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閃光、走る

 俺はまたリーカとミザリーが待つ地下へと戻った。


「ほら、街の連中を何とか鎮めたぞ」

「あれで解決したと本気で思ってるのかい?」


 ミザリーは不満そうにため息を吐いた。


「あんなの、欺瞞工作で問題解決を先送りにしただけじゃないか」

「いいや、言ったはずだ。地上の連中を鎮めることが出来たら仲間になるってな」

「ひ、卑劣なヤツだな……。まぁいいや、リーカちゃんと一緒に行けるなら」


 そう言って彼女はリーカと顔を見合わせる。


「へへっ♪」

「ふひっ……」


 リーカと違いミザリーの笑顔は少し不器用で気味が悪くもあったが、その表情を見て安堵した。


「リーカ、どうやって打ち解けたんだ?」

「女の子の秘密、です♪」


 相変わらず可愛らしい微笑みを浮かべる彼女を見て腹の底から暖かく心地よい気持ちが沸きあがってくる。すると、シルトが俺の脛を蹴り上げた。


「い、痛いな……これ、毎回するのか?」

「ふんだ」


 俺たちは四人で地上を脱出する。商業ギルドの世話になり、ミザリーの分の服も調達し、足早に街を離れた。次の街はそう遠くない位置にあると聞き、徒歩で向かおうとした。その道中、夕焼けが照らす平野にて───俺は、不自然な発光を目にした。


「……マズルフラッシュ!?」


 それは、間違いなく銃から発せられた光だった。確かに、爆弾や花火がある世界に銃があることは不自然ではない。だが、調べた限り銃のような筒状の物から弾を射出する兵器が開発された事実は確認できなかった。


 それだけではない、マズルフラッシュが発生した場所は三キロメートル以上先で、これは現代の大口径のライフル、即ち狙撃銃でしか狙うことができない距離だ。火縄銃やマスケット銃が開発されただけでは説明が付かない。


 この光が本当にマズルフラッシュなのか、何故狙撃銃がこの世界に存在しているのか、そんなことを考える時間はない。通常銃弾は音より速い速度で飛翔し、弾着まで数秒とかからない。俺はすぐ様に叫んだ。


「横に飛べ!! 頭を下げろ!!」


 まるで号令を受けたようにシルトは俺の言葉に従い、リーカはミザリーを抱えて地面に伏せた。だが、弾着点は、彼女たちから離れた場所だった。土が跳ね上がり、弾痕が残された位置を確認する。


「……俺を狙っているのか!!」


 狙撃手が居るであろう場所は、太陽の光でスコープが反射している。どうやら狙撃失敗後も位置を変えずに俺の息の根を止めるまで撃ち続けるつもりのようだ。……こちらには飛び道具がない、反撃することができない相手には狙撃地点が露呈しても問題がないようだ。


「シルト、壁が作れるだけのストックはあるか?」


 シルトは材料から構築物を創造することができる。しかし、それは彼女自身が能力で取り込んだ木材等が充足しているときに限られる。つまり、材料をストックするという概念があるのだ。


「さっき取り込んだ丸太でバリケードくらいなら!!」

「作ってくれ!!」

「積み重なれ。汝の育んだ大地を切り開き、涵養の先にあるものを掴み取れ。……顕現せよ、我に力を与えたまえッ!!」


 彼女は祝詞を唱えた。バリケードが完成すると、直後銃弾がバリケードを貫通した。


「駄目……!! なんなのよこれ!!」

「ミザリー、相手の様子を確認することはできるか!!」

「全てを見透かせ。一切合切、我は全てを看破する。……顕現せよ、我に力を与えたまえッ!!」


 ミザリーの【望遠】が顕現する。それは文字通り望遠鏡のようだった。


「ボクの【ケガレ】は念じた場所の景色を投影する!! 効果範囲は街一つぶんくらい!! 見えるよ、ジュンキ!!」

「見せてくれ!!」


 また銃弾が着弾する。銃弾の勢いはバリケードで弱まっているが、一刻の猶予も許されない状況だった。彼女から【望遠】を受け取ると、レンズには異形の銃を構える少女が映っていた。


