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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第二章 『神国』
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第十一話 『テレポート』

 「なんでも質問して来なさい」という神の一声以降、話が途切れ気まずくなることはなかった。


 さらに、質問と応答とはいえ、ずっと会話していたからか俺の人見知りも治まってきた。


 あれだけの強敵が数分で引っ込んだのだ。

 まさに神の一声だ。


 来てから数分で敵を倒して帰る。

 ウルトラ◯ンみたいだな。

 三分より大分時間はかかったが、誤差だ。


 助けてくれたのには変わりない。

 俺はウルトラ男と一緒に人見知りを倒したのだ。

 いや、この場合はウルトラ女か。


 無論、その倒した人見知りも、今この時だけのものだ。

 次、神の一声があるかは分からない。


 人見知りを完全に克服しないとな。

 この世界でもぼっちなんて嫌です。



 そういえばここまで来るのに、駅のような場所に連れて行かれた。

 いや、ような場所、ではなく駅なのだろう。

 外観は駅そっくりだ。

 てか、看板にも『駅』って書いてたし。


 電車が通っていないので、俺からすると少し駅感が少ない。

 が、日本に似ているとはいえここは異世界。

 この世界にとっての駅と言えば、あんな感じなんだろう。


 それで、その駅の仕組みのほとんどが前世の駅と変わりなかった。


 切符を買って、改札口を通り、よく分からない円形の台座に乗る。

 最後の工程以外は、よく知っている工程だ。


 最後以外で違うところと言えば、機械ではなく人から切符を買うくらいだ。

 そんなにたいした違いではない。


 しかし最後の台座は、元の世界とは大きく異なっている。


 台座というのは、直径2メートルほどの円形の台座で、厚さは10cmくらい、最大で五人まで同時に乗れるそうだ。

 そんな台座が7台ほど並んでいた。

 あれがこの世界での電車のようなものなのだろう。


 俺も一度あれに乗ったのだが、あの台座に乗るのにはかなりの勇気が必要だった。

 ただ乗るだけだから、台座に乗ること自体は簡単だ。


 しかし。

 しかしだ。

 俺は、俺より先に台座の上に乗った人の末路を見てしまったのだ。


 俺より先に台座に乗った人。

 その人は台座が光った直後、跡形もなく消されてしまった。


 この台座は、金を払った人を消してしまう恐ろしく無駄な装置。

 俺はそう思ってしまった。


 いやだ!

 まだ消えたくない!


 そんな不安から俺が台座に乗ることを渋っていると、遠坂が急かしてきた。


 俺はそんな遠坂に対して「そんなに死にたいのか」といったのだが、遠坂は例の「また訳の分からないことを言ってるよ、こいつ......」みたいな目で見てきた。

 彼女は結構ガチで引いているような目を俺に向けた後、この台座について説明してくれた。


 どうやらこの台座は人を消すのではなくテレポートさせるものらしい。

 それを聞いた俺は、すんなりと台座に乗ることができた。


 だが俺は今、そのことを後悔している。

 その理由は、またあとで話そう。


 俺と一緒に台座に乗った遠坂が、何やら集中したように目をつぶった直後、例のごとく台座が淡い光を放った。

 その光は幻想的で、綺麗で、吸い込まれそうになる。


 否、吸い込まれそうになったのではなく吸い込まれたのだ。

 数秒、1・2秒視界が白くなった後、気づけば俺は違う台座の上に立っていた。


 台座そのものはそんなに変わらないが、駅の内装が違う。

 なんだか、ちょっと発展した田舎の駅という感じだ。

 ギリギリ有人駅みたいな感じ。


 そのことから、俺は違う台座に立っていると理解した。


 俺と遠坂は、台座から降りた後、駅内にある売店をすべて無視して駅を出る。

 すべてと言えるほど売店が多いわけではないのだが......


 駅の外から見た光景は今までの都会と違い、少し田舎に見える。

 これもまたこの駅と同様、ちょっと発展した田舎といった雰囲気だ。

 多くの人工物が建っているが、都会に比べれば圧倒的に人工ではない緑が多い。

 さっきまでいたであろう都会は、小さく見える。

 たくさんの壁も目に入るが、意外としっくりきている。

 むしろ異世界っぽいとさえ思える。

 結構いい感じだ。

 何がいいかと言われるとよく分からないが、まぁ何となくいい。

 風景にマッチしていて、なんとも言えない新鮮な感覚を覚える。


 この世界、どうやら中心に行くほどほんの少しだが盛り上がっているようで、中心の宮殿が頂点に見える。



 話を戻そう。

 あの装置。

 あの駅にあった円形の台座は、本当にテレポートできるようだ。

 この世界の駅のほうが便利だな。


 ちなみにここに来るために買った切符は、自分で買った。

 この世界が日本人の転生者により発展したおかげで、俺が持っていたお金が使えた。 

 しかし、切符を買ったことで俺の財産はほぼゼロだ。


 今の所持金で買えるのはガム一個といったところだろう。

 だいぶ心もとない。


 俺はこれから、どうやって生きて行けばいいのだろう。

 この先が不安になる。


 しかしそれは、俺が今後悔していることではない。


 俺が後悔しているのは、お金のことではなくテレポートそのものについてだ。

 お金については、頑張ればなんとかなる。

 と思う。多分。きっと......


