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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第三章 『異世界学校』
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 間話 カレンダー(おまけストーリー付き)

 やぁ

 こんばんは。

 佐々木翔琉だよ。


 突然なんだけど、暦の話をしようと思う。

 この世界に来て数週間たった今、こんな話をしたら「今更?」とか思うかもしれないが、許して欲しい。


 というのも、この話を今になってしようと思ったのには理由がある。

 別に今日の今まで、今が何年の何月の何日かがわからなかった訳じゃない。

 なら、なぜか。


 それは今日、宙がバイト先からカレンダーを貰って帰ってきたからである。


「見ておにぃ

 カレンダー貰った」


 そんな特に凄みのないことを、どこか自慢げに報告してくる宙はかわいかった。

 もう、今にでも抱きしめてやりたいくらい。

 でも俺はお兄ちゃん。

 抱き着くわけにはいけないのだ。

 宙にとって、かっちょいいお兄ちゃんでなければ。


 それに、急に抱き着かれるのは宙だって嫌だろう。

 宙は、感情が顔に出やすい。


 俺に抱きつかれて、嫌そうな顔をしている宙を見たら、心が木っ端微塵に、跡形もなく爆発してしまう。

 お兄ちゃん、大声出して泣いちゃうよ。


 ん?

 妹に「金食い虫」なんて言われるお兄ちゃんは、かっちょいいのだろうか。

 なんだかもう、手遅れな気がしてきた。

 いやいや、まだ助かる。

 マダガスカル。

 あまり深く考えないでおこう。



 おっと、いかんいかん。

 話が変わってしまった。

 暦の話だったな。


 宙が貰ってきたカレンダーは、L字という珍しい形のリビングの、どこからでも見える位置に掛けられている。

 とてもいい場所だ。

 いいセンスだ。

 さすが宙だな。


 おっといけない。

 また話がズレるところだった。

 このままいけば、宙の話を気持ちよく喋り続け、気持ち悪い顔を晒すことになっていた。


 というわけで、話を戻そう。

 そのカレンダー。

 そのただの紙は、すごいのだ。

 何がすごいかって?

 今日が何年の何月何日なのかを教えてくれるというのが、だ。

 こんな親切な紙が、他にあるだろうか。

 いや、ない。

 ただ数字を並べているだけの紙に、これだけの能力があるなんてびっくり仰天だ。

 画期的発明だ。


 前世ではスマホというものがあり、紙のカレンダーになんて用は無かった。

 前世の俺の部屋に()()()()()()カレンダーなんて、二年前からページが変わっていなかった。

 まったく役に立っていない。

 強いていうなら、部屋を装飾するくらいにしか役立っていなかった。


 だが、今は違う。

 この世界には、スマホが無いのだ。

 となれば、日付けを教えてくれるのはカレンダーのみ。

 とても頼りになる紙だ。

 最高だね!


 でだ。

 この散々褒めちぎったカレンダーの左上には、神暦1825年と書かれている。

 この神暦というものは、この世界に神様が生まれた年を元年とする紀年法だ。

 前世で言うところの西暦だ。

 作られ方から使い方まで西暦と一緒。

 一体何が違うのか分からない。

 もしかすると、呼び方以外には、神暦と西暦の差は無いのかもしれない。


 その神暦が1825年ということは、この国。

 北方神国の神様は軽く1825歳を超えているということだ。

 能力によって体は大丈夫なにかもしれないが、頭は大丈夫なのだろうか。

 いや、無用な心配はよそう。

 あの神様の能力は万能だ。

 きっと、何とかしていることだろう。


 それでだ。

 今日は、その神暦1825年の4月17日、土曜日。

 明日、つまり日曜日は休み。

 やったね休み。

 休日は、休んでこその休日なのだ。


 だが残念。しかし、学校は休みでも俺にはバイトがある。

 少しでも多く稼いで、宙が不自由しないようにするのだ。

 ちなみにその宙はというと、明日は友達と遊びに行くらしい。

 少し羨ましい。

 俺だって友達と遊びに行きたいよ。

 でもしかし、ガマンガマン。

 俺はお兄ちゃん。

 頼りになるお兄ちゃんなのだ。

 頑張らなければ。


 とまぁ、こんな感じで暦について話してみたのだが、あまり語ることが無い分、話が長く続かないな。


 まぁいい、明日はバイトだ。

 今はもう夜。

 バイトから帰って、夕食だったり、入浴だったりと。

 いろいろしているうちに、もう11時だ。

 早く寝て、早く起きて、気持ちよく出勤。

 というわけで、暦話終わり。


 おやすみなさい。

 





 ───間話「カレンダー」 終了───





  おまけ<帰り道の鷲宮ちゃん>


 こんばんは、鷲宮明香です。

 唐突ですが、私は今、とても幸せです。


 なぜって?

