一目ぼれか、困っちゃうな。


「それ、本気で言ってるの?」


 そう言ったのは遠坂姉だ。

 信じられないというような顔をしている。

 ちょっと、それ俺に失礼じゃね?

 俺だってモテるんだぜ?


「はい、本気です」


 ほらな。

 本気らしいぞ。

 だから疑わなくていいだろ。

 なぁ遠坂姉よ。


「嘘よ......

 こんなののどこがいいのよ......」


 こんなのって......

 こいつ、俺へのあたりが強いよな。

 どうしてここまでぶつかってくるのか。


「噂に迷わされず、自分の考えを貫いているところです」


 なんか、それらしい答えが出てきた。

 遠坂妹を迎えに行った時のあれだろうか。


 その時の俺は、彼女に対して少し強く当たってしまっていたが。

 あれがよかったのか。

 強く来られるのが好き。

 この清楚系美少女は、若干Mよりなのかもしれない。

 興奮しちゃうね。


「まさか......こいつが......

 まさか......」


 あの、そんなに驚かないでくれませんか。

 精神的に辛いんですけど。

 俺、モテたらいけないの?


「佐々木先輩のことを、私は大好きです

 例え一方的な恋でも、私は好きでい続けます」


 なんか重たい気がする。

 でもいいだろう。

 重たかろうと、それもまた恋愛なのだ。


「翔琉先輩は、かっこいいし優しいに、最高の男性だと思います」


 彼女は、急に俺の呼び方を変えてきた。

 上の名前から下の名前へと。

 距離を詰めてきた。


 それに俺のことを最高の男性だと。

 これは、俺からも距離を詰めた方がいいのか?

 でも、彼女の名前を知らないしな。


「翔琉先輩の話を聞いて、私も考え直したんです」


 あの時の話だろうか。

 あの、遠坂妹について聞いた時の。


「やっぱり、雪音ちゃんは怖い人なんかじゃない

 みんなに恐れられるような、そんな子じゃないんです」


 おうおう。

 分かってくれたか。

 それならいいや。


「それを気づかせてくれたのは、他の誰でもない翔琉先輩です

 そんな素敵な考えの持ち主である先輩を、私は好きになってしまいました」


 なんかこんなに褒められたら照れるな。


「私はそんな先輩とお付き合いしたいです

 そして、子供を作りたいです」


 ん?

 子供がどうとか聞こえたぞ。


 いやでも、行くところまで行けばそうなるだろうな。


「翔琉先輩は、結婚できる年まであと一年です」


 まぁ、そうだな。

 男は18、女は16だもんな。

 法律がないこの世界でも、そういう決まりはあるのか。


「先輩が18歳になるまで付き合って、18歳になったら直ぐに結婚

 そして数日後には子供が欲しいです」


 なにを言っているんだこいつは。

 数日後に子供?

 ちょっと待て、理解が追い付かない。


「子供は11人くらいほしいですね。サッカーチームを作りましょう

 私も頑張りますので、翔琉先輩も頑張ってください

 でもでも、結婚する前にもいろいろしますよ

 あんなことやこんなことを

 えへへ

 先輩とならいくらでもできそうですね」


 サッカーチーム?

 なにを言っているんだこいつは。

 作りましょうって、決定事項なのか?


 それに結婚前にも何やらいろいろするつもりらしい。

 俺にとっては魅力的な提案のはずなのだが。

 何故だろう、あまりワクワクしない。

 どうやら俺は、頭の中で変態するのは好きだが、変態されるのはあまり好きではないみたいだ。


「あなた、女の子に何言わせてるの

 恥を知りなさい

 この節操なし」


 遠坂姉が、軽蔑の眼差しを向けてくる。


「違うぞ。俺は何もしていない」


 どうして俺が言わせたことになってるんだ。

 冗談じゃない。

 名前も知らない女の子にあんなこと言わせるなんて、変態どころの話ではない。

 それこそ十狂だ。


 俺は十狂で、変態を担当するのか?

