第三十三話 聖女だから、聖女だから
「そうですか」
クーリエは一言そう言った。
「え?」
「ちょっと、クーリエ!あなた・・・」
「なんだと!」
セレーネもクーリエこんなにも簡単に引き下がるとは思わなかったのか、驚いている。コション侯爵も般若のような形相でクーリエを睨みつけた。
「?なんでしょう。私、最初から言ってましたよね。生きるか死ぬかは本人の意思を優先するんです。何か問題でも?」
「周りの人間が生かしてほしいと願っているならその周りの、大勢の人間の願いを聞き届けろ!聖女など名ばかりだな!」
「はい。聖女という肩書きは名ばかりですが、何か?私は望んで聖女になったわけじゃないんですよ。なんで聖女だから、聖女だからと言われなければいけないんですか?今日だってあなたが私に依頼をしなければ料理ができたんですよ。誰のせいで休日が潰れたと思ってるんですか」
クーリエが一気に捲し立てる。表情はあまり変わってないが、少し怒りが混じっているようにも見える。
「大体ですね。人間には寿命があるもんなんですよ。60も80も過ぎた方であれば誰であろうと私は見殺しにしますよ?だって、寿命なんだもん」
「だがセレーネは寿命ではなかろう!」
「はい。違いますね。でも本人が生きたくないと言ったので。・・・もちろん、私としても思うところはあります。でも本人の意思を尊重する方が結果的に後から自殺されるよりもいいかな、と思いますよね」
「でも、クーリエ。私は・・・」
「お母様の古い友人であろうと何も変わらないです。お母様にとって生きておいて欲しい存在でも、相手からどう思われているからわかんないんですから」
よほど、何か思うところがあるのか母にも強い口調で反論する。
「・・・ただ、一つだけ聞かせていただけると嬉しいです。別に答えていただくてもいいので」
クーリエは視線を母から外してセレーネへと戻した。
「・・・ええ、いいわよ。どうせもう死ぬんだもの。失うものなんて、ないわ」
「では。貴方には未練のようなものは、ないのですか」