 それは、隣を歩いているのが、かけ君だから。

 こうして二人、隣合って歩いていると、たまにかけ君の匂いがする。

 洗剤の自然の匂いがかすかに香ってきて、幸せな気分になる。

 私は、周りの女子よりも背が高く、それも少しコンプレックスだった。


 だけど今、彼のシャンプーの香りを嗅げるのは、嬉しい。

 とてもいい匂い。

 鼻に残らない、いつまでも嗅いでいたくなる匂い。

 ああ、かけ君ファンのみんな。ごめんなさい。

 私は今、かけ君を独り占めしています。


 こうしてかけ君の匂いを堪能している自分を、客観的に見てみよう。

 変態です。

 もしかすると、私は変態なのかもしれない。

 なんだか少し、私の胸を見てくる人の気持ちが分かってしまった気がする。

 悲しくなってきた。



 そういえば最近、かけ君と帰りながら密かに香りを楽しんでいるが、かけ君の汗の匂いは嗅いだことがない。彼は汗をかきにくい体質なのだろうか。

 一度でいいから、それも嗅いでみたい気がする。


 でも、このシャンプーとかけ君の混ざりあった匂いも好き。

 匂いを嗅ぐたびに、自分が満たされている感じがして、ずっと嗅いでいたくなる。

 私は、彼にバレないようにして鼻を研ぎ澄ます。


 どれだけ嗅いでも、いつまで嗅いでもいい香り。

 満たされていく。

 彼の香りはさながら媚薬のようで、嗅げば嗅ぐほど体が火照っていくのが分かる。


「よんちゃん」

「ひゃ、ひゃい!」


 変な声が出てしまった。

 いきなり声を掛けられて、驚いてしまった。

 声が上ずってしまった。

 恥ずかしい。


 今の私は、恥ずかしさと彼の匂いで、茹蛸のように真っ赤な顔をしているかもしれない。

 バレてないことを、心の中で何度も祈る。


「なんか近くない?」

「えっ......あっ、いや......

 そんなことないよ!」


 匂いに夢中になっていたのか、気付けば彼にくっついちゃいそうなくらい近づいていた。

 それに気づいたら、なんだか急に歩きにくいような気がしてきた。


 もうこのままくっついちゃおうかな......

 いやいや、早まってはいけない。

 かけ君も、急にくっつかれたら困惑しちゃうだろう。

 実際、近くないか?と言われた。

 もうすでに、少し困惑しているのかもしれない。

 かわいい。


 いや違う。

 今の私はどうかしている。

 変なスイッチが入ってしまっている。

 一旦、彼からある程度離れて落ち着こう。


 すーはー。

 かけ君にはわからないように、静かに深呼吸する。

 あっ、かけ君の匂いがする。

 もう一度。



 ふぅ

 だいぶ落ち着いてきた。

 これなら大丈夫だよね。


 彼の香りで乱れてしまった心を、彼の香りで落ち着かせた私は、考える。

 以前の私は、こんなに変態だっただろうか?

 否、普通の女子高生だったと思う。

 どこにでもいるような、匂いフェチの女の子。


 匂いフェチと言っても、これほど重度のものではなかった。

 タオルに残った洗剤の匂いや線香、アロマオイルといった普通の匂いが、人よりも好きなくらいだった。

 人の香りに、意識を持っていかれるほどではなかった。


 それが、今ではこれ。

 彼の香りで、興奮するようにすらなってしまった。

 どうしちゃったんだろう、私。


「はぁ......」


 思わず、溜息が出てしまう。

 でも、

 きっと私は、この感覚が本当に嫌な訳ではないんだろう。

 ちょっとばかり、この感覚も好きなのかもしれない。

 それはそれで、溜息が出る。


 その二度の溜息を、かけ君は聞き逃さなかった。

 どうやら彼は、耳がいいみたい。

 バイト中にも、何度かそう思ったことがある。

 

「どうした?

 悩み事か?」


 彼は心配そうな顔をして、私にそう話しかけてくる。


 そうです。

 悩み事です。

 今、あなたの事で悩んでます。

 あなたのせいですよ。

 あなたが魅力的すぎるのがいけないんです。


 そんなことを心の中で思いつつ、


「いや、大丈夫」


 と答える。


「そうか......

