表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第二章 『神国』
12/158

第十二話 『神様・前編』

 気づいたら遠坂は後ろに立っていた。

 さっきまでの気の抜けた遠坂はもういない。


 さらに、神様は俺を見ている。


 この状況から、実は二人は組んでいて俺は嵌められた。

 一瞬、その考えが頭をよぎったが、すぐにその考えも薄れる。


 この二人からは、人を陥れるときの雰囲気は感じられない。

 人を陥れるときは、その時特有の空気感がある。

 経験者は語るというやつだ。


 まぁ、俺の経験は嵌められたとは少し違うものかもしれないが......


 だとしても、この二人からはそれを感じない。

 おそらく隠しているわけでもなさそうだ。

 隠しているときは隠しているときで、また違う空気感がある。


 空気感の話ばかりしててもつまらないだろう。

 とにかく、この二人は俺を嵌めるつもりがないということだ。


 神様は、変わらず俺を見続けている。

 はじめは爽やかな笑顔だと思った。


 だが今はそうじゃない。

 ただただ不気味だ。


 何を考えているのか、まったく分からない。


 そんな神様に警戒していると、彼は急につまらなさそうな顔になり自分の手を見た。


「君さ、もう少し人を信用したほうがいいんじゃない?」


 突然、神様はそうつぶやいた。

 あんなに笑顔だった神様が、今ではつまらなそうにしている。

 なんだか、いじけているみたいだ。


 なぜ、そんなことを言ってくるのだろう。

 俺が警戒しているのがばれたのか?

 まぁ、隠すつもりもなかったからバレて当然なのだが......


「『神なんて信用すもんじゃない』と、死んだ祖父が言っていたので」


 爺ちゃんのことを思い出しながらそんな言い訳を口にする。


 当然、警戒していた理由はそれではない。

 警戒の原因は、神様自体にある。


 しかし、それを正直に言ってはいけない気がした。

 ()というやつだが、勘も馬鹿にできるものじゃない。

 俺はその勘に何度も救われてきた。


「祖父ねぇ......宗教で失敗でもしたのかな?」

「おそらく、そうなんでしょうね」


 神様は、祖父の言葉を宗教のせいにした。

 祖父の事情は知らないが、俺もそう思っている。


 宗教は、人の心を救うことがある。

 だから悪いことではない。


 そもそも、宗教は悪いものではない。

 宗教に悪いイメージが付いているのは一部の人間のせいだ。


 いいアニオタと悪いアニオタがいるのなら、いい教徒と悪い教徒もいるだろう。

 つまり、そういうことだ。


「馬鹿だねぇ」


 俺に向かってそう言い、神様は呆れたように首を傾ける。


 俺に言われても困るんだけどなぁ。

 失敗したの、俺じゃなくて爺ちゃんだし。

 それに爺ちゃんだとしても、馬鹿は言い過ぎだろ。


 そう思いつつ、俺は苦笑いをうかべる。


 そんなことをしていると、神様はまたあの爽やかな笑顔に戻っていた。

 笑顔になったりつまらなさそうにしたり、表情の忙しい神様だ。


 そんな忙しい神様は、また表情を変えた。

 次の表情も笑顔だ。

 だが、今までの笑顔とは違い、何か見透かしているかのような笑顔をしている。

 彼はその顔のまま、『佐々木君』と、俺の名前を呼ぶ。


「家、欲しくないかい?」


 家か......

 これまた急な問いかけだ。


 異世界転生序盤から、拠点をゲットできるのはかなり大きい。

 しかし、その提案は俺に都合がよすぎる。


 「ハイどうぞ」で家をくれる人なんていないだろう。

 それとも神様にとっては、家なんて安い物なのだろうか。

 だとすれば、神様の金銭感覚はだいぶ狂っている。


 何か、裏があるはずだ。

 考えろ。


 俺が家を手に入れることで俺に起こるデメリット、もしくは神様にとってのメリットを。


 ......分からないな。


「あっ、警戒してるんだね?

 そりゃあ、突然家あげるって言っても警戒するよね」


 俺の警戒に気づいたようで、神様が俺に話しかけてきた。

 神様は、いつの間にか普通の笑顔に戻っていた。


 人あたりの良さそうな笑顔で、俺にもう一度提案する。


「なら、こうしよう

 君が戦いで僕に勝ったら家をあげる。僕が勝ったら、君に家は貸すが、学校へ行ってもらう

 どうかな?」


 「あげる」と「貸す」では大きく違う。


 家賃を取れば、お金も入る。

 家をあげる、なんて言う神様に、家賃ごときの収入など必要あるのだろうか。


 塵も積もれば山となる。

 よく知られていることわざだ。

 つまりそういうことだろう。


 いくら大金を持っていても、お金は欲しいのだ。

 少しづつでも、いつかは大金になる。

 お金は、持っているだけでワクワクするからね。


 おっと、こんなことを言っていたら俺が金に意地汚いみたいじゃないか。

 勘違いしないで欲しい。

 俺は意地汚くない。

 それなりの生活が出来ればそれでいい。

 贅沢は望まない。


 とは言っても、もし大金持ちだったらという想像くらいはするが。



 それにしても戦いで勝ったら、か。

 勝っても負けても、俺は拠点が手に入る。

 家を借りるか貰うか。学校に行くか行かないか。

 それだけの違いだ。


 なぜ学校なのだろう。


「なぜ俺が負けたら学校に?」


 俺が学校に行くのは、神様にとってどのようなメリットがあるのか予想もつかない。


「君は、この世界でも結構強いんだよ

 そんな君が僕の学校に入ってくれたら、学校に活気がつくんじゃないかと思ってね

 僕は君を利用したいだけだよ」


 利用したい、か......


