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事態急変……交錯し、混沌を生み出す

 俺たちは島を出て、はじまりの街へと戻った。対岸にはシルトがただ一人立っていて、早くこちらに来るように急かすジェスチャーを繰り出していた。急いで小舟を接岸させると、彼女は血相を変えて状況を報告し始めた。


「昨日、あんたたちが島に行った後───帝都が攻撃されてるって、報告が来たわ」

「帝都が……? 誰からの報告だ」

「あんたが振り分けた部隊の、ミザリー隊に居る子からよ。毎日定時に重要な情報だけを一つだけ手に入れることができる【ケガレ】を使って、情報が入って来たみたい」

「一体どの勢力が攻撃してるんだ?」

「そこまでは分からない。だけど……情報の精度は百発百中、これは確定した情報よ」

「分かった。シルト、すぐに皆を集めてくれ。……全員で帝都へ向かうぞ」


 俺たちはまず、第一の目標としてマーガレットを止めなければならない。だが、前皇帝を担ぐ反乱軍が止めるならまだしも、帝都を攻撃している勢力がどことも分からない状況でこれを見過ごすことは避けなければならない。政変に次ぐ政変は、さらなる混沌を生み出すことになるのだ。




───「一週間前」


 かつて帝国の一部だったサント・マティウス・マグヌス大司教区は、独立を果たし、サント・マティウス・マグヌス「教皇国」と国号を改めた。大司教は自らを「教皇」と称し、全てのマグヌス教の信者の頂点に立つ存在として君臨すると発表した。


 しかし、大司教改め教皇の治政はたった一日……それどころか、彼が帝都から帰還して、あらかじめ用意した政治文書を発表したその瞬間、暗殺された。実行犯の名は───メリヤン。


 彼女はサント・マティウス・マグヌス大司教区の行政府の長、筆頭書記官にして、内政の大半を掌握していた「人間」だった。教会の権威よりも神の教えを優先する派閥「神音派」を組織し、最大派閥として成長させた彼女が新たな教皇となることに、反発はあまり多くなかった。旧大司教は、嫌われ者だったのだ。


 そして、同じく帝国から独立を果たしたモレトガバヴィア辺境伯でも政変が起こった。


 モレトガバヴィア辺境伯領の一部分には他国を侵略し、併合した地域が含まれている。広大な領地を得るのと引き換えに、言語や文化が異なる民族を引き入れ、内情不安を抱えていたのだ。たった数日前のことであるにも関わらず、辺境伯領が帝国の庇護下から外れたという情報は、何故か民衆にも知れ渡った。そして、予てから不満を抱えていた民族からの反乱を呼び起こした。


 時を同じくして、南部でも反乱が起こった。この反乱は皇帝に関する事件には一切関係なく、さらに言えばコンスティナ帝国自体に問題があった訳でもない。───サァイール帝国による策謀の結果だ。


 彼らは皇帝崩御と同時に国内不安を煽り、予め用意しておいた反乱の種を開花させた。南部の諸侯は経済の困窮と民族問題の板挟みに遭い、容易く分断することが可能だったのだ。


───ジュンキたちは、帝都に向かった。だが、その場に居る誰もが、この情勢を把握していない。事態は既に混沌を極め、コンスティナ帝国の瓦解はすでに始まっていることを、誰も知らない。

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