第七話 ・・・じゅるり
学園長室の高級そうなテーブルを挟んで向かい合うソファー。左に学園長母と母に頭をガッチリと掴まれた学園長。右にクーリエ母。クーリエはお茶を淹れていた。
「いい香り。セカンドフラッシュのダージリンかしら」
「はい。クッキーをお出ししたかったんですけど、誰かさんが勝手に食べてしまったので。ガトーショコラにあうものを、と思いまして」
学園長に視線が集まる。学園長母の手に力がこもる。クーリエが全員の前にお菓子とダージリンを置いた。学園長のガトーショコラは少し小さい、という嫌がらせ付きで。学園長は一口、紅茶を飲み口を開いた。
「クーリエ。君に・・・聖女候補への推薦状が届いている」
「・・・はあ?」
クーリエの眉がひそめられる。
「・・・学園長、ホント冗談下手ですよね」
「冗談じゃないし!ゴホン。・・・どうする?断るか?」
テーブルを思わず叩き母に睨まれたことで咳払いをして誤魔化した学園長はクーリエに問いかけた。
「私に拒否権はあるんですか?」
「いや、ない」
「なら何故断るか聞くんですか?!」
クーリエの質問に学園長が視線を彷徨わせる。代わりに学園長母が答えた。
「それはねぇ!クーリエちゃん!いざとなったら騎士団長の妻ということで私が騎士団を動かすからよ!武力を持って脅したら本物の聖女を探す「聖教会」だって手出しできないわ!」
クーリエは思わず母の顔色をうかがう。お茶の飲んでいた。娘の視線に気がついてクーリエ母は
「別に断りたかったら断ってもいいのよ。でも貴方に期待している人がいる、それだけは忘れてはダメ」
と優しく娘を諭した。学園長母も息子の頭から手をはなし珍しく真面目な表情で
「貴方には素質がある。あんな名前ばかりの勇者候補とは比べ物にならないくらいに。たまには自己主張しないと」
といった。クーリエは俯き目を瞑ると今日、デレゲによって黒焦げにされていた片耳豚が浮かぶ。
(もったいなかった。燃やして炭化するとか意味わからない。意味ある終わり方じゃない!骨まで使えたはずなのに・・・)
聖女の加護は目の前で殺された者を生き返らせるか料理することが選べる、と聞いたことがある。クーリエは瞳に光を宿し学園長母を見つめて
「ジュルリ・・・あっ、失礼しました。聖女候補への推薦、お受けします」
覚悟を決めた。
次回:桜餅(新キャラです)




