第二十八話 人間は調理・・・し・・・しな・・・
「お母様、だれ?」
「私の、私の友達、だった人よ。若い頃に喧嘩して、それ以来会うことなんてほとんどなかったけれど・・・」
ミテーナは目を伏せた。コション侯爵が口を開く。
「セレーネは私の後妻なのですが。最近病に臥せっておりまして。医者からはもう後先短いと・・・」
「それで、聖女の私に頼んだんですね。・・・魔物じゃなくて残念なんて思っていませんのでご安心を」
「クーリエ様、流石に人を料理するのは・・・」
「桜餅、流石に私でもそんなことはしない・・・うん、しない」
一瞬迷ったようだが、クーリエはちゃんと踏みとどまった。
「そういえば、この方は生きたいと願っていらっしゃるのでしょうか」
「どういうことでしょう、聖女様」
「いえ、ほら。理由は数あれど自殺をする方もいらっしゃいますし。魔物の中には毒を生成するのもいて、病で死ぬように見えるものもあるんです」
自殺、と聞いてセルドがビクっとした。
「聖女様は、私の妻が自殺するような人間だと言いたいのですか?!」
「・・・別にそういうわけじゃないですよ。でも自分の価値観を人に押し付けたり、勝手に人の気持ちを代弁しようとする方もいますから」
「つまり、聖女様は私が人に価値観を押し付けるように見えるといいたいですか?!」
「・・・私は魔物を食べますが、全員が食べるべきだとは思いません。嫌なのであれば、いやでもいいんです。でも魔物が無価値だとか、自分たちより格下だと言われるのには納得がいきません」
クーリエは何週間か前にデレゲに言われたことを思い出していた。
「価値観は人それぞれのものです。私はあなたには興味がないので、どんな価値観をお持ちなのかも知りません。でも人に価値観を押し付けている方の中には自覚のない方もいらっしゃるのはお忘れなく」
クーリエは保健委員長を思い出していた。あの人は潔癖こそ正義という価値観を持っていたはずだ。この屋敷を見たら発狂するだろうな〜と考えながらクーリエはこの目の前の侯爵を片耳豚に置き換えて、眺めていた。




