第三十五話 さあ、帰って料理を…!
セルドを引き留めていたメルは首を傾げてセレーネに聞いた。
「あの、その子供っていうのはやっぱり自分が産んだからいいものなんですか?」
「・・・どういうこと?」
「うちの村は貧乏だったんです。なので、小さい子たちが売られたり、捨てられたりがよくありました」
クーリエはメルが何を言っているのかよくわからないようで、目をパチクリさせていた。ただ、ミテーナはメルが何を言いたいか、分かったようで小さく頷いた。
「そうね。都市部から離れている農村だと、孤児院や奴隷商に売り渡されることは多々あるそうよ。王都だと、孤児院はないけれど聖協会が兼任しているはずね」
「ああ、あれですね。学園長から聞いたことがあります。お母様が全国の孤児院への出資額を大幅にアップしたことで学園への予算が削られたとか」
クーリエも理解したようで、にっこりと笑ってセレーネとコション侯爵とセルドの顔を順番に見つめた。
「セレーネ様は他人の子供でも気にしないタイプの方ですか?気にしちゃうタイプの方ですか?」
「私は・・・。自分の子供であれば、より嬉しいけれど。他人の子供でも、できる限り可愛がりたい、大切にしたいと思うわ」
「それなら解決ですね!セレーネ様が孤児を引き取って育てる!これで終了!帰ります!」
さあ、帰って料理を・・・!と背を向けるクーリエをミテーナは捕まえて、コション侯爵に視線を向けた。
「コション侯爵はそれでいいのかしら」
「・・・もしも、聖女様のご命令であれば」
コション侯爵は苦虫を噛み潰したような表情で、そう絞り出した。セレーネは下を向いて唇を噛んだ。そんな中、メルの手を振り解いて、セルドはセレーネのそばへより
「義母上!お願いです、離縁などと考えないでください!」
「あら、一見殊勝に見えるけれど。セルドさん。あなた、10年前もそんな態度をとっていたわよね」
セルドの地味に整った顔が、硬直した。




