第十二話 ・・・父も、強し
バーン!
学園長室の扉が勢いよく開かれ生徒会長デレゲが入室する。
「学園長!勝負だ!」
「はぁ、またか。何度負けたら君は諦めるんだ」
クーリエが筋肉を盛りに盛った学園長に連行されていた頃。学園長は今朝から数えて3度目の勝負をデレゲに挑まれていた。
「ふっ、僕は諦めないぞ!学園長に勝つまではな!」
めんどくせぇ、それが学園長の本音である。
しかしまあ、自分が魔王討伐に行かされるよりはマシだと考え、その都度ボッコボコにしている。
草が焼け焦げたり、大変なことになった学園の裏で2人は向かい合った。
「デレゲ様!頑張ってくださいまし!」
アミレーゼもいつも通りに後ろから応援しデレゲは最初よりも圧倒的に速いスピードで剣を繰り出す。学園長はそれを風で拭きとばし近づけまいとする。
もはや学園長に油断はない。油断はしていないけど本来の力は使わない。ものすごぉ〜く力加減に気をつけながら闘っているのだ。
と、そこへ。真っ白に輝く神獣に乗った、聖女と、その侍女《桜餅》、そして・・・
「何をやっている、プレセス!私とは遊ばぬのにそこの弱者とは遊ぶのか!父は悲しいぞ!」
聖女を守る(?)騎士団長が現れた。・・・現れてしまった。
「ち、父上?!なぜこちらに?遠征にでていたのでは・・・?」
「ふむ、簡単なことよ。愚息がなんかやらかしたと愛しい妻と可愛い妹に言われてしまったのでね。一夜で戻ってきた」
学園長は真っ青。デレゲもデレゲで驚いていた。それは・・・
「・・・クーリエではないか!今日の授業を抜けて何をやっていたのだ!生徒会役員としてあるまじきことだぞ!」
「こんにちは、生徒会長。ちょっと王都の神殿の方まで」
「ま、まあ。神殿ですの?なぜ?」
デレゲは怯えることなくクーリエに極めて自然に話しかけた。クーリエは食材の買い出しができず少しむくれていたが、にっこりと微笑んだ。アミレーゼも学園長にぶつけるつもりだった雷系の魔法を綺麗に消してクーリエに尋ねる。・・・気のせいかもしれないが若干笑顔が引き攣っているようだ。
「話していいことなんですかね?詳しくは学園長にお聞きください」
コテリとものすごく令嬢のような(!)仕草で首を傾げ、必殺!学園長に丸投げ!を発動した。
「・・・なぜでしょう?あなたからものすごく神聖な気配を感じるのですが。あなたを神聖な存在と思ったことはこれまで一度もないはずですのに」
軽くディスりながらアミレーゼがまじまじとクーリエを見つめた。
「ふふん!それはですね!アミレーゼ副会長さん!クーリエ様が!聖女様だからです!すごいでしょう!」
それを聞き後ろからやってきたメルが胸を張る。
「なんで桜餅が胸を張ってるの?」
「だってクーリエ様のことですから!」
「待て!まず、聖女の話は詳しく学園長から聞くとして。君は、クーリエの侍女・・・だよな?」
「はい!そうですよ?」
「クーリエ・・・君は侍女のことを桜餅と呼んでいるのか?!」
デレゲが頭を抱え、メルはニコニコと笑った。
「別にいいですよ!好きに呼んでください、と言ったのは私ですから!それに桜餅、美味しいですもんね!」
「うん、美味しいよね〜」
「美味しいよね〜じゃない!人の呼び名としてそれはあまりにも・・・その・・・」
「?だってこの桃色の髪!緑の瞳!桜餅以外該当する食べ物はありますか?!」
メルを抱きしめてクーリエが熱弁した。
「そこで熱くならないでくれ・・・」
・・・なんだか、デレゲが常識人のようになっているのだが・・・気のせいだろうか?
「そうですわよ、クーリエ。私、桜餅というのはもう少しくすみを持った大人っぽい色合いだと思っておりました。こんなに元気な色ですか」
・・・アミレーゼ?
「ん〜、それもそうですけど。可愛いからよくないですかね?」
「そこは認めますわ」
危険な会話だ。アミレーゼがクーリエに染まってしまう!そんな女子がキャッキャウフフしてデレゲですら口を挟めない中、どよよ〜ん、とした空気が割り込んできた
「・・・クーリエ。家に、帰るぞ」
学園長だ。
「父上の特訓、受けることになっちゃった・・・」
「おお!学園長、すごいですね!死んだ魚の目をする人間、初めて見ましたよ!」
クーリエは何があってもいつも通りだった。
次回「・・・母のほうが、強かった」明日20時投稿です!




