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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第三章 『異世界学校』
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第十七話 『異世界バイト』

 なんとか教科書類すべてを買い揃えることができた。

 しかし、かなりの金額を使ってしまったのは確かだ。

 今月は、もやし生活だろう。



「金食い虫......」


 妹が、家計簿を見ながらそう言ってくる。

 どうやら、もやし生活は嫌なようだ。

 ほとんどの人が嫌だろう。

 俺だって嫌だ。

 宙の給料日まではあと二週間くらいある。

 二週間もやしだけでは、飽きてしまうだろうな。

 もう二度と食べたくないと思うほどに......


 だってしょうがないじゃないか。

 教科書類があんなに高いなんて知らなかった。

 それに俺は、自分から学校に行きたいと言い出したわけではない。

 神様の命令で仕方がなく行かされるんだ。

 あの時の俺に、拒否権はなかった。


 この出費は俺のせいじゃない。

 機関の妨害だ。

 これもシュタインズ◯ートの選択だ。

 仕方がないのだ。

 エル・プサイ・コング◯ゥ


 言い訳ですね。

 すいません。苦労を掛けます。


「ごめんなさい」

「別にいいけど。おにぃが金食い虫なのは昔からだし......」


 宙は顔を上に向け、目だけで俺を見ながら言う。

 本当に申し訳ない。

 俺は苦笑いしかできない。不甲斐ないお兄ちゃんでごめんよ......


 昔の俺は、今のこの状況よりももっとひどい金食い虫だった。

 部屋にいるだけで食費やら電気代やらを使い、金を餌に生きていた。

 要はクズニートってやつだ。

 すいませんでした。


 学校に行くために金を食べている今は、その時よりもましな気がする。

 ()()()()()()、だ。

 決して正しい行いではない。


 ということで、俺は今バイト先を探している。

 妹だけに養わせるのは、お兄ちゃんとして失格だ。

 早い所、バイト先を見つけなければ......

 俺も収入の足しにならなければ......



 えっ、学費が残ってるって?

 それに関しては問題ない。

 僕らの神様が払ってくれる。

 無理に入学させたのは自分だから学費くらいは払う、と言ってくれた。


 正直、かなり助かっている。

 今度、御礼の品をもっていかないとな。

 神様の好物って何なんだろう......



 ---



 二日後、つまり昨日。

 俺のバイト先が決まった。

 家からは、あまり遠くない場所にあるファミレスだ。

 元引きこもりである人見知りが接客業。

 正直、後悔している。

 不安でしかない。


 昨日の俺は何を思ったのか、接客業をすればバイト代を得つつ人見知りを克服できるかもと考え面接を受けた。

 店の名前はジェイフリー。

 少しj(まる)yfullと名前が似ているが、きっとパクリではないだろう。

 きっと......


 色んな質問に「はいはい」言っていたらいつの間にか受かっていた。

 お陰で土日もバイトすることになったが、まあ問題ないだろう。

 あのバイト先、大丈夫か?


 なぜ数ある接客業の中でこの店を選んだのか。

 簡単な話だ。近いからだ。


 もともとはあまり乗り気ではなかったが、受かったからには本気で接客していこうと思う。


 ということで今、俺はジェイフリーの裏にいる。

 職員用出入り口の前に。

 なんだか、初めて入る場所っていうのは緊張する。

 さらに言うと、この扉の向こうには初対面の人たちがいる。

 緊張しないわけがない。

 正直、憂鬱なまである。

 だが行かなければならない。

 仕方がないのだ。


 土曜日の午前中。

 九時ごろで、日差しが暖かくなってきたころ。

 俺は扉を開ける。


「お、おはようございます

 これからよろしくお願いします」


 俺は挨拶をしてロッカールームに入る。


 中にいた三人の仕事仲間がこっちを見てくる。

 この空間にいる全員の視線が、俺に集中している。

 みんな俺を見て「こんな奴いたっけ?」みたいな顔をしている。

 こんな奴いなかったです。


 昨日面接を受けて、今日から働く。

 ここの職員達に、今日から俺が働くという情報が出回っていないのかもしれない。


「今日からここで働かせてもらうことになりまs......」

「かけちゃぁ~ん!」


 俺の自己紹介を遮るように、奥から両手を広げた女性が出てくる。

 俺に向かって走ってくる。

 今にも抱き着かれそうなんですけど。


『がしっ』


 案の定抱き着かれた。

 いきなり抱き着くのやめてもらってもいいですか?

 人見知りにはしんどいです。


 人見知りじゃなくても、別の意味でしんどいかもしれない。

 この人は美人店長だ。面接官でもあった。

 美人に急に抱き着かれるのは、人見知りでなくてもいろんな意味でしんどい。

 急に抱き着くのはよくないですよ。

 他の店員も困惑すると思います。


 周りを見ると、全員困った顔をしている。

 ほらね、言ったでしょ......


 言ってないですね。すいません。



 店長が俺から離れて振り返った。


「今日からここで働いてくれる佐々木翔琉君だ

 新人なこともあって少し変なことをするかもしれんが、仲良くしてやってくれ」

「よ、よろしくお願いします」


 さっきも言ったが、もう一度よろしくしておく。

 俺の自己紹介を遮った店長は俺についての他己紹介をする。

 変なことなんてしないと思うんだけどな。

 異世界人とは言っても、この世界の大体が日本と同じだ。

 それに、日本の転生者たちがこの世界を作っている。

 日本から来た俺が、変なことはしないと思うんだけどな......