 ()()()()()。それはかなり便利なものに思える。

 実際、便利なんだろう。

 俺も便利だと思っていた。

 今も便利だとは思っている。


 だが、それ以上にテレポートを怖いと思っている。


 なぜか。

 それは、俺が前世で聞いた話のせいだ。


 その話というのはテレポートの仕組みについての話だ。

 たくさんあるテレポートの仮設の一説。

 だが、俺の中ではそれが一番実現させやすいと思っている。


 その仮説というものが、転移先の自分は自分じゃない、というものだ。

 この説を知っている人もいるのではないだろうか。


 転移するとき、転移先に自分と同じ記憶同じ考えを持つ複製体が生成され、転移するつもりの本人は処分されるというものだ。

 複製体の自分や第三者から見れば本当に転移しているように見える。


 クローン技術ができている世界で、一番可能性の高い転移技術はこの説だと思っていた。


 そんな転移を、俺は経験したのだ。

 今の俺は既に複製体の可能性がある。


 能力というものがあるこの世界。

 テレポートも本当にあるのだろう。


 しかし、こんな世界だからこそ、誰にも気づかれずに、クローンを作りだしつつオリジナルを処分することもできるのではないか?


 俺は今、このことを遠坂に伝えて彼女がどう思うか意見を求めている。


「そんなこといちいち気にしてたら、この世界で生きていけないわ」


 あらやだ、かっこいい。

 惚れ惚れしちゃうわ。


 肝の据わったお嬢様ですこと。

 俺も見習った方がいいのだろうか。



 ---



 あれからまた少し歩いた。


 少しづつ打ち解けてきたせいか、会話が無くなることはなかった。

 友達ってこういうものだったな。


 懐かしい()()()を思い出した。


 今そいつがどうなっているか知らない。

 知りたいとも思わない。


「着いたわ」


 俺の斜め前にいる遠坂は、突然そう言った。


 一瞬、なんのことかと思った。

 そういえば、俺は遠坂に連れられてどこか知らない場所に行っているのだった。


 遠坂のおかげで有力な情報が一気に入ってきたせいもあり忘れていた。


「......やっと着いたのか」


 大分歩いた気がするが、ようやく到着か。

 長い道のりだったな。


 俺は周りを見渡す。


 そこは、丘を少し登った場所。

 木に囲まれている。

 林の中の開けた場所、といった感じだ。


 さらにここは景色もいい。

 ここからは北方神国のすべてが見える。

 そう錯覚しそうなほどの眺めだ。


 晴天の空の下、緑に囲まれた場所。

 自然豊かで空気の澄んだこの場所。

 その真ん中にごつごつした大きな岩が一つ。


 その岩の上に、かっこつけたように座る青年が一人。

 その青年は長髪で、その髪を耳の後ろで一つに束ねている。

 そしてイケメンだ。

 そのイケてる顔のせいか、鼻につくようなかっこつけた座り方も様になっている。

 これがイケメンの力か......


 同じ長髪青年である今の汚い俺が、あんな座り方をしても様にはならないだろう。

 ただの格好つけた汚いやつだ。

 イケメンは、ずるいなぁ。


「やっと来たね」


 そう言ってイケメンは岩から飛び降りる。

 これもまた、こいつがやるとかっこいい。

 同じ長髪青年である今の汚い俺が、あんなふうに飛び降りても不気味なだけだろう。


 軽やかに着地したイケメンは、体ごと俺の方を向く。

 これまたかっこよく......

 こいつ、いちいちかっこいいな。

 そのイケメン力、俺にも分けてほしいんだけど。


 俺の方を向いたイケメンは、左足に体重をかけ、腕を組んで立っている。


「あの方が、北方神国の神様よ」


 遠坂は、あのイケメンについての説明をする。


 彼があの神様だった。

 不老不死の神様だ。


 それを知ってから彼を見るとなぜか少し神々しく見える。

 きっと気のせいなのだろう。


 美貌の神様は堂々と立っている。

 その立ち姿は異様な存在感を放っている。


「彼をここまで連れてきてくれてありがとう、小夏ちゃん」

「いえいえ、私は当然のことをしたまでです」


 神様の謝礼にへりくだりつつも、遠坂は嬉しそうだ。

 やはりイケメンからお礼を言われるのは嬉しいのだろう。

 俺がお礼を言った時とは全く違う顔をしている。

 乙女の顔だ。

 目が輝いている。


 一方、神様はというと、彼女に謝礼を述べてはいるが彼女を見ていない。

 言葉だけの礼なのだろう。


 遠坂を一度も見ようとしない神様は、爽やかな笑顔を俺に向けている。

 だが、その笑顔はずっと見ていると不気味に思えてくる。

 何を考えているのか、神様の考えが読めない。


 冷たい風が俺を煽る。


 俺の前に立っていたはずの遠坂は、いつの間にか後ろに立っていた。


 さっきまでの乙女な遠坂はもう居ない。

 真面目な顔で立っている――――――

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