望遠のミザリー
地上での事態が悪化する前に、早急にグランペを見つけ出す必要があった。しかし、地図を見ると水路は複雑に入り組んでおり、まるで迷路のようだった。
「どうするのよ、これ」
「問題ない。地面を見てくれ」
二人は地面をのぞき込むと、シルトは納得して頷いた。一方でリーカは何のことだか理解できていない様子だった。
「地面が……どうかしたんですか?」
「俺たちが通って来た方角を見ると、くっきりと歩いた跡が残っている。ということは、だ。そのグランペも足跡を付けて移動しているに違いない」
「足跡が無ければ、行き止まりがある分岐は選ぶ必要が無くなるわね」
「なるほど……!! じゃあ、足跡を見つければ簡単にグランペを見つけられる、ということですね」
リーカは閃いたという表情で、とんでもない提案を始める。
「私が先行して、足跡を探してきます!!」
「いや、こんなに暗いし入り組んでいるのに先に行けば、迷子に……」
「大丈夫です!! ジュンキさんの匂いを辿れば戻ってこれます!! 行ってきます!!」
彼女は、走り去っていった。
「い、行ってしまった……。俺、もしかして臭いのだろうか?」
「さぁ? 犬の嗅覚のことは詳しくないわ」
「確かに犬みたいだったが……」
それから数十分後のこと、早くもリーカは俺の元に戻って来た。
「見つけました、足跡!!」
「早いな……。案内よろしく頼む」
「はいっ!!」
犬のように駆ける彼女を走って追いかける。しばらくすると、シルトが息を切らして止まってしまった。
「ぜぇ……ぜぇ……あ、あんたたち……なんでそんなに体力あるの……!?」
「グランペの身体能力は高いと聞いていたが、シルトは意外と体力無いんだな」
「本気!? ニ十分も全力疾走して疲れないなんて、さすがにグランペでもリーカくらいよ!! あんたは本当に何者なのよ、ジュンキ……!!」
「悪い、その話はまだできない。……それより、足跡を見つけたぞ。どうやらこの先に誰かが居るようだ」
シルトは上手く話しをはぐらかされたと言わんばかりに不満げな表情を見せたが、足跡を発見したという報告に偽りはない。しかも、地図によればこの先は行き止まりになっており、梯子も無かった。つまり、この先に目的の人物が居ることは明らかだった。
さらに歩みを進めると、遂にその人物と鉢合わせた。小柄でかなり若い風貌の女だが、一見少年にも見えるような短い髪が整えられずにぼさぼさとしていて、栄養状態が悪い状況で生活して来たのか肌の色は青白く、骨に皮が付いたような細い腕と足をしていた。
そして、彼女は汚らしいワンピースのような服を着ていた。まさしく、今までに会ったグランペの特徴と一致している。彼女こそが俺たちが探していたこの街のグランペなのだと確信した。
彼女は壁の端で縮こまって、身体を震え上げさせていた。
「ひ、ひぃぃ……!? こ、こないでください……!!」
「大丈夫だ、俺たちは味方だ。君を助けに来た」
「み、味方? ボクに味方なんて居ないよ!! だって、ボクには見えるんだ。【望遠】の【ケガレ】で、見たんだ……!! みんながボクを探し回っているって……!!」
どうやら彼女は自身の能力で外の状況を知っているらしく、それが原因で俺たちを恐れているらしい。簡単には信用してもらえなさそうだ。
「大丈夫、私たちに任せて」
シルトはそう言って、リーカと共に【ケガレ】を顕現して見せた。
「君たちもグランペなのかい? 一体、どうして……」
「俺たちは各地に散らばったグランペを仲間にして、グランペの立場を向上させることを目的に動いている。……まだ具体的な計画はないがな」
「そんなことなんで……いや、そもそも無理だよ。上の状況を知っているでしょ? ボクたちは何かがあるたびに悪者にされて、最後には生贄として葬り去られるんだ」
彼女は俯いて、そう呟いた。
「だから、その状況を変えるんだ。君、名前は?」
「ボクはミザリーだけど……なんだよ、急に」
「ミザリー、俺が地上の連中を何とか鎮めることができれば、俺の可能性を信じてくれるか」
「フン、そういうことか。どうせ無理だし、勝手にすればいいよ。ここから【望遠】で見させてもらうから、仮にできれば仲間にでもなんでもなっていいよ」
俺はふっと息をついて、手を叩いた。地下の壁に反響して音が広がっていく。
「よし、言質は取れた。シルト、一緒に来い。リーカはここに残ってミザリーを守れ」
「別に一緒に行くのは良いけど……なんでリーカは連れて行かないの?」
「そうです!! 私、ジュンキさんを守りたいのに……」
「それでも、だ。……分かってくれるな?」
「はい……」
彼女は寂しそうな顔で俺の提案を受け入れた。そして、俺とシルトは地上へと向かった。
下書き溜まってるので上げていきます
ポルトガル対コンゴ民主共和国見てたから投稿できなかった




