第三十四話 だって、勿体無いじゃないですか
「・・・あるわよ、当たり前じゃない。あるわよ・・・」
セレーネが初めて下を向き、唇を噛み締めた。
「でも。叶わないことだと、わかっているから諦めているのよ!私だって、こんな趣味の悪い屋敷で、ただただ実家からお金を搾り取るために生かされて死ぬなんて嫌よ!それこそ、名ばかりの妻だわ!」
声を荒らげたセレーネはそこで息が切れたようで荒い呼吸を繰り返す。
「・・・お母様、これは合法なのですか」
「殺しはしない限り、合法ね。まあ、契約結婚なら契約内容にもよるけれど・・・」
「そうですか。セレーネ様。何がやりたかったかお聞きしても?」
「・・・子供が、子供が欲しかったの」
クーリエはちょこんと首を傾げた。
「子供、ですか。セレーネ様、まだ40代ですよね。ギリギリ間に合わないですか?」
「そうね。40代でも子供を産んでいる人がいるのは知っているわ」
「はい。魔物の繁殖年も大体人間年齢でいうところの30〜50くらいの間ですから」
「でもね。そうじゃないの。私は、お医者様に子供が産めない体だと言われたわ。だから、前の旦那に離縁されて、ここに嫁ぐことになったのよ」
突然黙り込んだクーリエを見てセレーネは笑った。
「貴方、今私がどうやったら生き続けたいと思ってくれるか、考えてるでしょ」
「すごいですね。読心術でもお持ちですか」
「まさか。小さい頃のミテーナと同じように眉間に皺を寄せて、指が忙しなく動いてるからよ。・・・それで、何か思いついたの?」
「いいえ。何も」
クーリエの考えとして一瞬よぎったものは、愛玩動物のような可愛らしい魔物を子供から育ててもらう、という趣旨のものだった。一度、アミレーゼにペットとしてどうか、と提案したが却下されたのを思い出して一旦横に置いておく。
「・・・ねえ。なんで私のためにそこまで頑張ってくれるの?」
「もったいないからですね」
「え?」
「だって、勿体無いじゃないですか。やりたいことがあるならそれを全てやり遂げてから死にたくないですか?ちなみに、私がやりたいのは世界中の魔物を解体して料理することですね」
「・・・ふふ。それもそうね」
セレーネは枕へ背中を預ける。そこへ!またまたあの救世主が!現る!