 そんなのごめんだぞ。

 確かに俺は変態だが、男子高校生としては健全な範囲だと思う。


「そうやって、俺はやってないって言うやつに限ってやってるのよね」


 どうして信じてくれないんだよ。

 確かに「俺はやってない」なんて、やっている奴の言葉だが、俺は本当にやってないのだ。

 無罪だ。冤罪だ。俺は何もやってない。


「翔琉先輩」

「な、なんだ......」


 清楚系変態彼女の言葉に、俺は恐る恐る返答する。

 女子、怖い。


「性交を前提に、付き合ってください」


 ん?

 聞き間違えだろうか。

 この俺が?

 この、耳がいいでおなじみ(自称)の俺が?


 いやぁ、まさか俺が聞き間違いをするなんてな。


「すまない。もう一度言ってもらえるか?」

「もちろんです。何度だって言いますよ」


 彼女は快くいい返事をした。

 笑顔だ。


「性交を前提に、付き合ってください」

「......すまない。もう一度だけ」

「何度も告白するなんて、私だって恥ずかしいんですよ。ちゃんとよく聞いてくださいね

 性交を前提に、付き合ってください」


 なんてこった。

 聞き間違えではないみたいだ。

 何度聞いても変わりなかった。

 三回も聞いて、三回とも同じ言葉に聞こえた。

 何度聞いてもアノ行為にしか聞こえない。


 いやいや、ちょっと待て。

 俺が勘違いしているだけで、他の違うことなのかもしれない。

 考えろ考えろ......


