閑話〜フレールの記憶〜
優秀。優等生。天才。
ずっとそう言われてきた。
「あんなのが勇者だなんて」
「学園の恥だわ」
「他にも素晴らしい生徒はいるのに」
僕は勇者育成学園在学中に勇者の加護に目覚めた。加護を得たことで真なる勇者となった僕は、その年の勇者パーティの勇者に任命される。
しかし。王子の幼馴染だから、捏造したんだろう。そんな噂が後を絶たなかった。
いつしか、僕は学園中から目の敵にされた。親友であり、従兄弟であるプレセスとも徐々に話さなくなった。
プレセスを恨むことはない。僕を庇えば公爵家の跡取りであろうと、いじめを受けることになる。母さんに言う必要もない。もし僕がいえば、加害者である彼らと、厳密には彼らの実家である侯爵家と軋轢が生まれる。そんなことは望まない。
嫌がらせは日に日にエスカレートしていった。髪を燃やされ、氷水をかけられ、課題を捨てられる。
別に大したことじゃない。僕の宝物に手を出さなければ。
魔王討伐へ向かう一週間前、いじめの首謀者である侯爵子息に脅された。
「勇者を辞退しなければお前の妹を殺す」
と。彼は優秀な剣士だった。属性魔法を全て操り、その圧倒的な力で相手を捩じ伏せる。彼の親の権力も絶大なものだ。
だけど。
クーリエに、僕の宝に、手を出すことは許さない。勇者は辞退しない。母さんが許さない。僕は公爵家の跡取りの1人だ。勇者を辞退すれば両親に、家族の名前に傷がつく。クーリエの弱みになってしまう。
クーリエを出しに僕を脅す。それは決して許されない。
僕の死は、彼らを破滅へ引き摺り込む。
僕はプレセスと、両親へ手紙を書き残して森にやってきた。
手紙には、親孝行できなかった謝罪と、クーリエを精一杯可愛がってほしい、と言う二つだけ。
僕が死ねば、叔父さんが、叔母さんが、そして学園長たる母さんが動く。王国の至宝たる勇者が死ねば、王族も動く。覚悟しておけ。
セルド・コション・・・!




