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旧世界から(2)

 兵器に改造された俺の身体は、全ての能力が向上していた。鋭敏な五感に加え、世界トップクラスのアスリートにも勝る身体能力───それらを手に入れた代わりに、決して彼らに逆らえないよう「首輪」を付けられた。命令拒否した途端毒物が注入され、即死する首輪である。……まさか自分がデスゲーム参加者の気分を味わえるとは思わなかった。


 ゲノム編集がどうとか、何を言われようとまるで古くからの特撮ヒーローの悪の組織に改造された人間のようにしか思えないが、バイクの免許も持ってない以上俺は「戦闘員」の一員にしかなれないのだろう。実際、彼らの命令には逆らえないのだ。


 研究施設の中で、様々な実験に協力した。皮肉にも彼らの奴隷のような扱いを受けたこの三か月間は戦地より余程気楽で、安全な暮らしを満喫することができてしまった。銃声や砲声を聞かない夜に安堵して、簡単に眠れてしまうようになった自分自身に嫌気がさした。こんなことならPTSDにもなっておいた方がマシだった。誰でもいいから俺に罰を与えてくれと思っていた。


 三カ月の研究施設での生活を追え、「実地試験」に呼び出される。軍用のコンテナの中に押し込められ、輸送機の中で約十時間ほど───あまりにも長い時間のフライトなので、空中給油等も行われたかもしれない。その移動時間の長さは、俺の居た研究施設が「大国」にあったことと、これからまた紛争が行われる地域に送られることの両方を意味していた。


───到着した国は、確かに政変を求め内戦が発生した国だった。だが、俺がかつて渡った国とは遠く離れた別の国だった。当たり前のように俺のお目付け役として同行しているエージェントから軽く状況の説明を受けた。どうやら民間軍事会社、通称PMCの警備兵という「名目」で、この場に俺は送られたそうだ。


「……あの国はどうなったんだ」

「手を引いた。用済みだからな」

「……あの政権を倒すことはそっちの国にも有益なんじゃなかったのか」

「国益というのは総合的に判断されるものだ。確かに内戦の開始時は民主主義政権を樹立し、我が国の強い影響下に置くというプランが最善だった。しかし、この三カ月の間に情勢は大きく変化した」


 彼は、現在の国際情勢について話した。


 欧州にて、対立陣営にある方の軍事大国がかつての友好国に侵攻、初期の攻勢こそ成功したが、初めの数週間のうちに戦線は膠着し、今月に入っても制空権を確保できず、増援のために各地から兵力が引き抜かれているらしい。


「つまり、あの国を政府転覆させようとしていたのは、対立国の軍事的プレゼンスを低下させるためだけだった、ってことか……?」

「無論、それだけではない。さっきも言ったように、友好的な政権を樹立できれば最高だった。だが、我が国の国益に最も繋がるのは彼らの持つ通常兵力を少しでも削るために欧州への武器供与を行い、ある程度戦線が安定したタイミングで融資を行うことだ」

「借金苦にして自分のところの武器を売って、金を返せなかったら言いなりにするってことか?」

「馬鹿げた言い方をするな。防衛のために力を貸してやっているんだ。将来的に恩返ししてもらうのは当たり前だろ?」

「……気に入らないな」


 だが、彼の言い分にも理はあった。大国から攻められているのだから、同じく良質な兵器を持った大国からの軍事支援が無ければ侵略者に屈することになるが、支援する側としても財政や武器産業への還元が無ければ継続的な支援も難しく、合理性のある判断が行われたと評価できる。


 だが、結局命を落とすのは支援する国の国民ではない。侵略者も防衛者も、市民も義勇兵も、必ず大勢が死ぬ。だが、彼らの心底にあるのは結局のところ「国益」だ。たとえそれが正しい判断だったとしても、直接血を流さずに恩着せがましく利益だけを受けようとするその姿に辟易する。


