第十三話 ・・・母の方が、強かった
クーリエ・メル・学園長・騎士団長の四人は
「侍女の呼び名を考え直せ!」
「クーリエー!美味しくて上品なお菓子を買ってきてくださると嬉しいですわ〜!」
と叫ぶデレゲとアミレーゼを残して、慌ただしく去っていった。もちろん、学園長は学園長自身の空飛ぶペットに乗っている。決して、決して27歳にもなって父親と相乗りすることはない。
「このクーリエ様のお馬さん、すっごい早いですね!」
目をキラキラさせながらメルがクーリエの神獣を撫でた。
「ほう、怖がらぬのか。なかなか肝の座った女子だな。プレセスは最初、怖がっておおなk」
「父上!それよりもう屋敷が見えて来ましたよ!」
自身の小さな頃の話にクーリエが少しだけ反応をしたのを見て、大慌てで父の言葉を遮り、他のことに気を逸らす。これぞ、脳筋《父》の扱いを心得た玄人《息子》のなす所業・・・!
「そういえば、叔母様が美味しい外国のお菓子があるって言ってました。・・・楽しみですね〜!」
「あれのことですか?こ、こ?なんだっけ」
「琥珀糖。その名の通り、宝石のような見た目でシャリっとした後にプルっとして溶けるみたいな感じだ。叔父上・・・其方の父も驚いていたな」
「な、なんですか、その摩訶不思議なお菓子!お父様もご存知なかったんですか!甘いですか?しょっぱいですか?とっても楽しみです!」
クーリエが興奮を始めた。ちなみに・・・、クーリエの父は元宮廷料理人である。色々と、宮廷料理人らしいプロポーズでミテーナの伴侶として婿入りしたのだ。
・・・つまり、クーリエの料理・解体への熱量の半分くらいはこの人物の影響がないとも言い切れない。
「甘いんですよ!まるでお砂糖をそのまま食べるみたいに!」
「それは確かに学園長が好きそうなお菓子ですね!私もいっぱい食べますよ〜!」
鼻息荒く、家の中庭へ降り立ったクーリエとメルを待っていたのは・・・
「お帰りなさい、クーリエ、メル」
ミテーナ・サンクタであった。
「お父様があなたのために食事を腕によりをかけて準備していましたよ。メル、クーリエを夕食にふさわしい格好にしっかりと、用意してくれる?」
「かしこまりました!いきましょう、クーリエ様!」
「え、私お父様手伝いたい・・・やだぁ、メル離して〜」
ミテーナににこやかに見送られたクーリエはメルに引きずられるようにして屋敷の中に入って行った。そして・・・学園長と騎士団長を待っていたのは・・・
「おかえり、プレセス。あなたはしばらく休暇にするといいわ。・・・で、サルコ」
学園長母ことリタ・サンクタはにっこりと、笑って言った。
「あなたには、お話があるわ」
「い、いや。大丈夫だ。久しぶりに息子と話もしたいしな。な?」
こそこそと逃げようとする夫の手首を掴み、笑みを深めたリタ。さらに・・・
「お兄様、先ほどのリタの言葉をお聞きになりませんでした?プレセスはしばらくずっと家におります。いくらでも話せるでしょう?」
ミテーナが兄の肩に手を置いたことで勝敗は完全に決まった。
母と叔母に連行されていった父を見送る学園長は思った。
(やはり母には、従っておこう・・・)
次回「お兄ちゃんなんか・・・!」明日20時投稿です。




