グランペ、浄化刑、ケガレ
「浄化刑……なんだ、それは?」
「……グランペは、管轄の街でさえ無断で立ち入ることを禁じられています。他にも処罰の対象になる行動はいくつかありますが、ほとんどの場合は【浄化】を受けさせられるんです」
リーカは続けて説明する。
「グランペは基本的に、どんな苦痛を与えても絶命することはありません。ですから、私によって【断罪】されるか、人間によって【浄化】されるかの二つの刑罰しか存在しないんです。『浄化刑』というのは、要するに『普通の人間なら死んでしまうような苦痛を刑期中延々と与え続ける』という刑なんです」
「……待て。情報量が多すぎる。できれば詳しく質問していきたいところだが───」
先ほどの役人の発表によると、浄化刑の執行は今日の正午からだ。しかも、水上広場から離れた中央塔───この街で最初に訪れた巨塔の頂上で行われるようだ。
「今から塔に行って、シルトの浄化刑を止めたい。話は向かいながらしよう」
「……はいっ!!」
俺たちはもう、小舟で移動などしない。周りの一般市民の目も気にしない。リーカと手を繋ぎ、地を蹴って駆ける。目指す先は対岸の建築物のバルコニーだ。互いに大きく踏み込んで、思いっきり力を込めて跳んだ。
「うおおおおおおおおおお!!!」
地表から3メートルほどの高さまで飛び上がったのだ。当然周囲からは驚嘆の声も上がるが、俺の手は目的物まで届かなかった。その代わりにリーカはしっかりとバルコニーの柵を掴み、俺を引っ張り上げた。
「助かったよ、リーカ」
「最短距離でいきましょう!!」
屋根の上を走り、時折隙間を飛び越えながら、俺たちは陸を目指して走っていく。その中で、俺はリーカに聞きそびれていたことを一つずつ聞いていくことにした。
「グランペは、特殊な力を持っているものなのか?」
「はいっ。女神ヴェリオッタ様の加護によって、長い寿命と強い身体を与えられています。そして契約に応じて、【ケガレ】を顕現させることができます」
「【ケガレ】とは、なんだ?」
「私の場合は、【断罪】……グランペの魂を斬り、命を奪う武器を顕現させることができます。それと同じように、シルトさんも昨日何かを顕現していました」
なるほど、つまりグランペというのは特別な力を与えられた通常の人間とは異なる種族のようなものだったのか。彼女たちが差別され、隔離されているのは恐怖心から来る排他的心理からか、或いは───。
「そういえば、私……ジュンキさんに分かってて、伝えていなかったことがあるんです」
「グランペと関わった人間の処罰、だな?」
最初に会った時、グランペと一般人が関わってはいけないとリーカは確かに言っていた。だが、それ以降は敢えてその話題に触れていないような感覚があった。
「グランペを手助けしたり、言いくるめて与えられた役割以外のことをさせた人間は……最低でも、死刑になります。絞首刑や斬首刑ならまだ良いですが……もっと酷いことも、あります。黙っててごめんなさい」
「今更だ。それくらい覚悟している。……それに、リーカだって俺に連れ出されたことがバレれば浄化刑を受けるんだろ?」
「……さっきも言ったように、グランペは私の顕現させた【ケガレ】以外で死ぬことはできません。ですが、ジュンキさんは……」
「それを言えば、前の世界で死んでるんだから、一度でも二度でも、何度死んでも同じことだ。……屁理屈なら俺は負けないぞ」
「へへっ♪ やっぱりジュンキさんは、凄いですっ」
「……ありがとう?」
リーカが俺の発言の何を受けて「凄い」と評価したのかは分からないが、とりあえず礼を言っておく。そんなやり取りをしていると、どうやら目的地が近づいていたようだ。
「───見えてきたぞ、塔が」
「相変わらず、すごく大きい……」
この世界の文明水準には見合わない、圧倒的な存在感を放つ構造物は近づくにつれ、その巨大さを俺たちに痛感させていく。これが元居た世界の神話なら、建築している時に神の怒りを買っていたに違いない。
シルトの浄化刑執行は正午、腕時計はないので分からないが、太陽の位置からしてもう間もなくといったところだろう。
「時間がない、急ぐぞ」
俺たちは水路の家々を渡り切り、遂に陸地に降り立った。
雨天中止で気持ちが落ち着いたんですが、リードしてても全く安心できなくて心臓がバクバクします
阿部ちゃん復帰した時は不安あったけど今となっては貴重な戦力過ぎて泣けてきます
今日はドラゴンズ、勝てますよね・・・?




