第二十六話 時の流れって、残酷ね…
クーリエは馬車に揺られていた。ラベンダーのドレスを着て、一つにまとめたり、おろしてるだけの髪を複雑に結っていた。これ姿だけを見れば、まさにお嬢様だ。
「ねえメル。コルセット、こんなに締めちゃお茶菓子が食べれないんだけど・・・」
見た目が変わっても、中身まで変わることは、やはりなかった。
「クーリエ、我慢しなさい。お菓子なんてうちでいくらでも食べれるでしょう」
「そういうことではないのですよ、お母様。向こうのえっと・・・」
「コション侯爵ですよ、クーリエ様」
「そう、コション侯爵家の料理人がどんなお菓子を作るのか、それを私は楽しみにしているんです!」
ミテーナは眉間に皺を寄せてため息をついた。
「コション侯爵、ねぇ。あんなことがあったのにまだウチを頼ってくるの」
セルドさんは廃嫡されたんだったかしら、10年も経ったのね。もう10年、まだ10年。時の流れは残酷ね。フレールのことを知っている若い子たちは、どれくらいいるのかしら。息子が死んで、10年。娘に聖女の能力が、主加護が芽生えて10年。10年って、早いのね。
黙ってしまった母にクーリエは声をかけた。
「そういえば、お父様に空也を作ってもらいました!確かにとても美味しいですね!」
「あら、それは良かったわ。でも甘いものはほどほどに・・・」
「お母様も若い頃は恋愛をしていたことに驚きました!」
「・・・時の流れって、残酷ね」
「?恋愛ってよくわからないけど甘酸っぱいんですよね!どんな味でしたか?教えてください!」
「絶対嫌よ」




