第三十六話 セルドの記憶
トリック・オア・トリート!
明日、ハロウィンSSを投稿します!
侯爵家の嫡男として、ずっと大切に育てられてきた。周りのものは常に私のことを褒めていた。
うちは、金持ちだった。
父は趣味の悪い彫刻を集め、母は趣味の悪い絵を描いていた。そうやって遊んで暮らしていけるだけの財力があったから。
父は私に期待した。勇者として魔王の城の近くまで行き、生きて帰ること。
それだけで、何かしら偉い地位につくことができる。
勇者になるというのはそれだけ大きなことだった。
魔王の城には、入れない。これは常識だ。ある資格を持つものしか入れないそうだが、今までその資格を持っているものはいないという。
中に入ることはできなくても、生きて帰るだけで素晴らしい功績だ。
私はそれを手にするべく学園へ入学した。
それなのに。
「今期の生徒会長にフレール・サンクタを任命す」
フレールに勇者の適正加護があることがわかった。
実際彼はとても強い。彼の魔法はすごかったが、剣技は私の方が上だった。
加護のせいで、私は生徒会長に、勇者になれなかった。
せめて、これがプレセス・サンクタなら・・・。あれならまだ納得はできたのに!
魔法も剣技も私より、フレールより圧倒的に上で。加護の数はありえないほど多くて。それなのに芽生えた適正加護が「大英雄」だったせいで!
私は、勇者になれなかった当て付けにフレールをいじめた。
優しくて、気が弱くて、妹を溺愛していることは周知の事実だった。だから、勇者を降りろ、さもなければ妹を殺す、と脅した。
本気で殺すつもりはなかった。ただ、本当に脅しに使っただけだった。
辞退すれば、父の政敵であるサンクタ公爵家の権威にも傷がつくから一石二鳥だと思って。
結果、フレールは自殺した。そして、勇者パーティを魔王城へ向かわせなかった唯一の年となった。
ミテーナ学園長は、多くの生徒に事情聴取を行い、すぐに私がやっていたいじめの行為もバレてしまった。
もちろん、簡単に吐いたわけではない。一応、序列順に行われたため、私が事情聴取を受けた時は
「フレールさんが亡くなったと聞きました。本当に残念です」
としおらしくしていたのだ。
やはり、嘘は巡り巡って、自分に返ってくるのだな。




