昨夜
微睡みの中で、穏やかな寝息に包まれている。心地よい疲労感の中で、昨夜のことを思い出す。
───俺とリーカは、昨晩、己の気持ちをぶつけ合った。俺は彼女に手を引かれ、皴一つないベッドに横たわった。押し倒された。彼女は圧し掛かるような姿勢で、もう一度その言葉を呟いた。
「私は、ジュンキさんのことが好きです。ジュンキさんは……私のことどう思ってますか?」
今更言うまでもないことに思えた。しかし、敢えて言葉にして想いを伝えることに意義があると感じた。いや……意義がなくとも、俺はその言葉を、彼女に捧げたかった。
「リーカ……俺も、リーカのことが好きだ。愛している……」
「へへっ♪ 嬉しいです。……私も、愛してます。ジュンキさん」
もう一度、接吻を交わす。今度は一瞬ではなかった。長い時間、互いに不慣れな愛の確かめ合いを行った。そこからはもう、言葉は必要なかった。
確かめ合う度に漏れる熱い吐息が重なる。重なり合う度に深まっていく。幾度となく頭の中が真っ白に染まっていき、求め合うほどに心が繋がっていく。数えきれないほどの「好きだ」と「愛してる」は最早互いの気持ちを確かめ合う合図でしかなくなり、次第に言葉の体をなさなくなっていった───。
目が覚めても、昨夜のことは幻ではなかったと確信できる。耳の奥から注ぎ込まれた彼女の甘ったるい声が脳裏にこびり付いている。まだこの指先が彼女の柔らかさを覚えている。その肢体に自らの証を刻んだことを、忘れることはない。
安らかに眠るその横顔をまじまじと見ていると、ぴくりと眉が動く瞬間を確認することができた。どうやら彼女もそろそろ起きる時間のようだ。
「おはよう、リーカ……身体は大丈夫か?」
「……おはようございます。ふわぁ……まったく問題ないですよー」
「苦しいとか痛いとか、全くなさそうか?」
「痛い……? どこが痛くなるんですか……?」
どうやら、リーカの身体は丈夫のようだ。まだ多少の疲労感は残っていそうだったが、あまり休んではられない状況に変わりはなかった。
「洗濯が終わってるはずだ。下着と服を持ってくるから、そこで待っていてくれ」
「ふぁい……」
眠たげな返事を受け取る。不覚にもその姿を愛らしいと感じてしまった俺に、二度寝する彼女を起こすことなどできなそうだ。頼むから戻ったときに起きていてくれと祈るしかなかった。
「おはようございます。ジュンキさん!!」
「よかった。起きてた……だが、一応待っていてと言ったはずなんだがな」
洗濯物を取り込んでいる間に、リーカはしゃきっとした様子に変わっていた。たった数分の間に完全に覚醒させることができるとは、向こうの世界でも社会人としても生きていける才能の持ち主のようだ。大学生にしても、一限に遅刻することはないだろう。
一糸纏わぬその姿を見慣れるにはまだ時間がかかりそうだった。視線を逸らしながら洗濯物を渡すと、布が擦れる音が微かに聞こえてくる。湧き上がるものを堪え、着替えが終わるのを待った。
「着替え終わりましたよ。……別にみてても良いのに」
「今は時間がないからな。……我慢できなくなったら、困る」
何もかもを忘れ去って二人きりで過ごすのも悪くないが、帝国はクーデターによる政変が発生し、一刻の猶予もない状況になっている。俺はマーガレットを止めなければならないのだ。
「私たち、恋人同士になったってことでいいんですか?」
「俺はそのつもりだ。なんなら、それ以上に責任を果たすべきだとも思っている」
「シルトさんが言ってました。どんな時でも、恋人は朝におはようのキスをするって」
「……またか。変な入れ知恵……」
全くの不本意だったが、期待するように瞳を閉じる彼女の愛らしさに免じて、その希望に応えることにした。
「へへっ♪ これからは毎日、ですね♪」
「……はぁ。嬉しいことは嬉しいが、困ったことになったな」
昨夜の甘い余韻が残る「愛の部屋」を後にした。
平日の昼投稿やったらちょっとくらいぴんくでも、ばれへん




