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街に到着、一日目

 小舟に揺られて数時間、遂に対岸に辿り着いた。


「ありがとう、リーカ。また会おう……!!」

「えぇ、満月の時に……!! ジュンキさん、お気をつけて……!!」


 結局昨夜は食事の後もリーカと語り合い、すっかり打ち解けてしまった。善き友と出会えたといったところだろうか。それに、彼女は「どうせ使わないから」と言って、貯蓄の一部を俺に持たせてくれた。彼女自身は「私のお金を全部あげます」とまで言っていたが、さすがに受け取る訳にはいかなかった。彼女には内緒だが、いずれ金銭を稼ぐ手段を見つければ色を付けて返済するつもりだ。


 彼女の背中が見えなくなるまで見送ると、いよいよ任務を開始する。前日の打ち合わせ通り人気のない場所に降ろしてもらったため、遠くから街の様子が確認できた。


「城壁は無いな……。煉瓦造りの家が多い。一見中世風の建築に見えるが、木製や石造りの建築物は著しく少ない、なるほど……」


 街の規模はそれほど大きくないが、恐らく数千人の人口が居るものだと思われる。人々の流れを観察していると一つの問題に気付く。───服装だ。リーカは何も指摘してくれなかったが、このまま元の世界の服装を着たままだと目立つだろう。


 そして問題は他にもある。この数週間の拠点をどこに置くか───寝食の問題だ。宿を取るだけなら簡単かもしれないが、一晩泊るだけではなく、出来れば貸家があればいい。これから「やること」を考えれば必要性は高い。


 色々と思考を巡らせて、街の中へ入っていく。どうやら西洋系の人種しか周りに居ないようで、見慣れない東洋人の見慣れない服装が警戒されているようだった。最優先事項を片付けようか───。


───数時間後、俺は現地人の服装を着用していた。現地人の服と言っても、平民の服ではない。ある程度格式が高そうな店を選び、ある程度の位がありそうな貴族の服を選んだ。店主には「遠くの地から来た商人」と説明したが、当然怪しまれることとなった。だが、金銭が信用度に直結するのは現代も過去も異世界も同じらしく、金さえ出せば笑顔で売ってくれた。


───さらに数時間後、俺は案外簡単に拠点を手に入れることとなった。まさに今空いている貸家が見つかったのだ。念のために半年分の家賃を先払いしたが……それでもリーカから受け取った金銭は一割ほどしか減っていなかった。


「リーカ、どれだけ金を持て余してたんだよ……」


 仮ではあるが新たな生活拠点に、道中で買った物資を置いていく。とりあえず、今日は日が落ちるまで街を探索し、夜通し「活動」することにした。


「───日が沈んだな。じゃあ、やるか……」


 手に入れた服の中で最も色合いが暗い服を着用し、闇夜の中を駆ける。目的地は「学校」だ。学校と言っても、恐らくだがこの街の学校は貴族の子供だけを養成するための教育機関だ。

 この「学校」はほとんどの知識を独占的に有している可能性がある。実を言うと、この街に「図書館」が一つもなかったのだ。書店も無く、庶民が知識にアクセスする手段は一つもない。……であれば、貴族の屋敷か学校くらいにしか図書物はないだろう。


(警備兵が立っているな……だが、やはり警戒が薄い)


 警備が緩いのは想定通りだった。この街は城壁すらない。余程争いの無い場所なのだろう。ヴェリオッタの話によると平和な世界ではないはずで、ほとんどの戦闘要員は前線や戦略上の要衝に送られているはずだからだ。


 学校の蔵書部屋に忍び込み、手早く目当ての本を盗んでいく。地理・歴史・技術・宗教……この世界について知るための本だ。幸い、自動翻訳機能で全てが日本語に見える。読むのも容易いだろう。あまり抜き出すと盗んだことがバレてしまうかもしれないので、必要最低限に留めて家に戻った。

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