第九話 王子、口説く
「メル、聖教会ってどこだか知ってる?」
天馬に乗った美少女クーリエは足元に広がる街を見下ろしながら相乗りさせているメルに聞いた。
「えっと、あそこです!あの菱形が屋根についてるところ!」
「よし、じゃあ直接降りるよ」
クーリエは天馬に高度を落とすよう合図し、ゆっくりと旋回しながら聖教会の庭に降り立った。そして・・・
「あ、あなたはもしや!聖女様か?!」
聖職者に囲まれた。
「え?違いますけど?」
「ふふん!この御方はクーリエ・サンクタ様ですよ!聖女候補様ですよ!」
「え?メル?何言ってるの?」
「おお!あ、あなたがクーリエ・サンクタ様ですか!お待ちしておりました!新なる勇者様の妹君がまさか聖女に立候補していただけるとは!」
なぜかメルが胸を張り、一番偉そうな聖職者は年甲斐もなく目をキラキラとさせる。そしてクーリエの天馬の手綱を一番質素な服を着ている男性が手にとり厩へと連れて行こうとすると、
「キュイーン!」
耳をピタッとふせ、歯を剥き出した。
「こ、これ!神獣に触れて良いのは王位継承権を持つ者のみ!勝手に触れては・・・」
「え?神獣って王位継承権を持っていることの証明なんですか?へ〜。初めて知りました。この子は私のペットなんですけど・・・」
クーリエが天馬の立て髪をゆっくりと撫でながら微笑んだ。
「そうでしょうな。サンクタ家は公爵家。王位継承権を保有する唯一の貴族でございますから」
「さすがクーリエ様ですね!」
「私は王様になんて絶対なりたくないけどね。厩の場所だけ教えていただけますか。この子を連れて行くので」
「あっ!はい!」
***
天馬を厩へ連れて行き応接間に案内されたクーリエは教会のお菓子をゆっくりと観察しぱくっと食べた。
「・・・ごくん。ふんふん、なるほど。美味しいですね」
「ありがとうございます。ではクーリエ様。面接を開始させていただいてもよろしいでしょうか」
クーリエが紅茶に口をつけたことを確認して一番偉そうだった聖職者―――司祭が話を切り出した。と、そこに、
「その前にもう少しおやつを食べてもいいでしょうか」
「・・・どうぞ」
クーリエはお菓子をゆっくりと味わいながら食べ尽くした。紅茶を飲み切り、司祭の方へ向く。
「・・・」
何も言わなかった。仕方なく、司祭が口を開く。
「面接を開始してもよろしいでしょうか」
「はい」
「では一つ目の質問です。あなたはなぜ聖女になろうと思ったのですか」
「料理が食べたいからです」
クーリエが本音をで答えた!
「!」
その答えに驚いたのは司祭。当たり前だ。聖女になりたい理由が料理の聖女候補なんているわけが・・・
「で、では次の質問です。あなたは聖女になって何がしたいですか」
「料理です。食べます」
「!!」
司祭、絶句。当たり前だ。聖女になって料理して食べたいなんていう聖女候補を聖女にするほど教会は窮困してはいな・・・
「合格です」
は?
「そうですか。よかったですね」
いや!なぜそんな他人事のような答え!クーリエは合格してしまった。世界中の魔物がクーリエの脅威《食欲》にさらされるだろう。
司祭はゆっくりと立ち上がり、クーリエをエスコートしようと手を差し伸べる。が、優雅さをかけらも持ち合わせないクーリエはどっこしょとソファーから立ち上がり、司祭を見上げる。
「どこかにいくんですか」
「え、ええ。祭壇の方へ」
そうして、司祭の案内でステンドグラスの嵌め込まれた美しい祭壇へとクーリエは案内された。
そこにはすでに2人の人物が待ち受けていた。片方は・・・
「あ!クーリエ様!」
面接中はそばにつくことができなかったメルで、もう片方は・・・
「おお!問題ばかり起こす我がハトコが1人か!で、メル嬢先程の答えは・・・」
「私はミテーナ様とクーリエ様一筋、いや二筋?ですので!殿方には興味ありませんって!」
「そこをなんとか・・・!」
王子だった。
次回:うちの桜餅を口説かないでください