 いやでも、子供がどうとか言ってたし勘違いではないかもしれない。

 だとすれば普通じゃない。


 なんて告白なんだ。

 まず前提がおかしいだろ。

 どうして前提がアレなんだ。

 意味が分からない。


「ごめん

 気持ちはありがたいけど、付き合うことはできない」


 気付けば俺は、告白を断っていた。


 なんだか申し訳ないな。

 いくら彼女がこんなでも、勇気をだして告白してくれたのには違いないのだ。

 そう思うと申し訳なくなってくる。


「気持ちはありがたい、ってことはまだチャンスはありますね

 猛烈アタックしていくので、よろしくお願いします」


 ものすごいプラス思考だ。

 いいことなんだろうけど、ちょっと怖い。

 何が、よろしくお願いしますだよ。

 何をよろしくするんだよ。


「この部活に入部させてください!」


 能力研究部に変態が増えた。

 オープンな清楚系変態が。



 ---



 俺たちの部活は、基本的に雑談ばかりだ。

 今日までは、俺・哉・遠坂姉妹の4人で雑談していた。


 並べた二台の長机を、一辺につき一人が使っていた。

 俺と遠坂妹、哉と遠坂姉が向かい合うようにして座っていた。

 その編制で、俺たちは部活(雑談)をしていたのだ。


 が、そこに新しい奴がやって来た。

 新しい変態がやって来た。


 彼女の名前は『明蓮寺(みょうれんじ)穂香(ほのか)』。

 無能力者らしい。

 現在、彼女は俺の隣に座っている。

 隣と言うよりも真横だ。

 俺にくっつくようにして座っている。


 俺に、変態がくっついているのだ。

 要は、インドア変態にオープン変態がくっついている。

 二台の長机を繋げて作った四角形の四辺のうち、一辺が変態で埋め尽くされている。

 重大な問題だ。


 で、その明蓮寺だが、自慢の胸を俺の腕に押し付けている。

 彼女曰く、さほど大きくはないが、形がいいらしい。

 知らねえよ。

 早く離れてくれ。

 俺の理性が崩壊してしまう。


 そんな俺を、哉はニヤニヤと、遠坂妹は若干涙目で、姉の方は軽蔑するように見ている。

 見てないで助けてくれ。

 こいつをどうにかしてくれ。

 暑いしヤバいし鬱陶しい。


「変態......」


 遠坂姉は、明らかに俺に向かって言ってきた。

 ジト目で軽蔑するように。


 どうして俺なんだ。

 俺は何もしていないだろ。

 被害者なんだ。


「お前、普段の生活でもこんななのか?」


 俺は、明蓮寺にそう問いかける。


「そんな訳ないじゃないですか」


 彼女はケロッと答える。

 当然だろ、みたいな顔だ。

 「何意味わかんないこと言ってるんですか?」みたいな感じだ。

 俺の言葉だろ、それ。

 俺はそれをさっきから思ってるんだぜ。


「普段はもっと大人しいですよ

 見たことありますよね」

「ああ......」


 いや、見たことはあるんだがな。

 どうしても同一人物だと思えない。

 顔と体が一緒なのに、性格がまったく違う。

 中身だけ入れ替わったみたいだ。


「私、これでも清楚キャラなんですよ

 ほら、見ての通りの清楚です」


 明蓮寺は、体を俺に受けて手を広げる。


 こいつ、本気で言ってんのか。

 冗談だろ。

 笑わせてくれるぜ。


 変態道まっしぐらのこいつが、清らかであるはずがない。

 染まりに染まりきっている。

 何色にか?

 ピンク以外の何があるってんだ。


「あっ」


 と、明蓮寺は何かを思い出したようだ。


「私、さっき言った通り清楚系で通っているので、このことはばらさないでくださいね」

「善処するよ」


 ついうっかり漏らしてしまうかもしれないけどな。


「もしばらしたら、種だけもらってもぎ取りますからね」

「......善処するよ」


 死んでもばらさないと、ここに誓おう。


 11人分を搾り取られた後に、もぎ取られるなんて嫌だ。

 もぎ取られる前に俺が死んじゃう。

 干からびて、からっからで死んでしまう。

 俺は、生きていたい。


 せっかく幸せな日常を遅れているんだ。

 限界まで生きていたいってもんだろ。


「今からでももぎ取っていいわよ」


 遠坂姉はそう言った。


「どうしてお前が決めるんだ」

「私の、私たちの貞操に危機を感じているからよ」


 危機だと?

 俺がお前に何をしたって言うんだ。


「どうしてお前の中の俺はそこまで変態なんだ......」

「あなた、変態以外の何物でもないでしょ

 あなたからそれを取って、何が残るっていうの?」


 確かに俺は変態だが、そこまでではないだろ。

 それを取ったって、残るものなんていくらでもある。

 例えば......


 まぁすぐには思いつかないが、他にもあるはずだ。

 勝手に俺を色欲の魔人にするな。


「まぁなんだ

 翔琉、気にするなって」


 哉に慰められた。

 なんでお前に慰められなきゃならないんだよ。

 このプレイボーイめ。

 自分が彼女持ちだからって、余裕面しやがって。


 でもありがとう。

 慰めてくれるのはお前だけだよ。

 お前が男でなければ惚れてたよ。

 多分。


「先輩は、そんな人じゃありませんよ!」


 遠坂妹は、姉と違っていい子だな。

 分かってくれるか。

 そうそう。

 俺はそんな人じゃないんだよ。


「いいや、ユキはたぶらかされてるのよ」


 何を根拠にそんなことを......


「たぶらかしてねぇよ!」

「はっ

 何?

 うちの妹が、かわいくないって言いたいの?

 あなた何様のつもりよ

 たぶらかしなさい」


 なんなんだよこいつ。

 たぶらかすのかたぶらかさないのか、どっちなんだよ。


「ヘイ嬢ちゃん

 この後うち来ない」


 とりあえずたぶらかしておくか。


「行きます!!」


 反応したのは明蓮寺だ。


 お前には言ってねぇよ。

 ちょっと黙ってろよ。


「......」


 あの、遠坂姉妹さん。

 何かしゃべってほしいんですけど。


 姉は呆れたような顔。

 妹は真っ赤な顔で黙ってしまった。


 黙られるのも辛いんだよなぁ

 何かアクションを起こしてくれ。


「......あなた、かわいそうね」


 なぜだろう。

 遠坂姉に同情された。


 今のどこに同情の要素があったのか、俺にはさっぱり分からない。

 しかし、なんだか癪だ。

 こいつに同情されるとなぜだか腹が立つ。


 というか、もともとお前が突っかかって来たんだから、最後まで突き通してくれよ。

 同情で終わらないでくれよ。

 今この状況で、同情されるのが一番辛い。

 なんなんだよもう......

第四章『序列』・終了


 間話



次章・第五章『新生活』

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