 家を貰うために、利用される(協力する)

 悪くないと思う。

 家を貰うんだ、それくらいのことはしなければならない。

 そう思う。


「それなら、戦いたくないですね

 でも、家を貰えるのだから協力はします」


 そう、戦う必要なんてない。

 俺が協力さえすれば、互いの要望が満たされる。

 それでいい。


「だめだよ

 戦うことは確定してるんだよね」


 横暴だ。

 ならば、なぜ「どうかな?」なんて聞いたんだ。

 その言葉は選択を強いる言葉だ。

 選択させないなら使うなよなぁ......


 この世界の住人は、自分のペースで話すのか、

 それとも偶然そういう人にだけ会ってきたのか。

 遠坂も神様も、自分勝手な喋り方な気がする。


 どちらにしろ、相手のペースで話されるのは人見知りにとって辛い。

 今は何とか相手に合わせられているが、いつまで続くだろうか。

 この二人だけなら何とかなるかもしれないが。

 多分......


 しかし、それでも気を抜いたら完全な聞き手になる。

 頷きマシーンが完成してしまう。

 気を強く持たなければ。


「今から戦うんだから、君にも武器が必要だろう

 これを使うといい」


 そういって、神様は懐から取り出した黒い紐を投げつけてくる。

 その紐は、普通の紐とは思えないほどまっすぐと飛んでくる。

 空気抵抗を感じさせない不自然な飛び方。

 ひらひらと宙を舞いながら、俺の元まで飛んでくる。


 俺はそれをパシッと片手でキャッチしてから観察する。

 武器として渡された紐。

 武器って、剣とか銃とかじゃない?

 紐を武器として使っている人など、俺は見たことない。


 これをどうやって使えば武器になるのだろうか。

 相手の首をこれで絞めるのだろうか。

 それができるなら殴る。

 戦闘不能になるまで殴る。


 もしかすると、この紐は間違えて渡してしまったのかもしれない。


「これは何ですか?」

「武器だよ」

「どうやって使うんですか?」

「それに魔力(マナ)を流すんだよ」

「魔力ってどう流すんですか?」

「流し方は知ってるはずだよ」


 知ってるはず、と言われてしまった。

 知らないんだよなぁ......

 そんな「当然魔力くらい使えるよね?」みたいな感じで言われても困る。


「知らないんですけど......」


 俺がそう言うと、神様は「そっか......」とつまらなさそうな顔をした。

 その顔のまま、何やらぶつぶつ言っている。

 転生直後が何とかかんとか。

 あまりよく聞こえないが、そんなことが聞こえてくる。


 勝手につまらなそうな顔をされるのは癪だ......

 まぁ、神様にもいろいろ考えることがあるのだろう。

 俺が魔力を使えなかったのが想定外だったのだ。


 俺、めっちゃ期待されてたのか。

 俺は悪くないのに、なんだか申し訳なくなってくる。


 俺が原因の分からない罪悪感を覚えている間に、神様は「まぁいっか」と、気楽な感じに戻っていた。


「まぁ、今は使えなくてもいつか使えるようになるさ

 それは君にあげよう

 転生特典と考えてくれ」


 やったー、転生特典だー

 転生特典、使えない武器。

 今のところいらないが、貰っておくことにしよう。


 せっかくの転生特典だ。

 使えるようになるよう訓練するか......


「この武器、魔力を流すとどうなるんですか?」


 俺は、紐を見ながらそう問いかける。

 正直、魔力が使えるようになるまでのお楽しみでもいいのだが、嫌いな武器のために訓練するのはめんどくさい。

 あ、でもこれで嫌いな武器だと知ったら魔力の訓練をしなくなってしまう気がする。

 聞いたのは失敗だったかもしれない。


「日本刀になるよ

 多分、君に合ってるんじゃないかな」


 それを聞いて俺はほっとする。


 日本刀なら使いやすい。

 俺は剣術道や居合道を習っていたことがあり、それなりの成績も残していた。

 この紐が日本刀になるなら、魔力訓練頑張ってみようかな。


 もしこれが槍だったら、俺のやる気は削がれていただろう。

 たくさんの武器について教えてもらい、使ったこともあるが槍の経験はない。


 槍はリーチが長いからいいと言うが、リーチが長けりゃいいなら俺は銃を使う。


 いや、そんなことはどうでもいい。

 この紐が槍だった、もしもの話なんて。

 もしもを考えたところで何も進まない。

 俺が今進めたいのは魔力訓練だ。


 聞いた話によると、能力を使うよりも、この紐のような魔力を込めて使用する道具―――魔道具を使う方が簡単らしい。

 ならば、まずは能力を使えるようになろう。

 能力を使えるようになるのを目標に訓練すれば、魔道具なんていつの間にか使えるようになっているだろう。

 能力を使う訓練を、これから重ねるのだ。


 だが、その前に神様との戦いだ。

 命の取り合いというわけではないだろう。

 俺を倒した後の話に、俺が出てくるから間違いない。

 無論、俺に負ける気はない。

 勝てば、家が貰えるのだ。

 自分から負ける理由なんてない。


 俺は、渡された紐をポケットに入れる。


「じゃぁ、行くよ」


 神様のその一言で、戦いは始まった。



 戦いが始まるまでの会話を、遠坂はただ見ていた。ただ聞いていた。

 動くこともなく、喋ることもなく......

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