前帝、座して待つ
リーカの家、質素な小屋の中で一人の男が座して待っていた。彼こそがコンスティナ帝国皇帝ボスティモス・ソン・ヴェルオーモなのだとしたら、床に片膝を立て座るその姿は彼の身分に不釣り合いにも程がある。しかし、彼から威厳の感じる声が発されると、彼の正体を信じざるを得なかった。
「君がジュンキか」
「名前まで知っているのか。……一応確認するが、貴方が皇帝ボスティモスということでいいんだな?」
「うむ。確かに私は前帝だ」
「前帝……つまり、退位はしている、ということか?」
「今の皇帝は間違いなくマーガレット・ロンドベルだ。我は所詮皇帝に仇なす逆賊の長に過ぎん」
自らをも逆賊と称する皇帝の目は未だに威光を放っており、とても逆賊と呼ばれる存在には見えなかった。無論、一度死んだ人間とも思えなかった。
「聞きたいことは山ほどあるが……まずは聞かせてくれ。俺たちをここに呼んでまで話したかったこととは、なんだ?」
アルベルトからは反乱軍の指導者に会えとしか言われていない。だが、皇帝が特別な目的があってこの場に俺を呼んだのは自明だった。
「うむ。我にも話すべきことが山ほどあるが、まずは我が息子グラティアスについて話しておこう」
「グラティアスはジャルヴァナ公国の領主だったよな。今頃マーガレットの軍に捕らえられている、とかか?」
「その通りだ。サント・シュヴェル城内で我が息子は軟禁状態になっている」
「助けに行ってくれ。と?」
「いや、『助けるな』……救出作戦は行わない」
皇帝が第一に息子の名前を上げたのは救出作戦を頼むためだと思ったが、彼から出たのは「助けるな」の一言だった。それならば、何故彼の息子が軟禁状態にあることを先に説明したのか、理解に苦しんだ。
「どういうことだ……?」
「救出作戦は行わない。だが、次代の皇帝として知るべき真実を、息子はまだ知らぬ。……その真実の一端を、君に託さねばならない」
「自分で伝えればいいだろ。何故俺に?」
「我は二度と生き返れない。それに、君にとって……いや、君たちにとって必要なのだ。だから、君たちに託すということだ」
「君たち……?」
「居るのだろう。そこに……【断罪】のリーカが」
小屋の外で待機させていたリーカの存在に、皇帝は気付いていた。いや、俺と彼女が常に行動しているという事実から推測しただけに過ぎないのかもしれない。だが、問題はそこではない。グランペに不遇の立場を強いて来た帝国の皇帝が彼女を招き入れること自体、全く想定していなかったのだ。
「リーカ、入っていいぞ」
「は、はい……!!」
「待て……さすがにここに三人も居ると、狭い。そう思わんか?」
皇帝はそう言って、外に出た。余程長い時間小屋に引きこもっていたのか、眩しそうに瞼を細める。
「こっちだ。ついてこい」
彼は小屋から離れ、どこかに向かっているようだった。数分後に辿り着いた場所には、地下へと続く階段があった。
「……こんなもの、最初島に来た時はなかったが」
「簡単には見つからぬさ。この場所は歴代皇帝しか知られていない神聖な場所なのだ。……さて、この『施設』のこと、そしてグランペの秘密について……我に教えれることは全て教えてやろう」
皇帝の口から、時を越えた真実が明かされる。
ドラゴンズ、勝ったね!!
次の話は今日中に間に合うかは分からないです。明日はワールドカップを見ないといけないので、早く寝るのだ