「よんちゃん。かけちゃんにいろいろ教えてあげて」

「はい!」


 この部屋の外にいた、よんちゃんと呼ばれたその女子は、俺の方に駆け寄って来る。


 よんちゃんは俺と同じくらいの年齢で、明るい茶髪のポニーテール女の子だ。

 何がとは言わないが......大きい。

 ボンボンとバウンドしている......

 なんだか、見てはいけないものを見ている気分だ。

 そもそも、ガン見していいソレじゃないと思うが......


 目線がソレに吸い寄せられてしまう。

 何とかしなければ。


 俺の目線を吸い寄せんとする不思議な力に、全力で抵抗する。

 「抵抗してますよ」というのを顔に出さないようにしながら。


「私は鷲宮(わしみや)明香(さやか)

 仲良くやっていこうね

 これからよろしく!」

「よ、よろしくお願いします」

「そんなに緊張しないでよ。同い年くらいじゃん

 皆みたいによんちゃんって呼んでくれてもいいんだよ」


 俺はアハハと苦笑いをする。

 こういう会話はあまり得意ではない。

 なぜなら実戦経験がないからだ。

 こんなので、ちゃんと接客できるだろうか......


 というか、「よんちゃん」ってあだ名どこから来たんだよ。

 名前のどこにも「よん」なんてない。


「それじゃあ、着いて来て」


 そう言って、ロッカールームを出て行くよんちゃんこと鷲宮明香について行く。



 まず俺が渡されたのは接客マニュアルと制服、それから名札の三点だ。

 その三点を俺に渡した鷲宮は「ちょっとしたら戻ってくるから待ってて」と言い残し、どこかへ行ってしまった。


 マニュアルは教科書ほどの厚さ。

 教科書ほどとは言っても百数十ページはある。

 あまり本を読まない人からすれば、大変だろう。

 しかし、速読を得意とする俺にとっては、御茶の子さいさいだ。


 そんな接客マニュアルには、上から下までマニュアルらしいことが書いてある。

 お客様には敬語で接すること、だとか笑顔で接客すること、だとかそういうやつだ。


 いくら速読が得意だと言っても、同じような内容が百数十ページに亘って書かれていると時間がかかってしまうかもしれない。

 それに、これはマニュアル。

 軽く読み流すわけにはいかない。


 どうせ、後から全部読んどいてねとか言われるんだ。

 先に読み始めておこう。


 というわけで、俺は一ページ目の目次を飛ばしてマニュアルを読み始める。

 丁寧かつスピーディーに。



 そうやって読み進めていると、鷲宮が戻ってきた。

 手には透明なカードケースのような物と、そのケースにピッタリ入りそうな紙を持っている。

 カードケースには安全ピンが付いていて、即席の名札のような見た目だ。


 鷲宮は、持ってきたものを俺の綺麗に畳まれた制服の上に置く。

 どうやら俺の装備品らしい。


 鷲宮が紙を持っているときは見えにくかったが、こうして俺の目の前に置かれると何が書かれているかはっきりとわかる。

 その紙には右下に小さく「佐々木翔琉」、真ん中に大きく「研修中」と書かれている。


 そう、俺は研修生。

 ここでの働き方を学んでいる最中の新人アルバイターなのだ。


 実際、今はこうしてマニュアルを隅から隅まで読み漁っている。

 勉強熱心な新人アルバイターなのだ。


 そんな俺を見た鷲宮は、「それ読まなくてもいいよ」とあっさりと言ってくる。


「は?」


 あっ、驚きのあまり態度が悪くなってしまった。

 先輩に「は?」はよくない。


 それにしても、接客マニュアルを読まないのはよくないのでは?


「店長も、全部読んだことないって言ってたし」

「そうなんですか......」


 店長ですら全部読んだことないのか。

 あの店長なら本当に読んでなさそうだな。

 あの人はそういう人だ。


 最低限の接客だけしていれば、マニュアルなんてどうでもいいということか。

 まぁ俺も、マニュアルに従ってばかりでは面白くないと思う。

 面白くないからって読まなくていい物だとは思わないが。


「とりあえず、制服に着替えてきて」


 鷲宮にそう言われたので、俺は隣の部屋に行って着替える。

 制服はウェイターの服だ。


 これから鷲宮に、接客の方法などを手取り足取り教えてもらうのだ。


 バイト生活の始まりだ。



 ---



 今日は、ほとんど一日使って仕事の仕方を教えてもらった。

 一日も話していると、流石に慣れてくる。

 鷲宮のことを、「よんちゃん」と気軽に呼べるくらいには慣れた。

 「ため口でいいよ」と言ってくれたので、今ではため口で話している。

 同級生に敬語で話されるのはなんかむず痒いらしい。


 そう、俺と鷲宮は同級生だったのだ。


 だが、学校は違う。

 鷲宮は隣の学校。

 戸ノ崎高等学校に通っている。



 今はもう、そのよんちゃんは帰ってしまっている。

 しかし、問題ない。


 ここの人たちは皆、とても優しい。

 たくさんのことを親切丁寧に教えてくださる。

 さらに、とても接しやすい。

 ありがたいことだ。

 完璧に近い職場環境だと思う。


 俺は明日から正式に働き始める。

 個人的には裏で料理とかしたかったが、何だかんだでウェイターになってしまった。

 だが、これもプラスに考えよう。

 人見知りを克服できるチャンスかもしれない。

 とゆうか、そう思って接客のバイトにしたんだし。

 明日から俺、頑張ります。

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