「この服装……グランペか!!」


 スコープを覗き込むその姿に、既視感があった。その背丈、赤い髪、纏う雰囲気───何から何まで、シルトと瓜二つだった。脳裏に一つの可能性が浮かぶ。


「シルト、ちょっといいか?」

「何よ……今、それどころじゃ!!」

「いいから、見ろ」


 俺はその少女の姿を見せた。彼女の瞳は、片割れのような彼女をしっかりと捉えた。


「どう思う?」

「赤髪はお母さんの髪色……それに、顔立ちも似ているわ。もしかして、私の双子の妹だって言いたいの!?」

「あぁ、そうだ。こんな形で姉妹が相まみえることになるとはな。再会……ではないか、初めましてって挨拶した方がいいんじゃないのか?」

「言ってる場合? このままだと私たち、この子に殺されちゃうのよ!!」

「いや、多分だが狙われているのは俺だけだ。俺も殺される気なんて毛頭ないがな」


 だが、このままでは間違いなくその銃弾は俺を捉えることになるだろう。しかも、木の板のバリケードで遮っている分他のみんなに流れ弾が当たってしまう可能性もある。リスクを考えれば、ここで留まるのは間違いなく愚策だった。


「……一分間に二発、三十秒の発射感覚。引き金を引いてからの弾着時間、三秒……行けるな」

「ジュンキさん、もしかして何か策があるんですか!?」

「……あぁ、みんなはここに留まってくれ。俺は攻撃の後、ここを飛び出す」

「正気かい? 自殺行為にしか聞こえないが」


 狙撃手までの距離が三キロほどだとして、俺の脚なら八分か九分ほどで目標に到達できる。さらに、その間に受ける銃撃はニ十発も無い。連発できないなら対処することも容易になるように思えた。


 弾速は……初速こそ不明だが、これだけ射程が長いのであれば距離による速度の減衰も少ないものと見ていい、平均速度を計算し、そのまま弾速とする。音速に近い速度ではあるが、残り一キロまでは発射してから弾着まで一秒も猶予がある。


 問題は残り一キロを切った地点だ。二分から三分の間、四発から六発の銃弾を発射と同時に避けるのは無謀だ。そのため、直進せずにジグザグで走る必要がある。つまり、想定以上の時間、弾を避けて前に進み続ける必要が出てくる。


 つまり、実際に目標に到達できるのは甘く見積もっても十五分───三十発もの銃弾を避け続けなければならないのだ。正直、無茶な作戦だった。こんなものを策と呼ぶのなら、パチンコ店は大富豪で溢れかえっていたに違いない。だが、それでもやらなければならないのだ。


「大丈夫だ。しっかりとシルトの妹を無力化して、こっちに連れてくる。俺にできないと思うか?」

「こ、この人そんなに凄いんですか?」

「そういえばミザリーはジュンキのバケモノじみた身体能力知らないのね……。でも、それでも無茶よ」


 二人は困惑の顔を浮かべていた。しかし、リーカは真っ直ぐな目で俺を見つめる。そこに疑念は感じられなかった。


「……私は信じますよ、ジュンキさんのこと」

「ありがとう、リーカ……!!」

「でも、死んじゃったら……いいえ、怪我しちゃったら、許しませんから!!」

「怪我も駄目、か。中々に厳しいな」


 断続的に撃ち続けられる弾丸は、ニ十発を越えていた。それでも弾切れを起こすことはなく、次の三十秒の間隔が明けようとしていた。


「来る……今!!」


 銃声と共に俺は飛び出した。

再会って変換しようとしたら、最下位が出てきて普通に発狂しそうになった

俺はIMEを許さない


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