閑話③:河内兄弟の懸念 ― 知種の場合 ―
「ねぇ知種。あの四兄弟、知種と『同じ』感じがするよねー」
香也の言葉に、俺は溜息をついた。
そやな、確実にあの四兄弟、俺と『同種』やわ。
***
母親の再婚。
当初、再婚しても俺は関わりあう必要もないと思っていたし、実際向こうの高見澤さん側もそのつもりだったんだろう。
けれど、常葉の一言で状況が変わった。なにを考えてるんだあの愚妹は。血の繋がりもない成人した男4人と暮らすとか。
あいつマジで厄介な性格してやがる。しかも頑固で曲げることなく、結局今日、引越しが完了したことを聞いた。一実と常葉からは今のところ、問題がある話しは聞いてない。
『他人』と『身内』の境界線。
常葉は割と、それに敏感だ。
人見知りが激しいとも言う。
だからこそ、『家族』や『身内』に対する思い入れが強い。
『家族』として存在することを認めるなら、『家族』として受け入れるよう半無意識に、行動を出した結果なんだろう。
このままなら、ほぼ接点を持つことなく名前だけの『兄弟』。それを嫌悪したからこそひとつ屋根の下で暮らすことにしたんやろう。
本来なら、うっとおしがられたり、変に溝や問題を作りかねない行動だとしても。
まぁ、あの四兄弟は、今のところ一実や常葉を珍獣扱い程度にしかしてないが……今後はどんな問題が起こるか、わかったもんじゃない。
「今のところ、共通しているのは四兄弟とも俺に『警戒』していることやろな。どちらかと言うと二人は眼中にさほどない様子、か」
「知種ー、それはある意味うっすい本的にはおいしい展開な気がするわ」
「報告を引き続き入れてもらうにしても、心もとないわ。常葉らに『お守り』持たせたからなんかあったらすぐわかるやろし、問題はないと思うけど」
「弟妹愛マジパネェ感じは、私にとってほんまおいしいけど……心配やね」
「……」
一旦言葉を止めて、隣を見る。
そこには俺の最大の理解者であり、愛おしい妻がにやついた顔で目を細めていた。若干頬が染まってへんか、お前。
「……香也」
「なぁに?」
首を傾げながら何食わぬ顔で聞いてくる香也。
それに溜息をつくと、後ろから抱きこむように抱き寄せた。
「……お前のコメントで色々とそんなに問題ない気がしてきた……ということになったらよかったんやけどなぁ」
「あらら、期待に添えれなかったみたいやね。失敗」
くすりと笑いながらおどけてみせる香也は、心配してくれたんだろう。俺のなだめ方を、残念ながら熟知している。
「でも常葉ちゃんの意思でしょ? あの四兄弟と仲好くなりたいのって。まぁ一実君は流された感がするけど」
その言葉にぴくりと、眉をひそめる。
「……わかってるんやけどな」
「あのままやったらほんまに、『兄弟』という名だけの『他人』。というか……たぶんな、仮やとしても、『お兄ちゃん』達にそんな感情を持ちたくなかったんじゃない? 常葉ちゃん。一実君も無意識なところで同じ考えな気がするし」
「……知ってる。あいつらの考えくらい」
「ほんま、しょうがないブラコンとシスコンな兄妹やねぇ」
「って言うか、ほんまそんなんどうでもええからさっさと見切りつけて同棲生活を即刻終わらせてくんねぇかな。あの四兄弟見た目は馴染めてるように見えて実際はどうだか。腹に一物も二物も持ってる人種やからな」
思い出してもあまり感じのいい風には思えない四兄弟を頭に浮かべると、舌打ちをして香也を前向きに抱き込み直した。
それに少し嬉しそうに抱きついてくる彼女に癒されたのもつかの間。
「……私の予想やと、大迷惑ながらも、ほだされそうやわあの四人。特に常葉ちゃんに」
楽しそうな香也の言葉に、ものすごく、胸糞悪くなってきた。
それをまた彼女に悟られ、なだめられる俺だった。
次回から会話文形式に戻ります。