「どっちにしろ君は我々の命令に従わなければならない。気に食わないのなら、死んでもらう」

「……分かったよ」


 渋々、彼についていく。


「さて、実地試験だ。我々の情報によると、我が国の領事館が二十四時間以内に襲撃されるという予測が立てられている。君にはその『警備』という名目で領事館に迫る武装集団を殲滅して欲しい」

「試験……実戦じゃないか」

「君は兵器なんだ。実戦で使ったデータが無いと困る」


 改めて「兵器」と言われると、胸が締め付けられた。俺にもう、人権はないのだ。銃や爆弾と同じで、ただ人を殺すためだけの道具と成り下がったのだ。だが、不思議と今までと何も変わらないようにも感じた。


「いや、違う。俺はもう人間じゃない。兵器なんだ───」


───戦闘は、あっという間に終わった。領事館の建物が包囲されようとも、強化された俺の身体はいとも容易く彼らの攻撃を躱す。そして、単純作業のように頭部に銃弾を撃ち込んでいく。


たった一晩で百人は殺した。それでも俺は、なんとも思わなかった。敵だと言われたとはいえ、殺せと言われたとはいえ、等しく同じ命であるべき彼らを殺しても、感傷的になることは全くなかった。俺は兵器に改造されて、そう思うようになってしまっていた。……いや、元からそう思うようになっていたのだ。


「俺は……俺は……元から……」


 そこで、俺は気付いてしまった。───改造などされなくとも、最初から俺は「人殺しの道具」だったのだ。どんな理想を抱えていようと、どんな大義を掲げていようと、世間の評価が正義だろうと悪だろうと、目の前の敵を考える前に殺し、目的を遂行する時点で、その存在は兵器と同様だ。


 俺は、戦争が嫌いだ。憎んでいる。そして、戦争を終わらせるために銃を取った。そのはずだった。しかし、その時点で俺は「戦争」の中に組み込まれ、皮肉にも戦争を回すための歯車になってしまっていた。そして、今の自分自身の存在は……歯車より醜悪な存在だった。


 脅されたからと言って、都合よく百人余りを殺す存在……そして将来的に多くの命を奪う倫理上問題のある改造人間兵士、その先駆けとして俺は存在している。俺一人だけでその流れが止められるとは思わないが、俺自身が「構造」の中に組み込まれること自体に、嫌気が差した。


「"アルファ"、新たな標的を発見した。排除しろ」


 著しく向上した視力は、夜目が利いた。その目で捉えたのは、泣きながら武器を拾い上げる少女だった。どのような事情があるのかは分からないが、俺が何とも思わずに殺した大人の男が持っていた銃を血だまりから拾い上げ、その重さからふらつくように歩いていた。


「排除しない。俺はもう従わない」

「何を言っている。命令を拒否すれば首輪の毒が───」

「必要ない。俺の最期は……俺が決める……ッ!!」

「何をする気だ!!」


 手榴弾のピンを抜く。三本のピンを同時に抜き、覆いかぶさる。俺がどんなに丈夫になったとしても、さすがにこれで死なないなんてことは、あり得ない。こめかみに銃口を当てて、起爆までの時間を数える。


「さん……に……いち……」


 引き金を引いた。


 世界が、終わった。

ブラジル戦・・・惜しかった

総括

・押し込まれる時間が多すぎた

・後半からの相手の戦術変更が成功した

・日本はハイドレーションブレイクでも修正できなかった

・途中出場した選手がゲームを変えられなかった

のが敗因・・・結構多いな、惜しくはなかったのか・・・?

接戦になったのはGKザイオンの失点阻止も確かにありますけど、冨安と堂安の献身あってこそなので、特に冨安には評価点7.1くらい上げたいんですが、6.0って書いてるメディアあって、びっくりしました

日本の戦術が攻撃的WBに守備をめっちゃ頑張らせるという結構精神論的な側面があったところを突かれた感じですかね

いやー、悔しい

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