 しんどくなったら何時でも言えよ」


 彼は、そう言ってくれた。

 やっぱり彼は優しい。

 バイト中だって、

 私が困っていると助けてくれるし、

 ミスをしても助けてくれる。

 さらに、迷惑なほど話しかけてくる客も、接客を変わってくれる。

 まったく、どっちが先輩なんだか......


 きっと、彼のそういった優しさは、私だけに向けられるものではないだろう。

 バイト仲間に限らず、彼の周りにいる人みんなに向けられた優しさなのだろう。


 その優しさを、私だけに向けてほしい気持ちもあるし、そのままでいてほしい気持ちもある。

 彼の優しさを独占したいが、みんなに優しいのも彼の魅力。

 そのままでいてほしい。


 でも、私にだけ向けられるものがある。

 それは、彼の何も警戒していない顔。

 なぜかは分からないけど、バイト中の彼はいつも何かに警戒している。


 その為、どこかぶっきらぼうな優しさなのだ。

 この、何にも警戒していない優しさを向けられているのは私だけなのだ。

 そう思うと、とても嬉しい。

 私の知らないところで、他の人にも似たような優しさを向けているかもしれないけどね。

 そう思うと、すこしだけ悲しい。



 優しい彼から、優しい匂い。

 また少し、体が暑くなってきた。


「かけ君」

「なんだ?」


 気づけば私は、彼に声をかけていた。

 どうして?

 話したかったのかな?

 でも、話すことなんて決まってない。

 でも、早く何か言わないと変に思われちゃう。


「今度、かけ君のお家行ってもいい?」


 えっ?

 自分で言って、自分で驚く。

 なんてことを言っているんだ、私は。

 こんな、急に男の子の家に行ってもいいかなんて。

 ふしだらな女だと思われてしまう。

 でもでも、言ってしまったからにはもうどうすることも出来ないし。


 私は慌てる。

 咄嗟に出た言葉が、予想外すぎて慌ててしまう。

 傍から見ても慌てているとわかるくらいアワアワと。


「別にいいけど......

 なんで?」


 なんで、なんて言われても分からない。

 なんで?なんで?

 心の中で、自分に問いかける。

 当然、答えなんて出ない。


「えっと......

 ど、どんな家に住んでるのかなぁ......と思って。」


 ちょっと、苦しいあろうか。

 咄嗟に出てくる理由(言い訳)は、それくらいしか無かった。


「ふーん

 わかった

 でも妹もいるから、聞いてみないと分からない」

「えっ、あっ、うん

 ありがとう」


 どうやら、まだ動揺しているようだ。


「い、妹さんいたんだね」

「ああ」

「かけ君転生者だよね?妹さんと一緒に転生したんだ

 奇跡だね」

「そうだな」


 本当に奇跡だと思う。

 最近は少し転生者が多かったとはいえ、知人と一緒に転生するなんてかなり珍しい。

 それは兄妹でもだ。

 たとえ兄妹でも、両方に能力適性があるとは限らないらしい。

 まさしく奇跡だろう。


「妹さん、どんな子なの?」

「名前は神園宙

 俺と苗字が違うのは、義妹だからだ

 従妹かな?

 宙はすごくいいk......

 すごくいい子だ

 仲もいい」


 かけ君は妹さんの説明を「はっ!」と何かを思い出したように止め、簡潔に終わらせた。

 苗字も違うようだ。

 何か事情があるのかもしれないし、深く触れないでおこう。


 それにしても妹さんか......

 義理だろうと彼の妹。

 一応血は繋がっているみたいだし、結構な美人さんだろう。

 それに、彼に似ていい匂いなんだろうな。

 仲良くなりたいな。


 単純に仲良くなりたいのもあるが、仲良くなって「よんちゃんになら、お兄ちゃんをあげても大丈夫」と言ってもらえるようになりたい。

 そしてあわよくば、かけ君の妹を私の義妹にしたい。


 私はそんな自分でも恥ずかしくなるような妄想をして、心の中で声にならない悲鳴をあげる。

 幸せな悲鳴を。



 そんな幸せなことを考えていると、あっという間に家に着いてしまった。

 今日はここまで。

 また明日会えるんだし、それまで我慢。


 そうして、私達は別れた。

 家に帰って、彼の家を想像する。

 きっといい匂いがするんだろうなぁ


 遅めの夕食を食べ、お風呂に入って、宿題をして寝る。

 それが私の、バイト終わりのルーティン。

 しかし今日は、食事とお風呂の間に、いつもとは違うコトが入ってしまった。


 私は彼の香りを思い出し、再度興奮してしまうのである。

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