第三十二話 空の女神が、2人?
「・・・ミテー・・・ナ?」
セレーネはゆっくりと瞼を開けた。まるで太陽のような彼女の朱色の瞳を、ミテーナの青空のような瞳がとらえた。
「そうよ、私よ」
「・・・ミテーナが・・・2人?」
セレーネはゆっくりと瞬きして首を少し傾げた。
「私の娘よ、片方は」
「・・・そっか。空の女神が2人もいるの」
ふわりと微笑むセレーネに、ミテーナは涙が溢れる。
「・・・ごめんなさい。ごめんなさい。あの時酷いこと言っちゃって。本当にごめんなさ・・・」
「いいのよ。・・・お父様から、言われていたのは事実、だし」
セレーネは昔の妹分を頭を撫でながら思った。
この子、変わらなすぎでは?娘の前なんだからもう少しシャンとしなさいよ、このヘタレ。泣き虫。弱虫。全く、私の体調が良かったらはっきり言ってるわよ?もう・・・
その頃、クーリエとメルは、と言うと・・・。
「ねえねえ、桜餅。今ものすごく感動的なんだよ、ね?」
「はい、そうですね。私、ミテーナ様があんなに泣いてるの初めて見ました」
「私も。・・・ねえねえ、桜餅。私、なんのためにここきたんだっけ」
「はい、聖女としてセレーネ様の体調を治すためですね」
「仕事だけして早く買い物に行きたいんだけど」
「そんなことは言わないでください」
コソコソとお喋りしていた。コション侯爵はクーリエとメル、そしてミテーナとセレーネに視線を行ったり来たり。セルドは、そんな父を眺めて何を考えているかわからない。
「・・・ミテーナたちは何をしにきたの・・・?」
「あ、そうだったわ。クーリエが、娘が聖女になったの。コション侯爵から妻を治してほしいと・・・」
「えっと。こんにちは。クーリエです。いきなりですが、貴方は生きたいですか」
クーリエがすすっとセレーネに近づいて質問した。セレーネは儚げな笑みを浮かべる。
「本当に、いきなりね。私は、もういいわ」
「義母上!なぜですか?!」
「黙ってください。クーリエ様が黙っておくように、と言っていましたよね」
「疲れたのよ。人生がこんなにも疲れるものとは思わなかった。本当に、時の流れって残酷よね」
メルが飛び出したセルドの手を引いて抑える。セレーネはため息をついて笑った。
「この結婚はね。所詮、私の実家からの、補助金目当てなの。だから、もういいわ」




