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一方その頃……(side:皇帝ボスティモス・ソン・ヴェルオーモ三世)

 帝都ボスティモス、コンスティナ帝国の中心で、「彼」は監察官からの報告を聞いていた。彼はボスティモス・ソン・ヴェルオーモ、皇帝だ。同名の皇帝が過去に二人居ることから、区別するためにボスティモス三世とも呼ばれている。


「それで、【断罪のリーカ】の行方は掴めたか?」

「申し訳ありません、陛下、何者かが妨害しているようで、情報が錯乱していまして……」

「うーむ……」


 皇帝にとってリーカの存在は悩みの種だった。一週間前に入った報告で、サルミタ近辺の孤島から彼女が居ないということが判明し、それ以来頻繁にサルミタの監察官を呼び出し報告を聞いている。


「捜索のための予算を増やそう。決して他の用途に使わぬように」

「はっ……」


 監察官は頭を下げて、謁見室を後にした。


「急がねば、帝国の一大事になりかねんな……」


 コンスティナ帝国は現在、数多くの危機に直面していた。まず一つ目はサァイール帝国の台頭だ。サァイールはサクート教を国教とし、かつてマグヌス教国家が支配していたベバンティア半島の都市を次々と陥落させ、遂に半島を統一した。さらに南下を進め、その強大な軍事力で帝国の領邦を合わせたものより遥かに強大な国家を作り上げている。海峡を挟んで作られた要塞都市エスタ・ミ・ロジヤが陥落すれば、いずれ帝国のほとんどは侵略されることだろう。


 二つ目の危機は、そもそも帝国の領邦が団結していないということだ。地域によって言語や文化が微妙に異なり、領邦同士での戦争を皇帝が調停することも珍しくはない。更に、サント・マティウス・マグヌス大司教区やモレトガバヴィア辺境伯領など、領主の権限が大きい上に一国として独立し得る経済力を持った領邦まで誕生している。分裂の危険性は常に孕んでいるといえるだろう。


 そして今皇帝が最も懸念している危機は「グランペによる反乱」だった。彼女たちは帝国が誕生して以来、ずっと虐げられてきた。仮に団結されてしまえば、少数でも太刀打ちできなくなる可能性がある。そして、代々皇帝になった者にしか伝えられない、「秘密」を皇帝は知っていた。


「【断罪のリーカ】……もし彼女と【共鳴】してしまう人間が現れたとすれば……彼がもたらすのは、災いか、それとも───」


 彼は天を仰いだ。仮に「その可能性」があったとしても、皇帝である以上、帝国に災いを及ぼす可能性もあるのであれば、その危険性を排除するのが務めである。


「……抗おう。我はボスティモス・ソン・ヴェルオーモだ。皇帝にして、帝国を動かす巨大な歯車の一つだ。ならば、抗うのだ。その命を落とすことになっても、決して敗れたことにはならぬ。抗い続け、帝国を存続させるのだ」


 皇帝は、決意を固めた。

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