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いざ、再び「はじまりの街」へ行かん

 アルベルトの発言に再び空気が凍てつく。それは緊張感からなどではなく、純粋に誰一人としてその言葉の意味を理解できなかったからだ。


「いや、アルベルト……さっき、ヴェルオーモ三世は崩御した、って言ってなかったか?」

「そうだな。確かに皇帝はあの女狐に毒を盛られて死んだ……だが、帝国には切り札がある。ありとあらゆる原理や法則を捻じ曲げるような存在がな。ジュンキくんはそれをよく知っているはずだ」

「───グランペか」


 グランペ、【ケガレ】と呼ばれる不思議な能力を使役する存在───大剣を無から出現させ、建築物を瞬時に完成させ、透視紛いの望遠鏡を生み出し、数世紀技術を先取りした狙撃銃をも使用する人間が、この世界には居る。彼女たちが持つ何かしらの力で皇帝が蘇ったとすれば、通らないような道理が通ってしまう。


「待ってくれ……『帝国には』ということは帝国以外の国にグランペは居ないのか?」

「知らなかったのかい? まぁ、知らなくても仕方がないか。グランペが帝国特有の存在というのは一般市民には伏せられているからね」


 グランペについて調べようとしても、詳しいことは分からないことが多かった。騎士が知っていて書物等には何の情報も載せられていないということを考えると、グランペは多くの機密を抱えた存在なのだろう。彼女たちの情報は、市民からの憎悪を盛り立てる以外のものはほとんどが隠蔽されているようだった。


「それで、皇帝が死ななかったのはどういう理屈だ。どんなグランペが居たんだ」

「そこまで教えることはできないな。……といっても、俺たちですら皇室直属のグランペのことはあまり詳しくないんだ。そこに居るエアスちゃんの方が詳しいんじゃないのか?」


 エアスは自分を指差して「私?」というようなジェスチャーをした。


「別に、隠すつもりはないけど……大した情報は持ってないと思うよ」

「エアスは分からないだけで、俺たちが知らない情報が意外と重要かもしれない。なんでもいい、教えてくれ」


 彼女は絞り出すように知っていることを喋ろうとしているように見える。程なくして妥協したような感じで語り出した。


「うーん……皇室には複数人のグランペが居たはずなんだけど、私はその誰とも顔を合わせたことが無いから、正確な人数も分からないんだよね」

「グランペは一つの街につき原則一人、と聞いたが」

「ごく稀に特殊な【ケガレ】を持ったグランペが産まれると皇室が連れて行っちゃうから、その規則は適応されないみたいなんだよね」

「何よ、私もそんなこと初めて聞いたわよ」

「ど、どんな【ケガレ】の人が連れていかれるんですか?」


 エアスは意外そうな顔をした。やはり、「これくらいの情報知っているはず」という思い込みがあったようだ。


「私の場合、【狙撃】……投石や弓矢では届かない位置の目標を正確に撃ち抜ける【ケガレ】だね。私は皇帝にとって都合の悪い人間を暗殺するためだけに時々呼ばれる、って感じだね」

「確かに、特別扱いするくらいには役に立ちそうだ。……他には?」

「分からない……けど、皇帝が生き返ったってことは何かしら蘇生に関係する【ケガレ】を持つグランペは居たってことになるよね」

「なるほど……」


 帝国はグランペへの差別を止めるつもりはなかったが、少なくとも帝国は彼女たちを利用していたらしい。これは皇帝によるグランペの私物化とも取れ、あれだけ彼女たちに酷い扱いをしているにも関わらず自らが定めた原則すら破って特殊部隊的運用を行っているのは正直不快でしかなかった。


「一度死んだなら、殴っても不敬罪にはならないか……」

「おいおい、物騒なこと言わないでくれよ。反乱軍の指導者だって言ってるだろ!!」

「悪いな。俺は結構短気だし、根にも持つほうなんだ」

「最悪の組み合わせね……。リーカ、本当にコイツなんかでいいの?」


 散々な謂われを受けたが、今更自分自身を曲げるような人間ならあの女神はこの世界に俺を転移させていないはずだ。何を言われても諦めはついている。


「ふぅー……やれやれ。ジュンキくんは聞いてた話通りの愉快な人間のようだね」

「聞いてた……?」

「密偵だよ。気づかなかったかい? 意外と抜けてるところもあるんだな」

「……マーガレットが俺を監視しているのは薄々感づいていたが、まさか帝国にも監視されていたとは……一体いつからだ?」

「そう構えるな。港町近くの森を突っ切った辺りでようやく補足できたんだ。密偵がジュンキくんについての報告を始めたのもヴェストミノに入ってからだよ」

「俺は思ってたよりも詰めが甘いようだな」

「その通り!! だから、騎士一同で今後の作戦を考えた。聞いてくれ」


 アルベルトは腰にぶら下げていたナイフを使い、地面に何かを刻み始めた。どうやら帝国全土の地図を描いているようだ。


「まず、ジュンキくん一行が居るのは帝国北部、ヴェストミノから少し離れたくらいの位置だ。そしてここから君が言うはじまりの街に辿り着くには馬で二日かかる。徒歩なら一週間くらいかかるものだと思ってくれ」

「俺なら四日掛からない」

「おいおい、バケモノか? いや、バケモノでもいい。しっかりと一週間かけて移動してくれ。俺たちの作戦にも支障が出るからな」

「どんな作戦だ?」

「帝国全土のグランペに協力を仰ぎ、ジュンキくんの傘下に置こうと思っている。各都市に勅書を配る予定の伝令兵の中に紛れた俺たちの部下が、彼女たちを見つけ出して解放を煽る」

「それじゃあ、まるでマーガレットが出した勅令が嘘じゃなくて真実になったみたいじゃないか」

「それでいいんだ。どうせ誰も彼もがジュンキくんのことを疑っている。逆に言えばグランペを纏めて反乱を起こそうとする君に付き従う者は居るんじゃないかな。信じる者が多い出来事は、それがどんなに看過できない誤謬が含んでいたとしても信ずるに値すると思ってしまうのが人間の性質なんでね」


 アルベルトの言い分は理解した。俺は彼の提案を受け入れる。


「いいか? 一週間だ。必ず七日間で『はじまりの街』に到着してくれ。俺たちは何とかして、その日に合わせて兵力───グランペをジュンキくんの元に集結させる」

「分かった。他に気を付けることは?」

「若者は俺たちより先に死ぬな。それだけだ」


 彼はそう言い残して元の方角に戻っていった。それは当然帝都に戻るということを意味しており、恐怖政治のお膝元に戻るということでもあった。格好つけるだけつけて、自ら死地に向かう彼を見送る。


次会う時に彼が死んでいれば、殺してやろう。

本当は体調悪くて休みたいけどドラゴンズが勝って嬉しいし、スペイン対サウジ見たいから起きるために超スピードで書いて投稿するよ

あっ、日本チュニジアに勝ちましたね!

でも、グループステージ突破してもブラジルかモロッコと戦うことになる・・・

何となく高さのあるモロッコには苦戦しそうなので、ディフェンダーが高齢化しているブラジルの方がまだ勝算ありそうな気がするのは私だけでしょうか(ノーガードの殴り合いなので、運要素絡みますが)

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